更新日: 2022.08.23 その他税金
株式投資にかかる税金はどれくらい? 損益通算を行うメリットとは?
将来に備えておこうと思っても、リスクを取らずにお金を増やすのは難しいため、長期運用で株式などに投資することを考える方も多いでしょう。そこで今回は、株式投資にかかる税金について解説します。
執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
株式投資の利益にかかる税金とは?
株式投資で生じた利益のうち、投資先の企業が得た利益の一部を株主に還元する上場株式などの配当金は、配当所得となります。
また、上場株式を売却したときに得る利益は「譲渡所得」となりますが、この株式投資による2つの所得についてどんな税金がかかるのか、それぞれ確認していきます。
上場株式などの配当金にかかる税金は?
株式投資などの配当所得にかかる税金の課税方法は、原則として総合課税で確定申告が必要となりますが、一定のものは申告分離課税や確定申告不要制度を選択できます(※1)。
【総合課税】
株式投資などの配当は配当所得として、そのほかの所得(給与所得など)と合計して総所得金額を求め、確定申告によって源泉徴収されている所得税、および復興特別所得税を精算します。そのときに配当控除という税額控除を受けられます(※2)。
配当控除は住民税からも差し引くことができます。住民税についてはお住まいの市区町村のホームページなどでご確認ください。なお、所得税の税率は、所得の増加に従って段階的に高くなる超過累進税率で、納税者が支払能力に応じて公平に税金を負担する仕組みとなっています(※3)。
【申告分離課税】
上場株式などの配当は申告分離課税を選択でき、この場合は、ほかの所得とは別に税額を計算して確定申告を行います。税率は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)で課税されます(※4)。
申告分離課税を選択した配当所得について、配当控除は適用されませんが、上場株式などの譲渡損失との損益通算が可能です。損益通算とは赤字と黒字を相殺することで、損失と利益を合算して申告する利益を少なくし、節税につなげられるのがメリットです。
また、損益通算しても損失の方が多い場合には、確定申告をすることで、翌年以降3年間にわたり、損失を繰越控除(翌年以降の譲渡益から控除)できます。
【確定申告不要制度】
証券会社で特定口座を開設し、「源泉徴収あり」を選択すると、上場株式の配当に対して税率20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)で課税され、源泉徴収で納税は終了します。
この場合、確定申告を行う手間を省けるのがメリットですが、税額控除が受けられない点がデメリットといえます。
上場株式などの譲渡所得にかかる税金は?
上場株式などの売却益による譲渡所得に対する課税方法は、申告分離課税となります(※5)。税率は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。
また、上場株式などの譲渡所得には、特定口座制度という特例があります。これは、証券会社などの金融機関で特定口座を開設した場合、投資家に代わって上場株式などの譲渡所得の計算などを行ってくれる制度です(※6)。
特定口座は1金融機関につき1口座となり、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選択できます。「源泉徴収あり」の口座を選択した場合、証券会社などの金融機関が損益通算を行い、納税も代行します。この口座を源泉徴収口座といい、確定申告は不要です。
ただし、ほかの口座での譲渡損失と相殺する場合や、上場株式などの譲渡損失を繰越控除する場合は、確定申告を行う必要があります。
一方、「源泉徴収なし」の口座を選択した場合、損益通算は証券会社などの金融機関によって行われますが、申告については金融機関から送付される特定口座年間取引報告書を使って行います。この口座を簡易申告口座といいます。
なお、株式投資でNISA口座(非課税口座)を利用した場合、現在、例えば一般NISAでは年間120万円まで非課税で投資ができ、配当金や譲渡益にも税金がかかりません。ただし、損失が出た場合に損益通算や繰越控除はできません。
まとめ
株式投資を行い、配当所得や譲渡所得で利益を得た場合には、税金が発生します。課税口座・非課税口座の選択によっても、手元に残るお金が変わってきます。投資のリターンは不確実なので、一概に非課税口座が良いとも限りません。
また、リスクについて自分がどれくらい許容できるか、損失を出したときの対策なども考えておく必要があるということを理解しておきましょう。
出典
(※1)国税庁 株式・配当・利子と税
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1250 配当所得があるとき(配当控除)
(※3)国税庁 所得税のしくみ
(※4)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
(※5)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
(※6)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1476 特定口座制度
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者