「インボイス制度」が大幅改正! 経理処理しやすくなった点と注意点を解説
配信日: 2023.01.24
2023年の10月から、いよいよインボイス制度が始まります。取引先からインボイス登録するように言われて、渋々申請するという人もいることでしょう。そのような人も、今回説明するポイントを必ず押さえておきましょう。
本記事では、毎日の経理処理が楽になる3つのポイントを紹介します。最後に、改正の注意点も説明しますのでぜひ参考にしてください。
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
目次
【小規模事業者】小規模事業者の納税額は売上税額の2割でよい
今回の税制改革大綱では、これまで消費税を納めてこなかった免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、消費税の納税額は売上税額の2割でよいことになります。フリーランスの経理事務が簡単になり、消費税の負担も削減される点がメリットです。対象になる条件は、2年前の課税売り上げが1000万円以下等で、3年間の時限措置となります。
そもそも消費税の納税は、受け取った消費税額から支払った消費税額を差し引いて行うのが原則です。計算式にすると次のとおりになります。
納税額=受け取った消費税額-支払った消費税額
この計算をするためには、毎日の売り上げや仕入れなどの取引があるたびにかかった消費税額を帳簿に記載する必要があります。実際の作業は、会計ソフトに入力して行うことが多いでしょう。これまで消費税を納めてこなかったフリーランスには、このような事務負担が大きくなるので、今回の特例が認められました。
【小規模事業者】1万円未満の経費はインボイス不要
これまでは、原則1円以上のすべての取引についてインボイス(適格請求書)が必要でした。今回の改正では、1万円未満の経費等は、インボイスがなくても支払った消費税額に計上できるようになります。
対象になるのは、2年前の課税売り上げが1億円以下等で、6年間の時限措置です。
【全事業者】1万円未満の値引きや返品は返還インボイスが不要
今回の改正で比較的影響が大きいのは、1万円未満の値引きや返品等について、返還インボイス(返還適格請求書)が不要になることです。
これまでの制度ではフリーランスが取引相手の振込手数料分を負担する場合でも、返還インボイスを渡す必要がありました。この面倒な手続きが不要となるのです。これは経理担当者の負担軽減につながります。しかも、小規模なフリーランスに限らずすべての事業者に適用され、期限もありません。
インボイス登録申請は4月1日以降も可能だが
今回の税制改正で示された方針では、4月1日以降にインボイス登録申請しても認められることになります。これらの改正内容は、いずれも小規模なフリーランスが経理を処理しやすくなるものばかりです。
しかし、期限が設けられている措置は注意が必要となります。当然ながら、3年や6年を過ぎると特典はなくなってしまうからです。今回の改正内容では、フリーランスの消費税負担が増えたり、インボイス発行事業者にならないと受注機会が減ったり、請負金額の削減が起こったりする問題は解決しません。
取引先から求められる等してインボイス発行事業者になる場合に、適用が認められる特例措置であることを覚えておきましょう。
出典
財務省 令和5年度税制改正の大綱(目次)
財務省 インボイス制度の改正案について
国税庁 特集 インボイス制度
国税庁 消費税の仕組み
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー