【FP相談】会社員ですがFXの運用で含み益が出ています。利益確定すると確定申告は必要ですか?

配信日: 2023.08.31

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【FP相談】会社員ですがFXの運用で含み益が出ています。利益確定すると確定申告は必要ですか?
Aさんは会社員で趣味としてFXで運用を行っています。昨今の円安で大幅な含み益が出ています。FXで利益が出ると確定申告が必要な場合があります。どのような場合に確定申告が必要になるのかFPが解説します。
植田周司

執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

FXの利益は雑所得

為替先物取引(FXと表記)を利用している方もいらっしゃるでしょう。FXの取引は雑所得に分類され、会社員の場合、雑所得が20万円以上の場合は確定申告が必要です(※1、※2、※4)。
 
確定申告をする場合は、FXの所得は他の所得と区分して、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%を申告・納税することになります。
 

確定申告が不要な人

国税庁のホームページには、下記のように確定申告が必要な方が記載されています(※1)。
 
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
(国税庁ホームページより抜粋)
 
会社員のAさんの場合、上記の確定申告が必要な条件から、FXの利益が20万円を超えると確定申告が必要になります。逆にいうと20万円以下なら確定申告は不要です。
 
AさんはFXの利益が20万円以下になるように、含み益(注)の一部を決済することにしました。FXの利益が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。確定申告をしないことで、結果的に所得税と住民税を払わなくて済むと考えたのです。
 
注:含み益とは、決済により利益確定する前の見かけ上の利益のことで、課税されません。
 

確定申告には、所得税と住民税がある

「確定申告」というと、一般的には所得税の確定申告を指すことが多いですが、正確には所得税と住民税の2つの確定申告があります。所得税の確定申告を行うと、その内容が住民税の確定申告としても扱われ、原則として住民税の確定申告は不要となります。
 
ただし、所得税と住民税では確定申告のルールが異なるため、住民税の確定申告が必要な条件に該当する場合は、住民税の確定申告が必要です。
 
今回AさんのFXの利益に関しては、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の確定申告が必要になります。
 

20万円以下の雑所得でも、住民税の確定申告は必要!

確かにFXの利益が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の確定申告が必要になります。例えば、横浜市のホームページには、市民税・県民税の申告をしなければならない人として、以下の記載があります(※5)。
 

(1)公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の人
(2)1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得以外の所得(配当、不動産、雑所得など)の金額の合計額が20万円以下の人

(横浜市ホームページより抜粋)

 
今回のAさんのように、FXの所得を20万円以下に抑え、所得税の確定申告を免除された人は(2)に該当するため、住民税の確定申告が必要になります。そして5%の住民税を納付する必要があります(表1参照)。
 

表1

 

年金生活者の場合

国税庁のホームページには、年金所得者に係る確定申告不要制度についても記載があり、以下の2つの条件を満たす場合、所得税の確定申告は不要となっています。
 

1. 公的年金等の収入金額が400万円以下であること
2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること

 
年金の収入が400万円以下で、FXの利益を含めた雑所得が20万円以下の場合、原則として所得税の確定申告は不要です。しかしこの場合も、住民税の確定申告が必要な人の(1)に該当するため、住民税の確定申告が必要となりますので、ご注意ください。
 
また、FXの利益分の所得が増えることで、社会保険料(国民健康保険料や介護保険料)も高くなる可能性があります。
 

専業主婦(夫)の場合

FX以外に収入がない専業主婦(夫)の場合は、基礎控除額の48万円以下であれば所得税の確定申告をする必要はありません。ただし、この場合も住民税の確定申告は必要です。
 

FXの損失は繰り越しができる

FXで損失が出た場合、分離課税となっている他の先物取引との損益通算ができます。所得税の確定申告で他の先物取引と損益通算をしても、なお引ききれない損失は、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除できます。これらの損益通算や損失の繰越控除のためには、所得税の確定申告が必要です(※2、※3)。
 
また、損失の繰り越し控除を受けるためには、翌年以降、所得税の確定申告が必要です。
 

まとめ

FXは為替の変動で収益が大きく変わります。来年も今の円安が続く保証はありません。所得税を気にして利益を20万円以下に抑えようとするのは、あまり得策ではないかもしれません。また、利益を20万円以下に抑えても、住民税の確定申告が必要になります。
 
FXで利益が出ていて、確定申告が必要なのに確定申告をしなかった場合は、本来の税金に加えてペナルティー(無申告加算税と延滞税)が加算される可能性があります。少しでも不安がある場合は税理士などの専門家にご相談ください。 
 

出典

(※1)国税庁 確定申告が必要な方
(※2)国税庁 No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係
(※3)国税庁 No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
(※4)国税庁 No.1500 雑所得
(※5)横浜市 市民税・県民税の申告について
 
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

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