更新日: 2023.08.30 その他税金

「月15万円」まで非課税だった通勤手当が課税される? 政府税調が見直しを答申した「配偶者控除」や「生命保険料控除」の現状もあわせて解説

「月15万円」まで非課税だった通勤手当が課税される? 政府税調が見直しを答申した「配偶者控除」や「生命保険料控除」の現状もあわせて解説
2023年6月に答申された政府税制調査会の内容が増税を示唆していると報道されています。今回の答申で明確に増税するとの文言は見つかりませんが、「検討する必要がある(生じている)」「問題がある」と記述されている部分は注意すべきかもしれません。
 
答申のうち、個人の所得税で言及された通勤手当や退職所得控除、配偶者控除、生命保険料について、現行制度と変更された場合の影響を解説します。
二角貴博

執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)

2級ファイナンシャルプランナー

通勤手当

答申の中で、非課税所得等のうち「政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」とされている例は「通勤手当」です。
 
2016年1月以降、交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当の最高限度額は月額15万円まで非課税とされています。新幹線通勤をしている会社員などがあてはまります。この非課税枠が全廃か一部縮小されると、給与の一部として課税されることになるので、今後の議論に要注意です。
 

配偶者控除・配偶者特別控除

次は、配偶者控除と配偶者特別控除です。答申では、「家族や働き方等を巡る様々な議論を踏まえ~中略~あり方についても検討する必要があります」と書かれています。働く女性の増加や扶養の範囲にとどまらない配偶者の働き方を支援するために、控除を縮小するなど見直していこうとする意図が感じられます。
 
配偶者控除は、給与収入であれば配偶者の年収が103万円以下の場合に適用される控除です。一方、配偶者特別控除は、配偶者の年収が103万円を超え133万円以下の場合に段階的に適用されます(その他の細かい条件は割愛します)。
 

退職所得控除

退職金の課税見直しについて報道がされたこともあり、覚えている人もいるでしょう。
 
答申では、「現行の課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される退職金の支給形態を反映したものとなっていますが、近年は支給形態や労働市場における様々な動向に応じて、税制上も対応を検討する必要が生じてきています」とあります。勤務年数が長いからといって控除額を大きくすることについて問題提起されているのです。
 
退職所得の金額は、原則として次のように計算します。
 
(退職金などの収入金額 - 退職所得控除額)×1/2=退職所得金額

収入から差し引かれる退職所得控除額は、次のとおり20年を超えて勤務していると優遇されます。
 

●勤続年数20年以下 勤続年数×40万円
●勤続年数20年超え 800万円+70万円×(勤続年数ー20万円)

 
これまで長期勤務で優遇された控除額が見直されて、20年を超えても20年以下と同じ計算方法になるかもしれません。
 

生命保険料控除

生命保険料控除は、一般の生命保険契約などの掛金のうち、一定額を所得から控除するものです。答申では、「生命保険の加入率は相当の水準に達しており、また、保険にも貯蓄性、投資性の高いものが多く~中略~問題があると考えられます」とされています。
 
かつては国民が生命保険に加入することを後押ししていた控除が役割を終え、投資目的で加入するなら控除を見直すべきだと読み取れます。
 

公的年金等控除

公的年金等控除は、年金等の収入金額から概算で差し引いて所得金額を計算するためのものです。
 
答申では、日本の公的年金に係る税負担は国際的に見ても極めて低く、給与所得と公的年金による雑所得がある人は控除が重複適用されており、同じ収入でも給与収入のみの者と税負担が異なることがあるため、公的年金等に係る雑所得に対する課税のあり方を検討していく必要がある旨が記載されています。
 
具体的な方向性は記載されていませんが、公的年金控除と給与所得控除の動向に注意する必要があるでしょう。
 

増税議論は年末の税制改正大綱の議論へ

今回の答申では、非課税措置や控除の見直しなど幅広く議論されています。今回問題提起された内容がすべて制度改正されることはないかもしれません。しかし、年末の税制改正に何が盛り込まれるか、注意深く見守って行く必要があります。
 

出典

内閣府 税制調査会 わが国税制の現状と課題 -令和時代の構造変化と税制のあり方ー(令和5年6月30日)

 
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー

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