親への仕送りで「8万円」の節税に!? 別居する高齢父母の扶養による節税メリットを解説

配信日: 2023.12.19

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親への仕送りで「8万円」の節税に!? 別居する高齢父母の扶養による節税メリットを解説
「扶養控除」が適用できるのは、親族が同居する場合だけだと思っていませんか? 実は、定期的な仕送りをして「生計を一にする」という要件を満たせば、別居する親族についても税金の控除が受けられます。本記事では、親を扶養に入れるメリットを説明し、どのくらい節税になるかを解説します。
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扶養とは

扶養とは、自力で生計を立てられない人を家族・親族が経済的に援助することです。扶養には、税法上の扶養と健康保険法上の扶養があります。本記事では「税法上の扶養」のメリットについて見ていきます。
 

親を扶養に入れるための要件とは?

親を税法(所得税法、地方税法)における扶養親族とするには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
 

(1)納税者と生計を一にしている
(2)親の年間の合計所得金額が48万円以下である(給与のみの場合は給与収入103万円以下)
(3)親が青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを受けていない、また白色申告者の事業専従者でない

 

親の所得要件をクリアするには

扶養親族とする要件の1つ「年間の合計所得金額48万円以下」を満たす条件とは具体的にどのようなものなのでしょうか。親の所得が給与所得のみの場合、給与収入が103万円以下である必要があります。仮に103万円だとすると給与所得控除額の55万円を差し引いて、所得金額は48万円と計算されます。
 
一方で、収入が年金所得のみで65歳以上の場合、年金収入が158万円以下であれば、公的年金等控除額の110万円を差し引いて所得金額は48万円以下になります。なお、65歳未満の場合は、年金収入108万円以下(控除額60万円)が要件です。
 
また、給与所得と年金所得の両方がある場合、合計所得金額の計算で最大10万円の「所得金額調整控除」が適用されます。つまり、「給与所得+年金所得-10万円」の合計が48万円以下であれば要件を満たします。
 

親を扶養に入れるメリット

それでは、親を税法上の扶養親族にするメリットを解説します。
 

扶養控除が受けられる

扶養親族がいる場合、納税者の所得金額を計算する際に、一定金額が控除されます。これを扶養控除と言います。控除額は、その年の12月31日時点の親の年齢などによって異なります。例えば、70歳以上の別居している親を1人扶養に入れた場合の控除額は、所得税で48万円、住民税で38万円です。
 
図表1 扶養控除の金額
 

区分 所得税 住民税
一般の扶養親族 38万円 33万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円 45万円
老人扶養親族(70歳以上) 別居の場合 48万円 38万円
同居の場合 58万円 45万円

 
国税庁 No.1180 扶養控除などを基に筆者作成
 

親を扶養に入れるといくら節税できる?

実際に親を扶養に入れた場合、いくら節税できるかを具体例で見てみましょう。ここでは、別居する70歳の親を1人扶養するケースを想定しました。
 

所得税は4.8万円節約

納税者の所得税額は、「所得税の速算表」を使用して計算します。
 
図表2 所得税の速算表
 

課税所得金額 税率 控除額
1000円から 194万9000円まで 5% 0円
195万円から 329万9000円まで 10% 9万7500円
330万円から 694万9000円まで 20% 42万7500円
695万円から 899万9000円まで 23% 63万6000円
900万円から 1799万9000円まで 33% 153万6000円
1800万円から 3999万9000円まで 40% 279万6000円
4000万円以上 45% 479万6000円

 
国税庁 No.2260 所得税の税率を基に筆者作成
※2037年までは、復興特別所得税2.1%も課されます。
 
「課税所得金額」とは、給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに医療費控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引いた後の金額です。
 
給与収入-給与所得控除-所得控除=課税所得金額
 
次に、別居する老人扶養親族が1人いる場合の所得税の扶養控除は、上述した通り48万円です。
 
例として、課税所得金額が300万円程度の方の場合、所得税額は「課税所得金額×10%-9万7500円」で求めることができます。扶養控除の48万円はこの課税所得金額から差し引いて計算することから、所得税は「48万円×10%」で4万8000円安くなることが分かります。
 

住民税は3.8万円節約

扶養控除は、住民税の節税効果もあります。別居する老人扶養親族が1人いる場合、住民税の扶養控除は、上述した通り38万円です。住民税額は「課税所得金額×10%(所得割)+5000円(均等割)」で計算します。
 
扶養控除の38万円をこの課税所得金額から差し引きする形となり、住民税は「38万円×10%」で、3万8000円安くなります。このケースでは所得税と住民税を合わせて、年間で約8万6000円の節税になると分かりました。
 

親を扶養に入れるときの注意点

一方で、別居する親を税法上の扶養に入れるときの注意点を3つ解説します。
 

手渡しでなく銀行振込にする

日本国内に住む親族に扶養控除を適用する場合、法令上は、親への送金などを証明する必要はありません。
 
ただし、国税庁は源泉徴収を行う会社に対し、「銀行振込や現金書留により送金している事実を振込票や書留の写しなどの提示を受け確認する」ことを推奨しています。所属する会社から証拠を求められる可能性も考えられます。親に金銭的援助をしている方は、手渡しでなく振り込み等で証拠を残したほうがよいでしょう。
 

すでに兄弟姉妹が親を扶養に入れていないか

対象の扶養親族1人につき、扶養控除が適用できる納税者は1人だけです。すでに親があなたの兄弟姉妹などの扶養に入っていた場合、あなたが扶養控除の申告をしても適用されません。
 

別居する親が住民税非課税世帯でないか

親が住民税非課税世帯の場合、健康保険料や介護保険料等の減免を受けている可能性があり、扶養に入るとかえって負担が大きくなる場合があります。
 
住民税非課税世帯とは、「同一生計配偶者および扶養親族がいない場合、一般に前年の合計所得金額が45万円以下」の世帯をさしますが、住む自治体によって条件が異なる場合もあります。
 
また、住民税非課税だと一般的に自治体から納税通知書が発行されません。非課税であるか確かめたい場合は親が住む自治体に問い合わせるか、「課税(非課税)証明書」の交付申請をするとよいでしょう。
 

まとめ

別居する高齢の親を税法上の扶養に入れることで、課税所得金額300万円程度の人なら、年間で約8万6000円の節税になることが分かりました。控除を適用する際の注意点をよく確認したうえで、親を扶養に入れるか検討しましょう。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除

e-Gov法令検索 地方税法

国税庁 同居していない母親の医療費を子供が負担した場合

国税庁 No.1410 給与所得控除

国税庁 高齢者と税(年金と税)

国税庁 No.1411 所得金額調整控除

国税庁 No.2260 所得税の税率

国税庁 No.1180 扶養控除

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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