更新日: 2023.02.16 その他税金
災害や盗難に遭ったら所得税が軽減される! 適用被害額はどのくらい?
このようなときの税金面の救済措置として、「雑損控除」「災害減免法による所得税の軽減免除」があります。本記事では、それぞれの制度の内容や被害の金額などの適用要件を解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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災害や盗難による損害に適用される「雑損控除」とは
雑損控除とは、災害や盗難、横領などの被害によって、資産に損害が生じた場合に受けられる所得控除です。資産および損害の原因が次の条件に当てはまる場合に、雑損控除が適用されます。
《資産》
次の両方に当てはまる必要があります。
・納税者または、納税者と同一生計の配偶者や親族のうちその年の総所得金額等が38万円以下の人が所有する資産である
・生活に必要な住宅や家具、衣類などの資産である(事業用資産、別荘、価格が30万円を超える美術品や貴金属などは対象外)
《損害の原因》
次のいずれかの場合です。
・自然災害(震災、風水害、冷害、雪害、落雷など)
・人為的な災害(火災、爆発など)
・生物による災害(害虫など)
・盗難
・横領
詐欺や恐喝の被害は雑損控除の対象になりません。控除額は、次のいずれか大きいほうの金額です。
・差引損失額-総所得金額等×10%
・差引損失額のうち災害関連支出(※1)の金額-5万円
差引損失額とは、損害金額と災害関連のやむを得ない支出(※2)の金額の合計から、損害保険の保険金や賠償金などで補てんされた金額を差し引いた額です。
※1:災害を受けた住宅、家財などの取り壊しや除去にかかった費用など
※2:※1の費用+盗難や横領によって損害を受けた資産の原状回復費用
雑損控除の適用を受けるには、確定申告が必要です。確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害などに関連した支出額の領収証とともに提出しましょう。
雑損控除が適用されるのは被害額がどのくらいのとき?
損控除を受けられる損害の金額に下限額の決まりはありません。ただし、次の場合は計算上の控除額が0円以下になるために、控除は受けられません。
・保険金や賠償金の受取額≧損害金額と災害関連でやむを得ない支出の合計額
・差引損失額≦総所得金額等×10%かつ差引損失額のうち災害関連支出の金額≦5万円
被害額が大きくて控除しきれない場合の取り扱いは?
損害の金額が大きくて、雑損控除の計算上の控除額がその年の所得金額を上回る場合は、翌年以降最大3年間まで繰り越して、各年の所得金額から控除可能です。ほかの所得控除がある場合も、雑損控除は先だって控除する決まりになっています。
状況によっては「災害減免法による所得税の軽減免除」を選択できる
次の2つの条件に当てはまる場合は、災害減免法による所得税の軽減免除の対象になります。
・災害による住宅や家財の損害金額(保険金などによる補てん額を除く)が時価の2分の1以上である
・被災した年の所得合計額が1000万円以下である
災害減免法による所得税の軽減免除の適用を受ける場合の所得税の減免額は、図表1のとおりです。
【図表1】
所得金額の合計額 | 減免される所得税の割合 |
---|---|
500万円以下 | 全額 |
500万円超750万円以下 | 2分の1 |
750万円超1000万円以下 | 4分の1 |
出典:国税庁 No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除
災害減免法による所得税の軽減免除の適用を受けるには、確定申告が必要です。確定申告書に適用を受ける旨と被害状況、損害額を記入して提出しましょう。
なお、雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除は、いずれか有利なほうを選択して適用を受けられます。おおよその控除額、減免額をそれぞれ計算してみて、どちらの適用を受けるか判断するとよいでしょう。
災害や盗難にあった年は確定申告で雑損控除や所得税の減免を受けよう
災害や盗難によって損害を被った場合は、税金面の救済として、「雑損控除」「災害減免法による所得税の軽減免除」のいずれかの適用を受けられる可能性があります。それぞれ適用の要件が異なるため、自分はどちらに当てはまるか確認しましょう。
また、どちらも対象となる場合は、有利なほうを選択可能です。損害金額や自身の所得金額などをもとに控除額や軽減額をシミュレーションしてみて、得なほうを選びましょう。
出典
国税庁 令和4年分 確定申告書等作成コーナー よくある質問 雑損控除とは
国税庁 No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
国税庁 No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部