父が亡くなり、母は月8万円の遺族年金と貯金500万円で一人暮らしをしています。心配なので扶養に入れたいのですが、年金を受け取っていても入れるのでしょうか?

配信日: 2025.01.15

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父が亡くなり、母は月8万円の遺族年金と貯金500万円で一人暮らしをしています。心配なので扶養に入れたいのですが、年金を受け取っていても入れるのでしょうか?
父親が亡くなり、高齢の母親が一人暮らしをしていると、生活に問題がないか不安になる方もいるでしょう。少しでも負担を減らすために、子どもの扶養に入る方法があります。
 
扶養は年齢や状況によって該当する種類が変わるため、確認しておきましょう。今回は、親が扶養に入るための条件や、親を扶養に入れた際に子どもが負担する税額がどれくらい変わるかなどについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

親を扶養に入れる条件とは?

扶養に入ると、親は国民健康保険料の支払いが免除されるため、費用の負担を軽減できる点がメリットです。国税庁によると、親が扶養親族として見なされるためには、以下の条件を全て満たしている必要があります。

●子どもと生計を一にしている
●所得金額が年間で合計48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)
●青色申告者の専従者として一度も給与を受け取っていない(※専従者とは申告者と生計を一にする15歳以上の配偶者や親族で事業主の元で働いている方)
●白色申告者の専従者でない

もし該当していれば、一般の扶養親族か、老人扶養親族として扱われます。老人扶養親族とは、その年の12月31日時点で70歳以上の方です。
 
さらに、親が一人暮らしをやめ、扶養されている子どもと暮らすと「同居老親等」になります。それぞれ条件を満たしていれば所得控除が受けられます。国税庁によると、各扶養親族がいる場合の所得税の控除額は以下の通りです。

●一般:38万円
●老人扶養親族(同居老親等以外):48万円
●同居老親等:58万円

なお、同居老親等と見なされるのは同居を常としている場合です。例えば、親が老人ホームなどに入所しているならば、同居を常としているとは見なされません。
 
また、親が70歳になっていない場合は老人扶養親族の条件を満たさないため、一般の控除額が適用されます。
 

遺族年金は収入条件に含まれない

もし母親が父親の遺族年金を受け取っていても、所得条件には加算されません。国税庁によると、遺族年金や遺族恩給は原則として所得税や相続税の課税対象外です。
 
そのため、母親が遺族年金を受け取りながら働いているときは、働いて得た年収のみを基に、扶養親族の判断がなされます。
 
老齢基礎年金や老齢厚生年金など、通常の年金は課税対象です。
 

親を扶養に入れると子どもの税額負担はどれくらい変わる?

今回は、母親が一般扶養親族、老人扶養親族(同居老親等以外)、同居老親等だった場合に子どもの税額がどれくらい変わるのか比較しましょう。条件は以下の通りです。

●子どもは東京都在住40代
●年収600万円
●賞与は考慮しない
●控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、扶養控除のみ
●加入している保険は協会けんぽ(全国健康保険協会)
●住民税率は基準値
●母親は専業主婦
●母親以外の扶養親族はいない

年収が600万円のとき、今回の条件だと月収は50万円です。月収を基に計算される社会保険料は以下のようになります。

●健康保険料(介護保険料込み):年額34万7400円
●厚生年金保険料:年額54万9000円
●雇用保険料:年額3万6000円
●社会保険料合計額:年額93万2400円

また、国税庁によると、給与所得控除は「600万円×20%+44万円」で求められ、164万円です。社会保険料控除と給与所得控除を基にした税額は表1のようになります。
 
表1

扶養親族なし 母親が一般扶養親族 母親が老人扶養親族(同居老親等以外) 母親が同居老親等
(給与所得-給与所得控除)-社会保険料控除 342万7600円
所得税扶養控除額 0円 38万円 48万円 58万円
所得税基礎控除額 48万円
所得税の課税金額(1000円未満端数切り捨て) 294万7000円 256万7000円 246万7000円 236万7000円
所得税率、控除額 10%、9万7500円
所得税額 19万7200円 15万9200円 14万9200円 13万9200円
住民税扶養控除額 0円 33万円 38万円 45万円
住民税基礎控除額 43万円
住民税の課税金額 299万7600円 266万7600円 261万7600円 254万7600円
住民税率と住民税均等割額 10%+5000円
住民税額 30万4760円 27万1760円 26万6760円 25万9760円
所得税額+住民税額 50万1960円 43万960円 41万5960円 39万8960円

※筆者作成
 
扶養親族がいない場合と、母親が同居老親等に認められた場合では税額に10万3000円の差があります。一般扶養親族でも7万1000円の差になるので、扶養に入ってもらった方が節税になるでしょう。
 

条件を満たしていれば扶養に入れる

扶養親族は、遺族年金を受け取っていても条件を満たしていれば対象になります。母親が一人暮らしをしており不安に思う場合は、扶養に入らないか聞いてみましょう。
 
親が扶養に入る場合、親の年齢や同居しているかによって該当する種類が異なります。もし同居老親等に該当する場合は控除額も大きいため、子どもの税金負担も軽くなるでしょう。今回のケースだと、最大で10万3000円の税金が減額できます。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1180 扶養控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1605 遺族の方に支給される公的年金等
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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