更新日: 2024.01.05 年末調整
はじめての「住宅ローン控除」は会社の年末調整でできない!? 税金で「損」をしないために会社員が確認すべきこと5選
本記事では、年末調整で精算できない医療費控除・ふるさと納税控除・雑損控除・1年目の住宅ローン控除・副業配当収入の注意点について解説します。
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
会社員の年末調整とは
会社員の所得税は、社会保険料や住民税と同様に、給与から天引きされるのが一般的です。
毎月分の給与にかかる所得税は概算で多めに天引きされているため、年末に還付されることがよくあります。このため、1~12月に支給された給与や賞与に対して、納めなければならない所得税額の精算を行います。これを年末調整といいます。この年末調整は会社側が行うため、会社から求められた申告書を提出すればよいと思っている人もいるでしょう。
しかしそれでは、精算されない場合もあります。年間の給料収入の額が2000万円を超えると年末調整の対象にはなりません。また、複数の会社から給与をもらっていて、どの会社でも年末調整がされていない場合や、年末調整で精算できない控除がある場合は、年明けの確定申告を個人で行って精算することになるので注意しましょう。
年末調整でできないこと5選
ここで前述した年末調整で精算できない項目を5つ解説します。
1.医療費控除
医療や介護で支払った費用は年末調整では精算できないので、確定申告が必要です。例えば所得が200万円以上ある人は、10万円以上の医療費の支払いがあれば所得税が還付になる可能性があります。1人分では少ないと思っても、扶養家族の分などを集めれば対象となる場合があるので領収書を探してみましょう。
2.ふるさと納税の控除(寄附金控除)
ふるさと納税分を控除するために、確定申告が必要な場合があります。通常、1年に5自治体以内であれば、ワンストップ特例を利用すれば年末調整は不要です。
しかし、5つ以上の自治体に寄付をしていたり、寄付先にワンストップ特例の申請をしなかったりした場合は確定申告が必要となります。また、特例の申請をしていても医療費控除などで確定申告をした場合は、精算のため改めて確定申告が必要となるので気をつけましょう。
3.雑損控除
雑損控除とは、災害または盗難もしくは横領によって、一定の資産について損害を受けた場合等に所得控除を受けられる制度です。控除される金額は、次の(1)と(2)のうちいずれか多いほうの金額です。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
雑損控除には細かいルールがあるので、控除を受ける際には税務署や税理士に相談すると良いでしょう。
4.住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)(1年目)
住宅ローン控除は、2年目から年末調整で控除を受けられますが、1年目だけは必要書類をそろえて自身で確定申告をする必要があります。添付書類には金融機関からの年末残高等証明書や登記事項証明書などの証明書も必要となるので、事前に準備しておきましょう。
5.副業・配当収入
給与以外に副業所得が20万円以上ある場合は、確定申告が必要です。ただし、20万円以下でも医療費控除などの確定申告をした人は確定申告をする必要があります。年末調整された源泉徴収票をもとに申告しましょう。なお、20万円以下でも住民税の申告は必要です。
また、株式の配当がある人で、配当控除を受けたい方も確定申告が必要です。確定申告が必要かどうかは、図表1を参考にしてください。
図表1
課税方式 | 確定申告の要否 |
---|---|
分離課税 (証券会社に開設した特定口座で源泉徴収されているもの) |
申告不要 |
分離課税 (上記以外) |
申告必要 |
総合課税 | 申告必要 |
国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度より筆者作成
専門家でない個人が、どの課税方式が有利か判断するのは難しい場合があります。分からない点があれば、税務署や税理士に確認しましょう。
年末調整でしっかり控除を受けるには
年末調整で控除を受けるには、勤務先へ定められた申告書を提出することが大切です。申告書の種類と控除できる項目は図表2のとおりです。
図表2
申告書 | 控除できる項目 |
---|---|
扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除 |
基礎控除申告書 兼配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書 |
基礎控除 配偶者控除、配偶者特別控除 所得金額調整控除 |
保険料控除申告書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)、小規模企業共済等掛金控除(申告分) |
住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除(2年目以降) |
国税庁 給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)より筆者作成
次に、各申告書の注意点について解説します。
扶養控除等(異動)申告書
扶養親族や控除対象配偶者がいない場合でも提出が必要です。提出をしないと、毎月通常より高い税額で天引きされてしまいます(後日、年末調整で精算)。
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
基礎控除などの申告書は、2020年分から設けられた新しい申告書です。合計所得金額が2500万円以下である場合は最大48万円の基礎控除を受けられるよう、必ず提出しましょう。また、年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除を受ける際にも必要です。収入金額が850万円を超え一定の要件に該当する人が記載する欄もあります。
保険料控除申告書
給与から天引きされているもののほかに、生計を同じくする親族分の社会保険料なども対象になるので忘れずに記載しましょう。
住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除は、住宅ローン等の年末残高に応じて、一定額を税額から直接差し引くことができる控除です。最初の年分は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除できるので、住宅ローンの年末残高等証明書を添付して勤務先に申告しましょう。
まとめ
会社員は原則として年末調整で納税手続きが終わりますが、他に控除できる項目があるにもかかわらず、知らずに税金を納めすぎていることもあります。しっかり年末調整しても精算できない項目があれば、確定申告を行い適正に納税しましょう。
出典
国税庁 給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー