更新日: 2022.11.08 その他税金
所有期間によって「所得税」が変わる!? 実家の「壺」が意外と高額になったケースをもとに検証
ここでは、不用品が意外と高く売れてしまったときの税金について説明します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
「生活用動産」を売って得た所得は非課税
使わなくなった物をリユースショップやフリマアプリ、オークションサイトなどで売って所得を得た場合には、基本的には所得税が課せられます。ただし、例外として「生活用動産」を売って得たお金については「非課税」とされています。
税法上、「生活用動産」とは「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産」で「貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは除く」とされています。
「生活用動産」の範囲は?
しかし、生活用動産といわれてもピンとこない人もいるでしょう。例えばCDやゲームソフトなどは、生活用動産として認められるのでしょうか。これらが貴金属や骨董(こっとう)ではないことは明白ですが、生きていく上で通常必要な物かどうかは、人によって意見の分かれるところです。
所得税施行令第25条では「譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲」を規定しており、「1個又は1組の価額が30万円を超える貴石、半貴石、貴金属などや、書画、骨董、美術工芸品」以外の物を生活用動産としています。
これにより、日常私たちが使っている物の多くが、非課税対象と解されます。ただし、日常で使っていたものだとしても、ブランド品やアンティークの家具のような高額品は、課税対象になる可能性があるので注意が必要です。
実家の壺を売ってもうけたときは?
では、「実家にあった壺(つぼ)」を売った場合はどうなるのでしょう。この場合に問題となるのは、その壺がいくらで売れたかです。もし「30万円以下」であれば、生活用動産と見なされて非課税になります。
30万円を超えた場合は、総収入額から購入費用と売却にかかった費用を差し引いて残った「純利益」に所得税が課されます。購入費用がわからない、もしくは総収入額の5%に満たない場合は、購入費用を総収入額の5%として計算することができます。
ただし、壺を売って得た総収入額が、購入費用と売却費用の合計よりも小さい場合(損が出た場合)は、売却価格が30万円以上であっても所得税はかかりません。
壺を売ったときにかかる所得税は、「総合長期譲渡所得」と「総合短期譲渡所得」に分けられます。所有期間が5年を超えていると「長期」、5年以下なら「短期」です。「総合」とは「総合課税」の意味で、他の所得と合計した総所得金額に所得税が課税されるという意味です。
総合譲渡所得では、「総合長期譲渡所得」と「総合短期譲渡所得」の合計から、50万円の特別控除を差し引いて残った額が課税対象となります。さらに、長期所有物を売って得た所得は、所得税の課税対象額が半分になります。
例えば、壺以外の譲渡所得がなく、壺を売った純利益が120万円だったとしましょう。売った壺の所有期間が5年を超えていた場合は、純利益の120万円から特別控除の50万円を差し引き、残った70万円の半額、35万円が課税対象額です。所有期間が5年以下の壺では半額にはならないので、特別控除を差し引いて残った70万円がそのまま課税対象額となるのです。
よって、売却価格を考慮しつつも、5年を超える所有期間を経てから売った方が節税効果は高くなります。
課税対象になるのは売却額30万円超で利益が出たとき。ただし利益が50万円以下までなら非課税になる
総合譲渡所得は、所有期間で区分されていたり特別控除があったりと計算が少し複雑です。ここで説明した「壺」のように、生活用動産か骨董や美術工芸品なのかで判断に迷う場合は、売却額が30万円を超えるかが目安となります。
売却額が30万円を超えていても、損失が出ていたら税金はかかりませんし、他の物の売却益と合わせて利益が50万円以下なら、特別控除分でやはり非課税です。30万円と50万円がボーダーラインだと覚えておくと、迷わずにすむでしょう。
出典
国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
e-Gov法令検索 所得税施行令
国税庁 確定申告が必要な方
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部