パートで「月10万円」稼ぐ妻が、10月から会社の「社会保険」に加入するそうです。その場合、夫である私の“手取り”も減るのでしょうか? これ以上減るとつらいです…

配信日: 2024.10.13

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パートで「月10万円」稼ぐ妻が、10月から会社の「社会保険」に加入するそうです。その場合、夫である私の“手取り”も減るのでしょうか? これ以上減るとつらいです…
2024年10月よりパート・アルバイト従業員の社会保険適用範囲が拡大されたことに伴い、自分の配偶者が社会保険に入ることになったという人も多いでしょう。いわゆる「扶養を抜ける」ことになるため、配偶者の手取りだけではなく自分の手取りも減るのではと不安に感じる人もいるでしょう。
 
本記事では配偶者が会社の社会保険に加入し扶養から外れた場合、自分の手取りにも影響するか見ていきます。
浜崎遥翔

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

2024年から新たに社会保険の適用が拡大されるのはどんな人?

パート・アルバイト従業員のうち、2024年10月からは、次の(1)~(5)の全てを満たす人が社会保険の加入対象となります。


(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)所定内賃金が月額8万8000円(年額106万円)以上
(3)2ヶ月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く人と同様)
(4)学生ではない
(5)従業員数が51人以上の企業で働いている

このうち(1)~(4)までの条件に変更はありませんが、(5)に関しては2024年9月末まで「従業員数101人以上の企業で働いている」だったものが、「従業員数51人以上の企業で働いている」に変更されました。
 
つまり、51人以上100人以下の企業で働いているパート・アルバイト従業員で(1)~(4)に当てはまる人が、新たに社会保険の適用となったのです。
 

社会保険に入ることで配偶者の手取りはどのくらい減る

配偶者が社会保険に加入すると、配偶者自身の手取りはいくら減るのでしょうか? 社会保険に加入することで、新たに厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上の場合)の負担をしなければなりません。
 
例えば、月収10万円で協会けんぽ(東京都)に加入する42歳の女性(介護保険料負担あり)の場合を計算すると、厚生年金保険料は月額8967円、健康保険料(介護保険料含む)は月額5674円です。つまり、配偶者の手取りは合計の月額1万4641円減ってしまいます。
 

社会保険上の扶養と税制上の扶養は違う

配偶者が「扶養から抜ける」と聞くと自分の税金が増えると考えるかもしれませんが、それは違います。
 
扶養には「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」があり、自分の税金に関わるのは後者の「税制上の扶養」だからです。2つの扶養について見ていきましょう。
 

社会保険上の扶養を抜けて影響が出るのは抜けた本人

「社会保険上の扶養」を抜けると、抜けた本人が自分で社会保険に加入し、保険料を支払わなければなりません。したがって、扶養を抜けた本人の金銭的な負担が増えます。今回のケースでいうと配偶者の手取りが1万4641円減ったわけです。
 
なお、社会保険上の扶養を抜けるケースは2つあります。1つは、今回のケースのように会社の社会保険に入らなければならない場合です。条件の1つが「年収106万円を超えること」なので、106万円の壁とも呼ばれます。
 
もう1つは、年収130万円を超えたケースです。社会保険上の扶養となれるのは年収130万円までと決まっています。このケースでは自分で国民健康保険・国民年金に加入するなどの対応が必要となり、130万円の壁と呼ばれます。
 

税制上の扶養を抜けると影響が出るのは扶養している人

「税制上の扶養者」であることで恩恵を受けるのは扶養している人で、「配偶者控除」や「扶養控除」といった税制上の優遇により支払う税金を減らせます。
 
「税制上の扶養」となれるのは、給与収入だけの場合、年収103万円以下の人です。つまり、扶養していた配偶者や親族が年収103万円を超えて「税制上の扶養」から抜けたとき、手取りが減るため、103万円の壁と呼ばれます。
 
なお、配偶者控除の対象から抜けたとしても、配偶者特別控除が受けられる(控除を受ける人の年収が1000万円以下の場合)ため、103万円を超えた後も150万円を超えるまでは手取りが減ることはありません。
 
今回のケースでは、年収は変わらないことから税制上の扶養状況が変化するわけではなく、自分の手取りには影響がないのです。
 

配偶者の社会保険の加入で配偶者の手取りは減るが自分の手取りは減らない

2024年10月の制度改定で影響が及ぶのは「税制上の扶養」ではなく、「社会保険上の扶養」です。そのため、配偶者の手取りは減りますが、自分の手取りまで減ることはありません。
 
家族全体として手取りが減るのは事実です。しかし、配偶者が社会保険に入ることにより、将来の年金が増える、傷病手当などの対象となる、年収を気にせずに働きたいだけ働けるというメリットも考えられます。
 
もちろん、106万円以下に年収を抑えて社会保険上の扶養に残り続けるのも1つですが、社会保険料に加入するメリットも考え総合的に判断すると良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用ガイドブック
厚生労働省 年収の壁について知ろう
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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