消費税引き上げ間近!私達の住宅への影響はあるのか
配信日: 2018.12.27 更新日: 2019.05.17
それによると、スーパーやコンビニで購入した食品を持ち帰る場合は消費税が8%に軽減されますが、店内(イートイン)で飲食する場合は軽減されず、10%となるようです。
レジでの顧客の意思確認など、手続きが煩雑になりそうですが、「持ち帰る」と言ってイートインで飲食する場合はどうなのでしょうか。いろいろと疑問が尽きません。
ところで、消費税率の引き上げによって、最も大きな影響が出ると考えられるのは、やはり金額が大きい住宅ではないでしょうか。例えば2000万円の新築住宅の場合、現在も160万円の消費税が課せられていますが、2%の税率アップによってさらに40万円も増えることになります。
来年の税率引き上げ時に住宅課税への対応はどうなるのか、過去の経緯もご紹介しながら整理します。
Text:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上顧客の相続対策や不動産活用を担当。
現在はFP、不動産コンサルタントとして相談、実行支援、講師、執筆等を行っている。平成30年度日本FP協会広報センタースタッフ、メダリストクラブFP技能士受験講座講師、NPO法人ら・し・さ理事、埼玉県定期借地借家権推進機構理事
諸外国の住宅への消費税課税はどうなっている?
日本では、通常の消費税率が適用されている住宅ですが、諸外国ではどのような制度になっているのでしょうか。
消費税率が5%から8%に引き上げられた前年の2013年、住宅生産団体連合会は、欧米6カ国における住宅の消費税課税制度についての調査結果を発表しています。それによると、調査対象国では住宅に対して、非課税制度や軽減税率が適用されています。※2
欧米諸国では、住宅は重要な「経済の柱」であり、また、持ち家を「社会政策」の一環として捉えているため、住宅に対しては消費税を優遇しています。
日本では住宅に対する軽減税率の配慮はなかった
一方、日本では住宅に非課税や軽減税率の適用はありません。
実は過去の消費税導入や税率引き上げの際にも、住宅業界団体やハウスメーカーは諸外国の事例を根拠に、国に対して住宅への非課税の適用を強く求めてきました。しかし、結果的に住宅は消費税の適用対象となりました。
今回、新聞業界は新聞への軽減税率適用のために大キャンペーンを行い軽減税率を勝ち取りましたが、同じように軽減税率の適用を求めた住宅業界の声がマスコミに大きく取り上げられることはなく、聞き入れられることはありませんでした。
日本での住宅消費税への対策
日本でも過去、消費税導入時や税率引き上げ時に、住宅市場の冷え込みを防ぐための対策が講じられてきました。その代表が、住宅ローン控除の拡大です。
現在の制度では、最大控除額は400万円(長期優良認定住宅の場合は500万円)となっていますが、最大限の控除が受けられるのは、購入から10年後の借入残高が4000万円以上(長期優良認定住宅は5000万円以上)ある人だけで、多額の借り入れをして高額な住宅を購入できる所得の高い層が中心です。
多くの人たちは国が強調していたほどの恩恵は受けられていません。また、住宅エコポイント制度が実施されたこともありましたが、当時は商品券への引き換えもできたため、必ずしも即効性のある対策とは言えないものでした。
次回の引き上げ時の支援策は?
来年の消費税率引き上げ後の住宅取得支援策は、これから住宅取得を考えている人にとっても、関心があるところでしょう。
政府が検討している対策としては「住宅エコポイントの復活」「住宅ローン減税の拡大」「すまい給付金」があります。この記事が掲載される頃には、与党の税制改正大綱がまとまっているかもしれません。
住宅ローン控除についても、現在検討されている控除期間の延長だけでなく、控除率の引き上げを行うなど、より効果の大きい対策を期待します。これから、どのような効果的な対策が打ち出されるのか、関心を持って見ていきましょう。
※1国税庁「消費税軽減税率制度に関するQ&A(個別事情編)2018年11月
※2一般社団法人 住宅生産団体連合会「欧米諸国における住宅消費課税制度の概要と背景」2013年3月
Text:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント