聞いたことない【グリーンボンド】ってどんなもの?
配信日: 2019.07.18
執筆者:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
証券アナリスト、FP1級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級
国内外の金融機関で、マーケットに関わる仕事に長らく従事。
現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、マーケットに関する情報等を発信している。
http://marketoinfo.fun/
ESGとSDGs、そしてグリーンボンド
改めてESG投資とは、各企業の財務面だけでなく、環境や社会、企業統治(ガバナンス)への取り組みも評価して、投資を行う手法です。
一方、SDGsとは、貧困問題から環境問題、各人の働きがいなど、さまざまな分野にわたる地球的課題に対し、2030年までに達成すべき目標として国連が定めたものです。17の大目標と169の具体的な小目標から構成されています。
ESG投資においては、具体的な投資対象の選択方法として、SDGsの目標に対する各企業の取り組み度合いを測ることが増えつつあります。このため、この二つの言葉がセットで使われることが増えてきているのです。
運用成績については、通常の投資方法よりもESG投資の方が優れているという確かな証明はまだありません。
しかし、環境対策に熱心な欧州から、また、社会貢献に意識の高い若い世代から、ESG投資は運用業界全体へと急速な広がりを見せています。日本国内においても、ESGをテーマとする投資信託が増えてきており、個人投資家にとっても取り組みやすい環境になってきていることは前回にも書いた通りです。
しかし、ESG投資でも運用のリスクは当然あります。特に、株式の運用なら、今のように株式市場全体が不安定な高値圏で推移している場合には、少し怖いと感じる人は少なくないと思います。
そのような場合に、投資対象として検討できるのがグリーンボンド(グリーン債)と呼ばれる債券です。
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広がりを見せるグリーンボンドの市場
債券(ボンド)とは、国や企業などが広く投資家から資金を借り入れる際の借用証書のようなものです。一般的な形態の債券なら、その国や企業が破綻しなければ、当初に定めた時期が来れば元本は返済され、それまでの期間の一定の利息を得ることができます。
その中でもグリーンボンドとは、借り入れた資金を再生可能エネルギーやエネルギー効率の改善などといった、「グリーン」な事業に使うことを約束して、発行された債券のことを言います。
グリーンボンドの発行が始まったのは2007年頃の欧州とされています。その後、他の地域にも発行は広がり、特にここ数年で世界の発行額は飛躍的に増加しています。
日本においても、2014年に日本政策投資銀行が初めて発行して以来、東京都やメガバンク、一般企業などが発行を増やしています。
東京都は、調達した資金を、五輪関連施設の環境対策やスマートエネルギー都市づくり等に充てるとしています。メガバンクの例では、再生可能エネルギープロジェクト向けの融資等に充てるとしていました。
債券の形式自体もさまざまなものが出ており、外貨建てや、個人向けのものなども発行されています。グリーンボンドの定義は世界的にまだ完全に一致しているわけではありませんが、共通認識は固まりつつあるようです。
実際には環境にはさほど効果のない目的に調達資金を使うこと(「グリーンウォッシュ」といいます)を避けるため、外部機関によるグリーンボンドとしての評価の取得や、発行体による定期的な資金使途の報告などは、当然、必要とみなされています。
日本国内でも、環境省がグリーンボンドガイドライン(※)を策定していますが、こうした世界的な流れを汲んだ内容になっています。ちなみに、このガイドラインができたことで、日本国内でのグリーンボンド市場の拡大が一層後押しされました。
グリーンボンド以外のSDGs債も増加
最初に述べた通り、SDGsで取り上げている目標は環境(グリーン)に関わるものだけではありません。そして、環境以外のSDGsの目標に取り組むための債券発行も実際に増えてきています。
日本の証券業界では、そうしたもの全部をまとめて、「SDGs債」と呼ぶことにしています。世界的には、SDGs債の言葉の定義はグリーンボンドほど統一されていないかもしれませんが、それでも、いわゆるSDGs債の発行は世界的に一層増えていくことは間違いないと見られます。
残念ながら、今のような世界的に低金利の時代には、グリーンボンド、あるいはSDGs債の利回りも決して高いものではありません。日本の定期預金などよりはさすがに高いはずですが、その分、資金が拘束される時間が長くなるデメリットがあります。
それでも、数年使う予定がなく、寝かせておくだけの資金なら、SDGs債での運用は一つの選択肢となりえます。運用のついでに、世の中を良くすることに一役買えるかもしれないという、ちょっとしたワクワク感も味わえるかもしれません。
出典
※環境省 グリーンボンド発行促進プラットフォーム 「グリーンボンドガイドライン」
執筆者:北垣愛
マネー・マーケット・アドバイザー