更新日: 2022.11.18 税金

すぐわかる税金の話 年収300万円以下の副業は雑所得で税務メリットが減少、サラリーマンの副業に暗雲か? その2

執筆者 : 浦上登

すぐわかる税金の話 年収300万円以下の副業は雑所得で税務メリットが減少、サラリーマンの副業に暗雲か? その2
前回「その1」では、2022年8月に国税庁が提示した事業所得と雑所得に関する判定基準(改正案)の概要と、提示した理由について説明しました。
 
「その2」では詳しい解説として、「事業所得と雑所得の税務メリット比較」および「国税庁改正案の条件の詳細検討」について確認していきます。
 
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

事業所得と雑所得の税務メリット比較

副業の所得について、事業所得と雑所得での税務上の違いの詳細は、以前の記事「すぐわかる税金の話 サラリーマンの副業と確定申告 その2」でも解説しているので、ここでは概要だけを説明します。まずは図表1をご覧ください。
 
図表1

事業所得 雑所得
1. 給与所得等との損益通算 不可
2. 青色申告にした場合の税務メリット
(1)青色申告特別控除(65万円/55万円/10万円のいずれか) 不可
(2)その他の青色申告上のメリット
・専従者給与と専従者控除
・貸倒引当金の計上
・純損失の繰り越しと繰り戻し
・少額減価償却資産の特例
不可
3. 経費計上

※筆者作成
 
事業所得でも雑所得でも、経費計上ができる点は変わりません。ただし、副業収入が雑所得になった場合、次の2つの特典が受けられなくなります。

1. 事業所得であれば受けられた、青色申告にした場合の最大65万円の青色申告特別控除をはじめとする税務メリット
 
2. 事業所得が赤字となった場合、給与所得等との間で行えた損益通算による税金の還付

これが「その1」の冒頭で述べた、サラリーマンの副業で「税務メリットは大きく減少する」ということの内容です。
 

国税庁改正案の条件の詳細検討

それでは「その1」で説明した国税庁改正案の事業所得と業務に係る雑所得の判定基準について、詳しく解説していきます。
 

条件1. 所得を得るための活動が「事業性」を持っていること

これに関係するのが、国税庁の「所得税基本通達新旧対照表」(文末参照)にある「35-2(注)」の前半の部分です。以下、引用します。
 
「事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが」
 
上記のように「事業性」を有する活動とみなされるためには、次の条件を満たすことが必要です。

1. 自己の危険と計算において独立して行う業務であること
2. 営利性・有償性を有すること
3. 反復継続して業務を遂行していること
4. その事業において社会的地位を有すること

※ 「すぐわかる税金の話 サラリーマンの副業と確定申告 その2」、「国税不服審判所 公表裁決事例 (平成26年9月1日裁決)」からの引用を参照。
 
対象の事業を自らのリスクで、相応の人力や設備などを投資して行い、自らの生活を支えるための利益を上げ、継続性があり、社会的にもしかるべく認知されていることが必要となります。
 
サラリーマンの副業が「事業」として認められにくいのは、それ相応の時間や労力をかけているか、しかるべき利益や継続性があるか、条件を満たしているのかが疑問であることによります。
 
副業の「事業性」については国税庁の改正案以前の問題で、改正案が成立してもしなくても状況は変わりません。いずれにしても事業所得として認められるためには、「事業性」を有することが条件で、「事業性」を有しない所得は業務に係る雑所得となります。
 

条件2. 所得に関する要件

この要件に関係するのが「所得税基本通達新旧対照表」の「35-2(注)」の後半にある部分です。以下、引用します。
 
「その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」
「その所得」を得るための活動が「事業性」を有している場合は、「その1」で説明した条件「2. 所得に関する要件」の「a.」(その所得がその者の主たる所得であること)、「b.」(その所得に係る収入金額が300万円を超えていること)がどうなるかで、事業所得となるか否かが決まります。
 
それでは、個々のケースについて確認してみましょう。
 

「その所得」が主たる所得で、「その所得」の年収が300万円超の場合

最もあり得るケースは、専業の個人事業主で、年収が300万円超の場合です。この場合は前提条件として「事業性」を有していれば、他の所得がないので、その所得は事業所得となります。
 

「その所得」が主たる所得で、「その所得」の年収が300万円以下の場合

専業の個人事業主で、年収が300万円以下の場合がこれに当てはまります。定性的には、上記条件「2.」の「a.」「b.」とも満たしている場合と同じで、年収が300万円に満たないケースです。零細な専業個人事業主が該当します。
 

「その所得」が主たる所得でなく、「その所得」の年収が300万円超の場合

前提条件として「その所得」が「事業性」を有しているが、主たる所得として他の所得があり、「その所得」自体が300万円超の場合がこれに当たります。具体的にはサラリーマンの副業で、かつ、それが「事業性」を有しており、年収も300万円を超える場合です。
 
年収300万円超の実体のある副業を行っている個人であれば、事業所得と認められ、青色申告特別控除等の税務メリットも受けられることになります。年金所得のある人が何らかの事業を行っている場合も、このケースに当てはまります。
 

「その所得」が主たる所得でなく、かつ、「その所得」の年収が300万円以下の場合

これに当てはまるのが、今回の改正案で国税庁がターゲットにしようとしている個人です。すなわち、サラリーマンの片手間の副業で、かつ、年収が300万円以下の場合です。
 
このような場合であれば、大前提である「事業性」も有していないはずですが、それを個々のケースでチェックするのは手間がかかるので、年収300万円という定量的な境界線を設けて、事業所得と雑所得の境界線をはっきりさせようというのが国税庁の意図と考えられます。
 
また、サラリーマンの副業ではなく、年金所得者が事業を行い、その事業の年収が300万円以下の場合は事業所得とは認められず、業務に係る雑所得となり、青色申告特別控除や損益通算等の税務メリットは受けられなくなります。
 

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まとめ

ここまでの説明で、今回の改正案によって影響を受けるのがどんな範囲の人たちかがはっきりしたと思います。サラリーマンで副業の収入が300万円以下の場合は、青色申告控除や損益通算の税務メリットを受けることができなくなりそうです。
 
次回「その3」では、改正案を実際に運用する場合の疑問点について述べてみたいと思います。
 

出典

国税庁 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)の概要 (雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について
国税庁 所得税基本通達新旧対照表
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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