更新日: 2022.08.29 確定申告

すぐわかる税金の話 青色申告と白色申告の違い

すぐわかる税金の話 青色申告と白色申告の違い
「すぐわかる税金の話 青色申告のメリット」という記事で、青色申告の税制上のメリットを紹介しました。
 
個人事業主の所得税の確定申告の方法には、白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告では特別な手続きは不要ですが、青色申告と比べて節税のメリットは大きくありません。
 
対して青色申告は、事前の届け出が必要なこと、記帳に関する要求が厳しいことなど、手間がかかる方法になりますが、税務上、受けられるメリットも大きくなります。
 
この記事では、青色申告と白色申告では何が違うのか、メリットやデメリットについて解説したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

青色申告と白色申告の主な違い

青色申告には2種類あり、特別控除が「55万円または65万円のもの」と「10万円のもの」があります。それでは、青色申告と白色申告の主な違いを解説していきます。
 

事前の届け出などの手続き

青色申告は、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があるのに対し、白色申告を行う場合は事前の届け出などは不要です。事前準備が簡単であるという点においては、白色申告にメリットがあります。
 

記帳義務と決算書の作成

確定申告を行う場合、年間の取引の内容を記録し、その内容が分かる書類を税務署に提出します。青色申告の場合は「複式簿記」によって記帳し、貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して提出する必要があります。
 
複式簿記とは、個々の取引を2つの側面で分析して対照させ、二重記録を行う記帳の方法で、会計帳簿の記録方法としては最も広く普及しています。例えば1万円で商品を販売したとき、一方では売上高という収益を実現し、他方では現金という資産が増えることになりますが、その変化を1万円という同じ金額で二面的に記帳する方法です。
 
複式簿記では、その取引を仕訳という方法で記帳しますが、この場合、具体的には以下のとおりとなります。

(借方) 現金1万円/(貸方)売上高1万円

年間のすべての取引に関して仕訳を行うには、ある程度の会計と簿記の知識が必要です。
 
また、青色申告には簡易簿記で記帳する方法もあり、税務署への提出書類も損益計算書だけで済みますが、青色申告特別控除が10万円しか受けられません。これに対して白色申告の場合は、記帳は簡易簿記、添付書類は収支内訳書のみ(貸借対照表・損益計算書ともに不要)です。
 
手間に関していえば白色申告にメリットがありますが、特別控除がゼロになってしまうので、以下で説明する肝心の税務上のメリットが受けられなくなります。
 

税務上のメリット

ここからは、青色申告と白色申告の税務上のメリットの違いを紹介していきます。基本的に、青色申告の税務上のメリットは、白色申告より大きくなります。
 

特別控除

青色申告の場合、複式簿記で記帳を行うと55万円の青色申告特別控除を受けることができます。これは、事業所得・不動産所得から55万円の控除が可能ということを意味するので、確定申告を行う人の税率に応じた節税ができるようになります。
 
55万円の青色申告特別控除を受けられる人が、電子帳簿保存、またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、さらに10万円が追加され、65万円の青色申告特別控除を受けられます。
 
ただし、青色申告でも簡易簿記で記帳を行うと、前述したように10万円しか特別控除を受けられません。これらに対して白色申告の場合、特別控除はありません。
 

専従者給与と専従者控除

青色申告、白色申告ともに生計を一にしている配偶者・親族等が事業に従事した場合、青色申告は専従者給与を支払うことができ、白色申告では専従者控除を受けられます。
 
青色申告の場合、妥当な金額であれば給与の上限の規定がなく、専従者控除の上限もありませんが、白色申告の場合は配偶者で86万円、それ以外では1人当たり50万円という専従者控除の上限が設けられています。
 

貸倒引当金の計上

青色申告では「貸倒引当金」を計上できますが、白色申告の場合は計上できません。
 
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などの債権が回収できない可能性に備えて計上されるもので、経費と見なされます。
 

純損失の繰り越しと繰り戻し

青色申告は、他の所得と損益通算しても控除しきれない純損失がある場合には翌年以降、3年間にわたって各年分の所得金額から純損失金額を控除できます。
 
また、前年の利益と当年損失を相殺する繰り戻しもできます。これに対し、白色申告の場合は純損失の繰り越しができません。
 

少額減価償却資産の特例

青色申告の場合、30万円未満の少額資産は減価償却をする必要なく、一括で経費として計上することか可能です(年間300万円までが限度)。
 
一方、白色申告の場合はその特例を適用することはできません。ただし、10万円未満の少額資産については青色申告でも白色申告でも、一括で経費に計上できます。
 

まとめ

今回は、青色申告と白色申告の違いを見てきました。一言でいうと、青色申告の場合は事前の届け出や記帳の要求が厳しくなりますが、青色申告特別控除をはじめとして税務的に優遇されており、節税メリットが大きいことがお分かりいただけたと思います。
 
最も節税効果が高いのは、複式簿記で記帳して、55万円または65万円の特別控除を受ける方法です。その恩恵を受けるためには、簿記を勉強する価値があるかもしれません。
 
また、青色申告では簡易簿記による記帳でも10万円の特別控除が受けられ、その他の税務メリットは複式簿記による記帳の場合と変わりません。白色申告が簡易簿記による記帳で、特別控除がないことを考えれば、届け出をするだけで青色申告の税務メリットが受けられるため、次善策として、簡易簿記による青色申告を選択する方法もあると思います。
 

出典

国税庁 No.2070 青色申告制度
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和4年度版)記帳や帳簿等保存・青色申告
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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