パート勤務で「年収120万円」ですが、10月から「社会保険料」が天引きされるようになりました。友人は私と年収が同じくらいなのに“対象外”だそうです。なぜでしょうか?
配信日: 2024.11.13
本記事では、2024年10月からの社会保険適用拡大の除外となるケースについて、分かりやすく解説していきます。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
2024年10月からの社会保険適用拡大とは
2024年10月からの制度改正では、従業員数51人以上の企業で、次の要件を満たす労働者が社会保険の適用対象となります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8万8000円以上(年収換算で約106万円以上)
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
これまでは、従業員数101人以上の企業で働く従業員が、これらの要件を満たした場合に社会保険加入対象となっていました。これを従業員数51人以上の企業の従業員も対象にすることで、より社会保険に加入する人が増える見込みです。
年収106万円超でも適用除外となるケースとは
今回の社会保険適用拡大において、何かと話題になる「年収106万円」はあくまで目安の年収です。ここでは、年収106万円を超えていても適用対象外となるケースについて解説します。
週の所定労働時間が20時間未満の場合
月額賃金8万8000円、年収106万円を超える場合でも、週の所定労働時間が20時間未満の場合は社会保険適用の対象外となります。例えば、時給2000円で週18時間勤務の場合、労働時間や月収は次のようになります。
・月の労働時間:72時間(18時間×4週)
・月収:14万4000円(2000円×72時間)
・年収:172万8000円
年収は106万円を大きく上回っていても、週の所定労働時間が20時間未満です。このため、このケースでは社会保険の適用対象外です。
月収に残業代や手当が含まれている場合
月額賃金が8万8000円を上回っている場合でも、所定内賃金が規定を超えていなければ社会保険の適用対象外です。次のような手当は、「所定内賃金」には含みません。
・時間外労働手当
・休日・深夜手当
・賞与
・業績給
・慶弔見舞金
・皆勤手当
・通勤手当
・家族手当
例えば月10万円の収入のうち2万円が残業手当である場合などは、社会保険の適用対象外となります。また、年収120万円の人が、賞与として年間20万円受け取っている場合なども、同じく対象外です。
そのほかの場合
このほか、社会保険適用の対象外となるケースは2つ考えられます。まずは、雇用期間が2ヶ月を超えない場合です。雇用契約書に「1ヶ月の期間限定の雇用」などの記載があるときは、対象外となります。
また、社会保険適用拡大の要件にある通り、学生の場合はほかの要件に合致していても対象となりません。ただし、休学中や夜間学生は除外されません。
政府が社会保険適用拡大を進める理由
政府はこれまで段階的に、パート勤務などの短時間労働者の社会保険適用拡大を進めてきました。
一方で、社会保険加入の要件に当てはまらないように、労働時間や賃金を調整する短時間労働者が多いのが実情でもあります。それでも、政府が社会保険適用拡大を進める理由は次の3つです。
・企業に雇用される「被用者」として、より充実した社会保障を受ける権利を得られるようにしたいため
・働き方や雇用の選択肢をより広げるため
・定額の基礎年金に加えて、報酬比例給付の保障を受けられるようにするため
短時間労働者が社会保障に加入することにより、「年収の壁」の意識を少なくし、そのときの状況に応じて柔軟に働き方を選べるようになります。また、社会保険に加入することで、もちろん将来受け取る老齢年金額が増えます。それだけでなく、次のような万一の事態にも備えられます。
・何らかの原因で障害状態となったり軽度な障害が残ったりした場合、障害厚生年金や障害手当金が受け取れる
・厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合、遺族が遺族厚生年金を受け取れる
自身のセカンドライフに向けてだけではなく、不測の事態にも備えられるよう、政府は社会保険適用拡大を進めているのです。
まとめ
2024年10月からの社会保険適用拡大により、より多くの短時間労働者が社会保険の対象となります。社会保険適用には4つの条件を全て満たす必要があるため、友人の年収が自身と同じ120万円程度であって106万円を超えている状態であっても、適用除外となる可能性があります。
社会保険料を納めると収入の手取りは減りますが、その分社会保障を受けられるため、どちらが良いとは言い切れません。そのときの自身や家庭の状況によって、柔軟に働き方を選べると良いですね。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック
内閣府 政府広報オンライン
執筆者:古澤綾
FP2級