「消費税を増税すべき」という意見の背景とは?
配信日: 2022.11.19
本記事では、内閣府が公表している税制調査会の資料から、消費税を増税すべきだという意見が上がった背景について解説します。
執筆者:北川真大(きたがわ まさひろ)
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種
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消費税に関する専門家の意見
2022年8月5日に実施された税制調査会の資料を見ると、3人の専門家が消費税について直接言及しています。
「人的資本投資の収益は、個人にとっては賃金の上昇ですから、その意味では、これから個人の、特に勤労所得課税の税率を上げることで税収を確保するのはこれと整合的ではありません。~(中略)~消費税等のウエートをさらに高めていくことは大切だと思っております」
「中長期的な税制改革の議論をする上で、まさにポスト社会保障・税一体改革という意気込みで、次なる一体改革を構想していくことが必要で、所得課税から消費課税へのシフトというのが、今後のわが国の経済社会の構造変化を見据えるとわが国の税制においても必要だろうと思います」
「消費に対して今後税負担を次第に求めていくということは、もう当然の流れだと思いますが、その中でやはり消費というのは少子高齢化と社会保障に使うことになっているので、そうすると、そちらを引き下げながら、しかし、税負担は増やしていくというような説明は非常にしにくいだろうという感じがあります」
3人とも「消費税は増税すべきだ」という意見で一致しています。一方で、消費税を減らすべきだという意見は見られません。
消費税を増税すべきという意見の真意
税制調査会の会合で複数の専門家から消費税を増税すべきだという意見が上がったのは事実です。とはいえ、専門家たちの発言のうち「消費税増税」の部分だけを切り取ると、議論の全体像を見誤るおそれがあります。
専門家の意見を要約すると、以下の通りです。
●所得税の課税から消費税の課税へシフトすべきだ
●消費税を増税するなら社会保障も手厚くすべきだ
このように出席した専門家たちは消費税だけでなく、所得税や社会保障などを含めたシステム全体のバランスの中で、国民が納得できる方向性での増税が適切と訴えています。
税制調査会に対する批判は意見の切り取り
税制調査会から出た消費税増税に関する意見は、あくまで何かしらの対価やメリットがあることが前提です。しかし、消費増税だけに焦点を合わせて専門家の意見を切り取ったニュースのヘッドラインを目にすれば、「税制調査会がさらなる消費税増税に積極的である」と単純化してしまうおそれがあります。
政府や省庁が政策決定に向けて開催する専門家会合の中には、本記事で取り上げた税制調査会のように議論の詳細が記録されており、各出席者の発言を含めて公開されているものもあります。
また、会議の様子はインターネット中継され会議後も約2週間公開しています。こうした記録と照らし合わせることで、ニュースの中で元の情報がどのように切り取られ、編集されているかを確認することができます。
データが氾濫する今、掲載元の資料を確認するなどの作業を通じ、情報が信頼に足るものかどうか見きわめる力(メディアリテラシー)を養うことも大切です。
出典
内閣府 税制調査会2022年度 2022年8月5日第13回税財政の現状等について
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種