更新日: 2023.05.31 控除
健康診断で病気が判明!「入院費30万円」は医療費控除で戻ってきますか?
「医療費控除」という言葉は聞いたことがあると思いますが、かかった医療費が全額戻ってくるわけではありません。急な入院や手術で大きな金額が必要になったときでも慌てることがないように、医療費控除に関する基本的な情報や注意すべきポイントを知っておくことは重要です。
本記事では、医療費控除の基本的な知識の紹介と、どのくらいの金額が還付されるのかを具体的な金額でシミュレーションしてみます。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
医療費控除の対象となる医療費
医療費控除はその年の1月1日から12月31日までの間で自分や家族のために支払った医療費のうち、一定の金額を所得控除できる仕組みです。医療費控除は年末調整では適用できないので、会社員でも確定申告が必要になります。
また、医療費控除はかかった医療費のすべてが対象となるわけではありません。図表1に医療費対象となる医療費と、対象にならない医療費を示しました。基本的には治療に必要な医療費は医療費控除の対象となりますが、予防や差額ベッド代などの付帯費用は医療費控除の対象に含まれません。
これらは控除対象となる医療費の一部ですので、実際にかかった費用が医療費対象になるかはご自身でも確認するようにしてください。
図表1
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費を基に筆者作成
入院費用の医療費控除のシミュレーション
医療費控除の金額は以下の通り計算します。
医療費控除金額(※)=医療費の総額-保険金等で補填(ほてん)される金額-総所得金額の5%または10万円
(※医療費控除金額の最高は200万円)
医療費控除は、その年にかかった医療費の総額から、保険金などをもらった金額を差し引きます。さらに総所得金額の5%か10万円(どちらか少ないほう)も差し引きます。給与収入ではなく総所得金額の5%なので、源泉徴収票などで自身の所得を確認してみましょう。
総所得金額が200万円以上の場合、差し引かれる金額は10万円となります。簡単な考え方としては10万円以上支払った場合、10万円以上の部分の医療費×所得税率が還付されるということです。
それでは、具体的にシミュレーションをしてみましょう。健康診断で病気が見つかり、入院と治療をした場合で考えてみます。通常だと健康診断は医療費控除対象外ですが、病気が見つかり治療した場合の医療費は医療費控除対象となります(図表1参照)。
給与収入:500万円(課税所得250万円とする)
健康診断費用および入院費等:30万円
入院保険からの支給:8万円
30万円(医療費総額)-8万円(保険金の補填金額)-10万円(所得の5%より小さい)=12万円(医療費控除金額)
この場合、医療費控除額は12万円となります。また、250万円の場合、所得税率は10%です。
12万円×10%=1万2000円
したがって、この場合は1万2000円が還付されることになります。
医療費が大きいほど医療費控除による還付が増える
医療費控除は確定申告をする必要があるため、面倒だと感じる人もいるかもしれません。しかし、医療費が多ければ還付される金額も増えるため、活用しないのはもったいないことです。
ただし、医療費控除の対象条件や計算はやや複雑です。不安を感じる人は税務署に相談したり、自身で情報を収集したりすることも重要です。今年の医療費が多くなりそうな人は、医療費控除を活用して節税できるように、まずは医療費控除を受けられる金額や還付金を計算してみることをおすすめします。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級