更新日: 2021.03.01 控除
よくあるパターン別、会社員の住宅ローン控除適用可否
現在は、2019年10月からの消費税率10%への引き上げに伴い、控除額と控除期間が拡充されています(消費税率10%が適用される住宅を取得して、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合には、控除期間が13年間に延長)。
10年以上という長期の控除期間となるため、その間には、家庭内外の環境や収入状況などさまざまな変化が生じます。特に、一般の会社員の家計でよくあるパターン別に、住宅ローン控除の適用可否について確認したいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
社命により転勤となった場合
事例を分かりやすくするために、控除期間の拡充は考慮せず、控除期間は2021年から2030年までの10年間、住宅ローンの債務者は、夫(会社員)という想定とします。
「自宅を購入した途端に転勤となる」 私自身もサラリーマン時代に、会社内でまことしやかに叫ばれていたうわさの1つです。その真意はさておき、会社員が会社から転勤命令が出され、せっかく購入した自宅に住めなくなるということは少なからずあり得るケースでしょう。
そのときの対応としては、大きく2つのパターンが想定されます。
よくあるパターンとしては、家族が一緒に転居している間は自宅を誰も住まないまま放置しておくと傷みや老朽化が進むため、ほかの方に賃貸する場合などがあります。この場合には、自己の居住の用ではなく、住宅を賃貸しているので、当然住宅ローン控除の適用にはなりません。
例えば、2021年中に家族で転居し、3年後の2024年に自宅に戻り、再度入居した場合には2024年分から住宅ローン控除の適用を受けることができます。ただし、適用期間は当初から延長されることはなく、2030年までの残期間の適用となります。
社命によって転勤を命ぜられた夫が1人で転居するケースです。子どもの進学や受験、妻の就労など、今の環境を変えたくない場合などによくあるケースです。
この場合には、債務者である夫本人が単身赴任している間も転勤から戻ってきた後も住宅ローン控除を適用することができます。適用期間は原則2030年までの10年間です。
住宅ローンを途中で借り換えた場合
住宅ローン控除の適用期間10年の間に、当初契約した住宅ローンよりも低い金利の住宅ローンに借り換えを行うこともあり得るでしょう。金利の低い住宅ローンへの借り換えを行うことで、毎月の返済額が軽減され、利息を含めた総返済額も節約できる可能性があります。
この場合には、新たに借り換えた住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためのものであることが明らかであり、かつ、新たな住宅ローンの返済期間が10年以上であることなどが住宅ローン控除適用の条件となります。
そして、住宅ローン控除の適用期間は、あくまでも当初の住宅ローンによる控除期間と合わせて10年間の適用となるため、2030年までが適用期間となります。
住宅ローンを繰り上げ返済した場合
住宅ローンを返済する上で、繰り上げ返済は利息の負担を軽減する有効な手段です。
特に、まとまった資金を利用して繰り上げ返済する場合には、利息の軽減効果が大きいといわれる「返済期間短縮型」の繰り上げ返済が利用されます。
この場合に注意が必要なのは、繰り上げ返済により住宅ローンそのものの残りの返済期間が短縮されて10年未満となるような場合でも、返済当初から通算した返済期間が10年以上であれば、住宅ローン控除は引き続き適用できます。
ただし、住宅ローン控除の控除率は、住宅ローン年末残高の1%となっているため、繰り上げ返済によって控除できる額そのものが減少してしまうことも想定されます。
まとめ
そのほかにも自宅そのものを買い換えるケースなどもまれに想定されます。
この場合には、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と住宅ローン控除は併せて適用できる点を覚えておきましょう。
住宅ローン控除は、会社員にとって原則10年間という長期にわたり、税金の軽減や還付を受けることができる大変ありがたい制度です。転勤などに直面した場合には、その対応によって住宅ローン控除の適用も少し変わってきます。その時々の環境や家族との話し合いによって納得の上で対応していくことをお勧めいたします。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー