更新日: 2023.07.10 その他税金
児童手当の「所得制限」が撤廃されても、結局「増税」!? 家を買うと「約16万円」の増税がゼロ円に!?
そうなると高所得世帯においては、受け取れるようになった児童手当よりも増税分が上回る事態となり、「隠れ増税」と揶揄(やゆ)されるほどです。該当する人たちにとっては冗談ではない話ですね。
そこで、もし本当に高校生の扶養控除が廃止された場合には、家を買って増税分を打ち消すという方法を検討してはどうでしょうか? どのような効果があるか解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
高校生の扶養控除廃止による増税額
児童手当よりも増税分が上回ると考えられるのは、所得税率が33%以上の人たちです。年収の目安としては1400万円以上となります。
例えば、年収1400万円の人で高校生の子どもが1人いるとして、高校生の扶養控除がなくなった場合、所得税と住民税が約16万円増えることになります(計算は以下の通り)。
児童手当の高校生までの延長が実現した場合、月額1万円の予定となっていることから、年間にすると12万円です。12万円受け取れるようになってラッキーかと思いきや、扶養控除が廃止されると約16万円増税されることになり、実質約4万円の赤字となるのです。
・所得税
扶養控除38万円×33%=12万5400円
・住民税
扶養控除33万円×10%=3万3000円
・合計
12万5400円+3万3000円=15万8400円
家を買って住宅ローン控除を活用する
そこで、高所得者の人は、この「隠れ増税」の影響を受けないために、家の購入や増改築を検討している人は、それらを実行してみてはいかがでしょうか。
住宅ローンを利用して家を購入した場合には、「住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)」を受けることができます。原則として住宅ローンの年末残高の0.7%を所得税と住民税から差し引いてもらえる制度で、新築や増改築であれば13年間受けることができます。
例えば、新築の認定長期優良住宅を購入した場合で、住宅ローンの年末残高が5000万円だったとすると、5000万円×0.7%=35万円が所得税と住民税から差し引かれるのです。
年収1400万円であれば、すでに100万円を超える税金を納めていると思われますので、焼け石に水かもしれませんが、高校生の扶養控除の廃止という理不尽な増税分約16万円を打ち消すことができます。
合計所得金額2000万円超の人は対象外
ただし、注意するべき点もあります。住宅ローン控除を利用できるのは合計所得金額が2000万円以下の人と定められています。収入が給与のみの人であれば、年収が2195万円を超えると住宅ローン控除を受けられません。
年収の高い人は、自然と生活レベルも高くなってしまいがちです。住宅ローン控除があると思って家を買い、ふたを開けてみると住宅ローン控除を受けられなかったとなると返済計画が狂う可能性があるので、十分な注意が必要です。
まとめ
所得税は税率が所得に応じて段階的に上がっていく累進課税となっています。ただでさえ高所得者は高い税金を納めている中、児童手当に絡ませて扶養控除を廃止し、高所得者からさらに税金を取るような案が出ています。しかも高校生を持つ子育て世帯に対してです。
まだ確定ではありませんが、決定してしまった場合、残念ながら国民は国の決定に従うしかありません。公平な支援を期待しつつ、今ある制度を最大限利用した対策についても理解しておきましょう。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士