落とし物を拾った際の報労金にも「税金がかかる」って本当ですか?むやみに落し物は拾わない方がいいでしょうか?
配信日: 2024.08.30
本記事では、落とし物の報労金に関する税金の扱いを詳しく説明します。報労金が所得税の対象となる理由や、その計算方法、確定申告時の注意点について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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落とし物を拾った方の権利
落とし物を拾った日から7日以内に届け出をした人は、遺失物法により次のとおり3つの権利があります。
・報労金を請求する権利
・届ける際にかかった費用を請求する権利
・落とし物の所有権を取得する権利
報労金とはお礼のことを指し、落とし物の価格の5~20%の額を請求することができます。また、落とし物を届ける際に費用が発生した場合には、別途その費用を請求可能です。持ち主は、報労金の請求を拒否することはできません。
そして、3ヶ月経過しても持ち主が現れなかった場合には、拾った方に拾得物の取得権利が移ります。ただし、刀や銃、大麻や覚せい剤などの所持禁止物品や運転免許証、健康保険証、クレジットカードなどの個人情報関連のものは、所有権を持てません。
報労金の取り扱い
所得税法第34条によると、拾得物の取得権利を得た場合や報労金を得た場合は一時所得として取り扱われます。
国税庁によれば、一時所得とは「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」とのことです。一時所得には、次のようなものが含まれます。
・懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除く)
・競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)
・生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除く)や損害保険の満期返戻金など
・法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く)
・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金など
・資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
労働による給料や継続的なギャンブルによる利益などではない場合には一時所得となるため、報労金に関しても一時所得になるのです。
50万円を超える場合には課税対象になる
報労金は一時所得に該当するため、拾得物の価格や報労金が50万円以下の場合は非課税となります。
また、一時所得は、金額の2分の1に相当する金額を給与所得などと合算し、所得税が計算されます。取得した報労金が多いほど、所得税も増えるということになるのです。
さらに、所得税には累進課税制度が導入されています。そのため、一時所得によって所得全体が増えた場合、税率が上がることによってさらに課税額が増加するケースもあります。
100万円の報労金を得た場合の税金は?
ここからは、実際に100万円の報労金を得たケースをモデルに発生する税金について計算してみましょう。所得税の金額は、図表1に記載の税率で求められます。
図表1
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」より筆者作成
一時所得の金額は、100万円-50万円(特別控除)=50万円です。このうち、課税対象は2分の1の金額となるため、25万円となります。
年収300万円の方がこの報労金を得たとした場合、今までの税額は約20万円ですが、報労金を含む税額は約27万円です。ただし、課税対象となる所得の合計によって税率が異なるため、税金がさらに高額となるケースもあります。
確定申告が必要
報労金により50万円を超える一時所得を得た場合には、確定申告が必要です。ただし、一定の条件を満たす場合には、確定申告が不要なケースもあります。確定申告が不要な条件は、次のとおりです。
・給与所得や退職所得以外の総合計所得が一時所得を含めて年間20万円以下
・給与所得者でそれ以外の所得が一時所得のみ、かつ一時所得の総収入が90万円以下
確定申告をしなかった場合には、無申告加算税の対象となります。この場合、原則として納付税額の50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の加算税が課せられるため、注意が必要です。
出典
警察庁 スライド『落とし物・忘れ物を拾ったら?』編 警察に届け出ましょう!
兵庫県警察本部総務部会計課監査第三係 遺失物取扱いのしおり(施設占有者のみなさまへ)
国税庁 所得税法第34条(一時所得)関係
デジタル庁 e-GOV法令検索 遺失物法
国税庁 No.1490 一時所得
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー