タンスの中の宝石やブランドバッグを売ると「税金」がかかる? 確定申告が必要?
配信日: 2023.04.05
今回は、こうしたケースでの所得の種類や課税の方法について解説します。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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転売ヤーは課税対象
転売を目的としてブランド品などを購入し、それを売って売却益を得た場合、事業所得や雑所得(副業による収入)になります。
(1)事業所得
事業所得の金額は、その年分の総収入金額から必要経費を控除して計算します。
事業所得=総収入金額-必要経費-青色申告特別控除(10万円または55万円)
※青色申告者に限り、確定申告時に青色申告特別控除を受けられ、一定の要件を満たすと55万円、さらにe-Taxによる申告で65万円となる
(2)雑所得
源泉徴収されている会社員が副業で転売をしているような場合は雑所得となります。
雑所得=総収入額-必要経費
給与所得者で給与所得以外の所得が20万円以下であれば、所得税の申告(確定申告)は不要ですが、個人住民税は給与所得と合算して申告しなければなりません。
転売ではない場合
棚卸資産・山林・棚卸資産に準ずる資産以外の資産譲渡による所得は譲渡所得ですが、譲渡所得が非課税となる資産があります。
家具、什器、備品など生活に通常必要な動産(宝石や貴金属、書画、骨董などで、1個または1組の価格が30万円を超えるものを除く)
自分で使うために購入したブランド品のバッグは、譲渡所得が30万円を超えていても非課税となりますが、宝石など美術品や骨董とみなされれば、1点30万円を超える場合には課税の対象です。
譲渡所得への課税
不動産・株式などの譲渡所得は、他の所得とは合算しない分離課税ですが、それ以外は事業所得や給与所得と合算され、累進税率による総合課税となります。
譲渡所得=譲渡金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(最高50万円)
譲渡益が50万円以下の場合は、その金額が控除されるので譲渡所得は0円です。また、所有期間が5年超の長期譲渡の場合には、譲渡所得の2分の1が課税対象となります。
取得費とは購入価格のことですが、購入手数料や設備費、改良費なども含まれます。使用したり、期間が経過したりすることによって減価する資産の場合、減価償却費相当額を控除しますが、貴金属や宝石は減価償却の対象ではありません。なお、譲渡費用とは売るために直接かかった費用のことです。
また、購入価格が分からない場合には、売却額の5%を取得費とみなして計算します。将来、売るかもしれないと考えるのであれば、購入したときの領収書などはしっかりと保管しておきましょう。
タンスの中にあった宝石を売って課税される例
転売目的ではなく購入した宝石が、1点30万円超で売れた場合の利益は、譲渡所得として課税の対象になります。
繰り返しとなりますが、売り上げから取得費・譲渡費用を引いた利益が50万円以下であれば、特別控除により譲渡所得は0円になります。さらに、取得してから5年超の所有期間があれば、課税価格は譲渡所得の2分の1です。
例)課税所得金額300万円(所得税率10%)の会社員が、10年前に50万円で買った宝石を150万円で売却した場合(売却にかかった費用は7万5000円)
譲渡所得:150万円(売り上げ)-50万円(取得費)-7万5000円(譲渡費用)-50万円(特別控除)=42万5000円
課税価格:42万5000円×1/2=21万2500円
所得税(10%)+住民税(10%):21万2500円×20%=4万2500円
宝石の場合には、この例のように高く売れると課税対象となり、確定申告が必要になります。ただし、冒頭のようなブランド品のバッグでは美術品や骨董でなければ課税対象とはなりませんので、安心して売れたお金で新しいバッグの購入を考えてもいいでしょう。
出典
国税庁 No.2072 青色申告特別控除
国税庁 No.1500 雑所得
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士