同じ「年収1000万円」でも支払う税金はぜんぜん違う!?「1人で稼ぐ高給取り」と「夫婦で稼ぐパワーカップル」を比較
配信日: 2024.03.28
執筆者:沢渡こーじ(さわたり こーじ)
公認会計士
パワーカップルとは
パワーカップルの定義ははっきりとは決まっていませんが、ここでは夫の年収が600万円以上、妻が400万円以上で世帯年収が1000万円以上の夫婦をパワーカップルとします。夫婦の共働きでお金をたくさん稼いでいる家庭ということですね。
これぐらいだと普通の共働きでは? と思う人がいるかもしれませんが、厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(2022年)によると、世帯年収が1000万円以上の割合は12.6%ほどです。
さらに、全世帯の平均年収は545万7000円のため、世帯年収が1000万円を超えることはそれなりにハードルが高いです。
収入が高いとこんなに税率が高くなる!
収入には所得税がかかります。
所得税では、1人が稼ぐ所得が多ければ多いほど税率が高くなります。
収入から経費を引いたものが所得です。給与をもらっている会社員の場合、給与所得控除といって、給与から一定の額が引かれた金額が所得になります。
では、収入が違うとどれくらい税率が違うのでしょうか?
例えば、収入が給与のみの会社員の場合、年収400万円だと所得は276万円。所得276万円だと税率は10%になります。
これが年収1000万円だと、所得は805万円。税率は23%になります。年収400万円と1000万円を比べると、税率が倍以上違ってきます。
実際どれくらい税金が違うの?
年収が違うと、かかる税率にかなりの差があることが分かりました。では、1人で1000万円稼ぐ場合と、夫600万円・妻400万円で世帯年収が1000万円の場合ではどれくらい税金が違うのかをシミュレーションしてみます。なお、計算を簡単にするため、所得控除や税額控除は考慮せずにシミュレーションを行います。
1人で1000万円稼ぐ場合
1人で年収1000万円稼ぐ場合の税金を計算します。
給与のみで年収1000万円の場合、所得は805万円。805万円×23%-控除額63万6000円=121万5000円で、税金は121万5500円になります。
夫600万円・妻400万円稼ぐ場合
夫と妻、それぞれに所得税がかかります。
夫の年収が600万円のとき、所得は436万円。
436万円×20%-控除額42万7500円=44万4500円で、税金は44万4500円になります。
妻の年収が400万円のとき、所得は276万円。
276万円×10%-控除額9万7500円=17万8500円で、税金は17万8500円です。
夫婦の税金を合わせると62万3000円です。
税金の控除などを考慮しない場合だと、1人で1000万円稼ぐ場合と比較して夫婦共働きの方が、59万2500円税金が安くなります。
共働きの方が税金は有利になる
実際の所得税では、支払った社会保険料の控除や配偶者控除などがあるため、税金の計算はより複雑になりますが、1人でたくさん稼ぐよりも、夫婦で分散して同額を稼いだ方が所得税は安くなることが分かります。
前記の通り、所得税では1人が稼いだ所得が多いほど税率が高くなるため、夫婦共働きで稼いだ方が税率を抑えられ、所得税が有利になるからです。
夫婦共働きの壁がある
夫婦共働きの場合、稼ぐ金額に一定の壁が存在します。配偶者が年間所得48万円を超えて稼ぐと配偶者控除が受けられなくなり、その分税金は増えてしまいます。年収に直すと103万円超です。これが1つの壁になります。
配偶者控除が受けられなくなると、仮に夫の年収が600万円であれば下記の計算により7万6000円の税金負担が増えることになります。
年収600万円-給与所得控除164万円=所得436万円
所得436万円の時の税率20%×配偶者控除38万円=7万6000円
また、年収が106万円または130万円に達すると配偶者も社会保険料を負担しなければならず、これも壁となります。
130万円÷12ヶ月で、平均の月額給与を約10万8000円とすると、年収が130万円に達したときの社会保険料の負担は約20万円です。
こういったことを考慮すると、年収が103万円を少し超えた程度、もしくは年収が130万円を少し超えた程度だと、配偶者控除が無くなった分や社会保険料の負担増の分、損をします。
共働きで稼ぐのであれば収入を抑えるか、あるいは負担増の金額以上にたくさん稼ぐ方がいいでしょう。所得税の負担を抑え、配偶者控除や社会保険料で損しないことを考えると、ある程度夫婦で均等にお金を稼げるのが理想です。なお、1点補足すると、1人の年収が1000万円を超える場合でも配偶者控除が受けられなくなります。
まとめ
1人で1000万円稼ぐよりも、夫600万円・妻400万円というように、夫婦である程度均等に稼いだ方が税金面で有利だということが分かりました。年収103万円の壁や160万円の壁などがあるものの、400万円稼げば損にはならないので、これくらいの稼ぎを目指すのが良いかもしれません。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士