社会保険制度が変わった!将来の自分と相談して、一歩踏み出してみませんか?
配信日: 2017.04.14 更新日: 2019.08.07
なぜ「壁」なのでしょう?収入が106万円を超えても、ある一定水準を超えないと世帯収入が増えないという現象が起こっています。これが家計を預かる主婦たちを悩ませています。
収入を増やせば経済的に豊かになる、その単純なセオリーが、複雑な制度のもとでは一部逆転現象が起きる、となると、ちょっと待って!という気持ちになるのも無理はありません。働いて収入が増えたのに、手取りが減ってしまうくらいなら、収入を抑えた働き方をしよう、という選択をしている方は大勢いらっしゃいます。でもお金の損得だけで決めてしまって、本当にいいのでしょうか?どんな点を考慮しつつ、何を重視し尊重し判断すればよいか、考えてみましょう。
執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
11歳と8歳の子を持つ39歳A子さんの場合
A子さんはスーパーで働くパート主婦です。11歳と8歳の子供がいます。夫は会社員で、現在は夫の扶養の範囲内で働いています。
A子さんが働くスーパーは、売り場に活気があり、正社員、パート問わず、やる気のある人のアイデアを積極的に採用してくれようとしています。A子さんもはじめは、与えられた仕事をこなすことで精いっぱいでしたが、最近慣れてきて、こうすればもっとお客様が買い物しやすいんじゃないかな?などと考えるようになってきました。今は、仕事っておもしろいかも?!と感じています。
あるとき店長に呼ばれ、「来月からもっと入ってくれないか?そうなると社会保険に加入することになるが、将来的には正社員になる道もあるので、考えておいてくれないか。」と言われました。
下の子が小学校に入り、子育てもだいぶ落ち着いてきたと感じていたので、もっと仕事をしてもいいと思っていたA子さん、早速帰宅した夫に話をすると、「扶養から外れると、家族手当はなくなるし、税金は増えるけど、大丈夫なの?」と言われてしまいました。
扶養から外れることのメリットとデメリット
夫が気にしていることは何でしょう?
扶養から外れることで、家族手当のある会社の場合は、家族手当がなくなります。さらに配偶者控除または配偶者特別控除が使えなくなる分の税額が増えます。そして、これまでかからなかった税金や社会保険料がA子さんにかかってきます。つまり、これらの分の世帯収入が減ることになるのです。
扶養から外れても、これまでと同程度の世帯収入を得たい場合には、150~160万円の収入を得られるように働く必要があると試算されています。もし時間的制約や時給などにより、それだけの収入が得られないのであれば、扶養の範囲内で働いた方がお得、といえるのかもしれません。
では、扶養から外れるメリットはないのでしょうか。
まず税金は働いて得た収入以上にとられるわけではないので、働いた分の収入は増えます。そして将来受け取る年金額が増えます。またそのための社会保険料の半分は会社が負担してくれますし、病気やけがで働けなくなった場合は傷病手当金の給付があります。何より仕事をしたいと思っている方にとってはチャンスとなります。誰もが正社員になれるわけではない時代だからこそ、このようなチャンスはつかみたいものです。
10年後20年後自分はどうありたい?将来を見据えた選択をしましょう
上記のようにメリットとデメリットを比較して、プラスマイナスを考えると、今時点ではマイナス面が多くなる人もいるでしょう。子育てや介護がありこれ以上働く時間を増やせない人、これ以上給与(時給)が上がる可能性がない人などは、扶養から外れて収入アップを目指すことは難しいかもしれません。
しかし、今の仕事内容が嫌ではなく、労働環境が悪くはないのであれば、扶養から外れて、収入アップを目指すことで、将来に渡り得られる価値は大きいと思います。何より自分自身が成長できる可能性を秘めています。何歳になっても新しいことにチャレンジし、達成した時の喜びは大きいものです。働いて収入を得ることは、この低金利時代において、もっとも付加価値が得られるお金の増やし方なのかもしれません。
A子さんの場合、これから教育費が重たくなってくる時期です。子供が進みたいと思う道があるのに、経済的理由で断念することは親としては歯がゆい思いでしょう。少しずつでも教育費などの貯蓄にまわせると、生活全体に余裕が生まれ、心の負担も軽くなるでしょう。
この機をチャンスととるか、制約ととるか、まずは家族とよく話し合い、そして将来の自分ともよく相談して判断してください。
*1:社会保険の適用要件(以下のすべてを満たす)
・勤務時間が週20時間以上
・1か月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
・勤務期間1年以上
・従業員501名以上の企業に勤務
・学生は適用除外