更新日: 2020.06.16 株・株式・FX投資
配当重視の株式投資。コロナ禍の影響で減配リスクが増大
株価の乱高下だけでなく、株式の配当や投資信託の分配金の減少は、予測できなかった事態です。特に定年退職後に退職金の多くを振り向け、配当を楽しみにしている人にとっては困った問題です。
業績悪化だか株価は下がっていない
日本企業の多くは、今回のコロナ禍で大きく打撃を受けています。企業業績が見通せない中w、今後の株式配当を「未定」としている企業も増えています。
まさにこの3月から6月にかけての業績は非常に悪化しており、今後の決算内容を苦しくしています。ただし株価は3月にいったん大きく下落しましたが、5月時点では回復傾向が見られ、この業績を伴わない株価上昇を「コロナ・バブル」と呼ぶ人もいます。
特に日々株式を売買するのではなく、高配当銘柄を中心に持続的に所有している人は、減配リスクを見極める必要があります。配当に期待して株式投資をしている人の中は、配当を生活資金の一部に考えている人もいます。
特に退職した高齢者の場合、銀行預金の超低金利を嫌い、多くを株式や投資信託で運用している人がいるからです。
経営者は、企業業績が悪化しても、配当維持に努力します。またできれば連続増配を続けたいと考える経営者も多いはずです。問題は、今回のコロナ危機がどれほどダメージを受けるのか、現在の段階では確定できないことです。
第2波、第3波の大きな感染が起これば、企業業績はさらに悪化するかもしれません。特に今回は、製造業、観光業、飲食業などが大きなダメージを受け、業績が悪化しています。中小企業の中には、倒産に見舞われている会社も急速に増えています。
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危機の時代でも安定配当を続けた企業
企業の投資家に対する姿勢も問われています。2008年のリーマンショック時に業績悪化時にもかかわらず、配当を維持ないし増配した企業が何社かありました。その中には「高配当企業」も含まれています。
今回のコロナ禍でも、食料品、生活用品、医薬品、情報・通信などの業種ではダメージが少なく、株価も比較的堅調です。当時に比べると、日本企業の財務体質は強化されており、経営破綻となる企業も少ないかと思います。
リーマンショック時に減益にもかかわらず、キリンホールディングス、JT(日本たばこ産業)、花王、セブン&アイホールディングス、NTTドコモといった企業は、配当を増額または据え置きました。
5社はこれまで減配経験が少なく、JTは高配当企業の代表格、花王は連続増配を続けてきた企業です。今回のコロナ危機で減益となる企業もありますが、配当政策が注目されます。今後はこうした企業でも、減配リスクは避けられないかもしれません。
年金生活者などは高配当企業を中心に、長い期間株式を保有する傾向があり、上記の企業も保有対象になります。
また財務基盤が安定している企業、例えば、三菱商事、伊藤忠商事、JXTGなどの企業は内部留保も堅く、来季以降の配当予想を開示しています。こうした開示企業の株式は比較的安心して継続保有できると思います。
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業績悪化で減配となる企業が増える
一方でコロナショックをまともに受けた企業は、業績を大きく悪化させています。海外との人の往来が減ったために、航空、運輸、ホテルなどの業界、さらに部品供給の遅滞や工場休業により、自動車、電機、鉄鋼などの業界は、大変な危機に見舞われました。
コロナ禍以前と比べると、株価下落だけでなく、株主への配当も減額されそうです。「比較的高い配当」「株主優待が魅力的」といった理由で、株主となった人は多かったと思いますが、今回は金融資産を減らす危険があります。
その典型企業が航空業界のANAホールディングスです。海外との人の移動が減った影響により、2020年3月の決算では営業利益が大幅に減少、来年3月の決算では赤字が200億円超になるとの予測もあります。
株主優待は継続されそうですが、株価は下落し2020年3月期の決算では無配になります。
また、かつては高配当を維持してきた日産自動車は深刻な事態です。ゴーン元社長が去り、事業改革に取り組んでいる中で、部品供給の遅れや生産ラインの停止の影響で業績が大幅に悪化。
2020年3月決算で営業利益が大きく赤字となりました。株価下落と同時に配当も無配になり、幹部社員の退職も起こっています。
ANAも日産自動車も、長期に株式を保有する投資家には人気企業でしたが、現在保有していると、株価下落と無配当というダブルパンチに見舞われます。この2社以外にも、業績悪化により、営業利益や配当が見通せない企業は数多くなっています。配当が無配あるいは大きく減配となる企業は増えそうです。
運用実績が悪化する投資信託も
株式だけでなく投資信託にも影響が出ています。投資信託は投資家から預かった資金をもとに、専門家が国内外の株式や債券、不動産投資信託などで運用し、その収益を分配する投資商品です。中でも毎月一定額を分配するタイプの投資信託は、高齢者を中心に根強い人気があります。
しかし株価の下落傾向が続き、思うような実績を上げることができず、苦戦している投資信託が増えています。一部は回復傾向にありますが、取引の基礎となる「基準価格」が大幅に下がる投資信託が目立っています。
毎月分配型の投資信託は、分配金が大幅に減額されるか、分配金はさほど下がらなくても基準価格が大幅に下がることで、資産価値が大きく棄損します。特に2019年まで好調だった不動産投資信託(REIT)を中心に運用する投資信託は、業績の悪化が顕著です。
コロナ禍で、地価動向や海外からのインバウンドの潮目が変わり、ホテルやオフィスビルのニーズの減少や、地価が下落傾向にあることが影響しています。こうした投資信託を保有し続けている人は、かなりの損失が出ていると思われます。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト