金融機関で行われている【顧客本位】の投資信託の勧め方。しかし、現実はどうなのか

配信日: 2018.10.11 更新日: 2019.01.11

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金融機関で行われている【顧客本位】の投資信託の勧め方。しかし、現実はどうなのか
どの金融機関も「お客さまの意向を踏まえた投資アドバイス」を行っていると言います。しかし現実はどうなのか。
 
金融庁では、金融機関で実際に「顧客本位」の営業が行われているかを調査しています。9月に公表された「投資信託の販売における顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」(以下、同報告書)では、統計データとヒアリングで分析を試みています。
 
顧客が長期の資産形成を行うことができるように、銀行、証券会社ともに投資信託の販売では、工夫を凝らして取り組んでいます。
 
例えば、「毎月分配型」の投資信託は、毎月分配金を受け取れるということで人気がありましたが、長期の資産形成には向かないとの批判がありました。最近では銀行、証券会社ともに販売額に占める割合は減ってきています。
 
もっとも、販売の現場で積極的に勧めなくなってきたというだけでなく、世界的な金利の低下で、以前と比べて魅力が低下してきたという理由も影響しているでしょう。
 
村井英一

Text:村井英一(むらい えいいち)

国際公認投資アナリスト

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。

銀行の方が、手数料の安いファンドの販売に積極的

分散投資がなされるバランス型ファンドや、手数料が安いインデックスファンド(指数に連動して動く投資信託)の販売の割合は、銀行で増えています。
 
一方、証券会社ではこれらのファンドの販売は多くないものの、ファンドラップの販売に注力しているようです。ファンドラップは、証券会社が代わって運用・管理を行うもので、その中で分散投資が行われているものと思われます。
 
ただし、ファンドラップは手数料が高いことが多く、その点は金融庁の報告書でも指摘しています。
 
同報告書では、投資信託の販売手数料についても分析しています。「販売額が多い投資信託の販売手数料」を見ると、銀行では徐々に下がってきており、2017年度の平均で1.96%となっています。対して証券会社はどちらかと言えば上昇ぎみで、2017年度の平均は2.79%となっています。
 
全体的に見ると、販売している投資信託については、銀行よりも証券会社の方が手数料は高い傾向にあります。もちろん、手数料が高いから悪いとは、一概に言えません。それ以上の成果が上がれば、顧客としては満足できます。
 
ただ、6月に金融庁が公表した報告書によると、リスクとリターンは一定程度の関連があり、リスクの高いファンドはリターンも高い傾向がありますが、コストとリターンについては、ほとんど関連性がありません。
 
つまり、手数料が高いと成果が良くなる傾向はない、ということです。
 

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平均保有期間は短くなっている

顧客が、投資信託をどれくらいの期間保有しているか、についても分析しています。
 
それによると、銀行、証券会社ともに、平均2.4~2.5年となっています(2018年度)。銀行は、2015年度、2016年度は3年を超えていましたので、短くなってしまいました。投資環境が良く、利益確定のための売却が増えているためと思われますが、長期投資の重要性が言われている中、逆行した動きになっています。
 
好環境の中、銀行や証券会社で投資信託を保有している顧客数はほとんど増えていません。いきおい、一部の顧客に繰り返し取引を勧める傾向もあるようです。そうすると、どうしても利益となっているファンドを売却して、他のファンドに乗り換える販売が顧客の了解を得られやすく、投資信託の保有期間の短期化につながります。
 
投資信託や一時払い保険の販売が、四半期末ごとに増加する傾向も現れており、金融庁では「特定の顧客に対し乗換取引を繰り返している可能性が窺われる」(同報告書)と警鐘を鳴らしています。
 
一方、投資信託を保有している顧客数が増えているのが、ネット証券です。つみたてNISAなど、新規に積立投資を始める人が、ネット証券に流れているようです。
 
ネット証券では、担当営業員によるアドバイスがありません。そのことが、積立投資や長期投資につながって人気を集めている、としたら何とも皮肉なことです。
 
参考資料:
金融庁「投資信託の販売における顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」
金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
 
Text:村井 英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト

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