更新日: 2023.07.10 控除

学生のアルバイト、張り切りすぎるとどうなる?

執筆者 : 林智慮

学生のアルバイト、張り切りすぎるとどうなる?
無事に志望校に合格し、新生活にも慣れてキャンパスライフを謳歌(おうか)しているAさん。夏休みに友人たちと旅行の計画を立て、アルバイトで旅行代を稼ぎたいと張り切っています。
 
ただ、学生がアルバイトでたくさん稼ぐことについて、何も問題はないのか少し気になるところです。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

特定扶養親族

現在Aさんは、学費や生活費すべてを会社員の父親に負担してもらっています。父親の扶養親族です。扶養親族とは、以下の要件をすべて満たす者をいいます。

●配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事に養育を委託された里子や市町村長から養護を委託された老人である
●納税者と生計を一にしている
●年間の所得金額が48万円以下(令和元年分までは38万円以下)
●青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないまたは白色申告者の事業専従者でないこと

(国税庁「No.1180 扶養控除」より引用)

扶養親族がいる場合、所得税の計算する際に一定の金額を所得から差し引くことができます。所得税額は、「課税所得×税率」で算出するため、所得が少なくなればその分税金が軽くなります。
 
扶養親族は、その状況により控除金額が異なります(以下、カッコ内は控除金額)。
 
一般の控除対象扶養親族(38万円)、特定扶養親族(63万円)、老人扶養親族(同居(58万円)、同居以外(48万円))があります
 
Aさんは「特定扶養親族」(12月31日の時点で19歳以上23歳未満の者)に該当し、父親の所得から一般の扶養控除38万円より25万円多い63万円を差し引くことができます。
 
また、住民税の計算の際は所得から45万円を差し引くことができます。よって、父親の所得税率10%の場合を考えると、所得税6万3000円、住民税の4万5000円とで10万8000円の軽減がされます。
 
健康保険についても、父親の扶養家族であるので、保険料を支払うことなく保険診療を受けられます。
 

扶養から外れても、勤労学生控除が適用できる

アルバイトを頑張りたいAさんですが、このまま親御さんの扶養でいられるのは、所得が48万円以下、給与収入のみであれば年間収入が103万円以下の場合です(住民税の非課税ラインは93万~100万円で、地域によって異なります)。
 
もし、扶養親族であるための収入要件をオーバーしてしまったら、どうなるのでしょう。父親の所得から特定扶養親族分の控除ができなくなります。控除分がなくなるだけでなく、特定扶養親族控除により父親の課税所得が所得税率10%の範囲にある場合、控除がなくなることで税率も上がってしまいます。
 
ただ、Aさん本人は学生であるので、以下の要件に該当すれば勤労学生控除(27万円)の対象となります。

●給与などの勤労による所得があること
●合計所得金額が75万円以下で、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下
●特定の学校の学生、生徒であること(注)

(注)特定の学校とは、学校教育法に規定する学校(小学校から大学)の他、国や地方公共団体や私立学校法に規定する学校法人による学校等、認定職業訓練を行う職業訓練法人のいずれかです。
要件の詳細は国税庁「No.1175 勤労学生控除」(※)を参照してください。

これにより、Aさん本人については、所得控除が27万円により130万円以下であれば所得税がかかりません。住民税の場合は26万円の控除があり、住民税非課税ライン+26万円までは本人の住民税がかかりません。
 

注意するのは税金だけではない

勤労学生控除の場合、130万円以下は所得税が非課税、119万~126万円未満(地域により異なります)であれば住民税が非課税となります。
 
年間120万円のアルバイト収入がある場合は、本人の所得税は非課税、住民税も地域によっては非課税です。社会保険は扶養の範囲(130万円未満かつ被保険者の1/2未満)ですので、影響はありません。
 
ところが、年間130万円の場合、本人の所得税はかからないものの、社会保険の扶養を超えてしまいます。月に換算すると10万8334円を超える収入が続くと、向こう1年間で130万円以上になると見られ、扶養から外されてしまうこともあります(保険により規定が異なります)。その場合、アルバイト先の健康保険に加入するか、国民健康保険料に加入しなければなりません。
 

まとめ

それぞれの非課税ラインオーバーした場合、親の所得控除はなくなりますが、勤労学生控除により所得税非課税のラインが130万円まであがります。住民税も26万円分非課税ラインが上がります。その一方で、130万円は社会保険上の扶養から外れるラインであることに注意が必要です。
 
学生の本分は学業です。アルバイトを張り切りすぎて学業に支障をきたすことのないようにしましょう。
 
(令和5年7月現在の制度です)
 
(※)国税庁 No.1175 勤労学生控除
 

出典

国税庁「No.1180 扶養控除」
国税庁 [手続き名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書
全国健康保険協会 被扶養者とは
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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