更新日: 2020.09.15 控除

寡婦控除が見直され、ひとり親控除が創設されたことをご存じですか?

執筆者 : 新美昌也

寡婦控除が見直され、ひとり親控除が創設されたことをご存じですか?
寡夫控除・特別の寡婦の廃止など寡婦控除が見直されました。また、ひとり親控除が創設され、未婚のひとり親も所得控除の対象となりました。改正のポイントを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

未婚のひとり親も所得控除の対象に

寡婦(寡夫)控除は、所得控除なので税軽減効果はそれほど大きくないかもしれません。しかし、公営住宅の家賃や保育料、国民健康保険料など住民サービスのさまざまな場面で、寡婦(夫)控除の適用の有無で大きな格差が生じます。
 
平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、母子世帯の平均年間就労収入は200万円なのに対し未婚の場合は177万円となっています。同じひとり親世帯であっても、婚姻歴の有無で収入や行政サービスの利用に差があるのは不公平との声が高まっていました。
 
そこで、自治体の中には保育料の算定等にあたり、税法上の寡婦(夫)控除が適用されない婚姻歴のない未婚のひとり親に対し、寡婦(夫)控除のみなし適用を実施するところが出てきました。
 
その後、平成31年度税制改正で子供の貧困に対応する観点から、収入の少ないひとり親が個人住民税の非課税措置の対象に加えられることになりました(2021年分以後の個人住民税から適用)。そして、ようやく令和2年度税制改正により、ひとり親控除の創設が行われ、未婚のひとり親も所得控除が受けられるようになりました。同時に寡婦(夫)の見直しも行われました。
 

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寡婦(夫)控除(改正前)

原則としてその年の12月31日の現況で、次の3つの要件をすべて満たす男性は寡夫に該当し、寡夫控除(27万円)を受けることができます。

要件
  • (1) 合計所得金額が500万円以下であること。
  • (2) 妻と死別し、もしくは妻と離婚した後婚姻をしていないこと、または妻の生死が明らかでない一定の人であること。
  • (3) 生計を一にする子がいること。

 
一方、原則としてその年の12月31日の現況で、次の要件のいずれか1つを満たす女性は寡婦に該当し、寡婦控除(27万円)を受けることができます。

要件
  • (1) 夫と死別し、もしくは夫と離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人、または生計を一にする子がいる人。
  • (2) 夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人。この場合は、扶養親族などの要件はありません。

 
なお、「生計を一にする子」の子とは、総所得金額等が38万円以下(令和2年分以後は48万円以下)で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。
 
さらに、一般の寡婦に該当する人が次の要件のすべてを満たすときは、特別の寡婦の該当し、寡婦控除(控除額35万円)を受けることができます。

要件
  • (1) 夫と死別しまたは夫と離婚した後婚姻をしていない人や、夫の生死が明らかでない一定の人。
  • (2) 扶養親族である子がいる人。
  • (3) 合計所得金額が500万円以下であること。

寡婦控除の見直し

改正前の寡婦(夫)控除には、次の問題点が指摘されていました。

問題点
  • 控除の対象となる扶養の要件が、寡婦と寡夫で異なっている。
  • 控除金額が、寡婦と寡夫で異なるケースがある。
  • 未婚のひとり親が対象にならない。

 
そこで、令和2年度税制改正により、寡婦(寡夫)控除が見直され、特別の寡婦控除(35万円)と寡夫控除は廃止され、寡婦控除の対象者は縮小化し、ひとり親控除が創設されました。
 
改正後の寡婦とは、次に掲げる人でひとり親に該当しない人をいいます。控除額は27万円です。
 
(1)夫と離婚した後婚姻をしていない人で、次に掲げる要件のいずれにも該当する人。
イ 扶養親族を有すること。
ロ 合計所得金額が500万円以下であること。
ハ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと。
 
(2) 夫と死別した後婚姻をしていない者または夫の生死の明らかでない一定の人で、次に掲げる要件のいずれにも該当する人。
イ 合計所得金額が500万円以下であること。
ロ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと。
 
なお、事実婚の要件については、住民票に「未届の夫」・「未届の妻」などの記載がないこととされています。

ひとり親控除の創設

ひとり親とは、現に婚姻をしていない者、または配偶者の生死の明らかでない人で、次に掲げる要件のいずれにも該当する人をいいます。該当した場合のひとり親控除額は35万円です。

要件
  • (1) その者と生計を一にする子(他の者の同一生計配偶者または扶養親族とされている者を除き、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が 48 万円以下のものに限る)を有すること。
  • (2) 合計所得金額が500万円以下であること。
  • (3) その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと。

 
なお、改正前の「寡夫」(控除額27万円)または「特別の寡婦」(控除額35万円)に該当していた方の場合、上記要件のうち、(3)以外の要件は満たしていますので、上記(3)の要件を満たせば「ひとり親控除」(控除額35万円)を受けることができます。

改正前の寡婦(夫)控除と改正後の寡婦控除・ひとり親控除の関係

改正前の寡婦(夫)控除では、離婚や死別後に事実婚をしていても適用を受けられましたが、改正後の寡婦控除、ひとり親控除ともに事実婚は対象外とされました。
 
改正前の寡婦控除においては、合計所得金額が500万円(年収678万円)超でも寡婦控除を受けることが可能な場合もありましたが、改正後の寡婦控除を受けるには合計所得金額が500万円(年収678万円)以下でなければなりません。
 
この所得要件と事実婚の要件をクリアした場合、同一生計の子がいれば、男女とも、ひとり親控除(控除額35万円)が適用されます。同一生計の子がいない場合、夫が死別・生死不明または離別で扶養親族がいれば寡婦控除(控除額27万円)が適用されます。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。