更新日: 2021.03.04 株・株式・FX投資

コロナ禍でなぜ株価は上がる? 今後の展望は?

コロナ禍でなぜ株価は上がる? 今後の展望は?
2020年1月14日、日本で初めて新型コロナウイルスの感染者が報告されてから(チャーター便、クルーズ船を除く)1年以上たちますが、今もなお感染収束の出口が見えず、経営状況が悪い企業もあります。
 
そのような状況下、日経平均株価は、2020年3月19日に1万6000円代まで下がったものの、2021年1月4日には2万8000円台に乗せ、昨年感染者が報告されたときの終値2万4041円を上回っています。
 
コロナ禍はまだ収束していないのに、なぜ株価指数は上がるのでしょうか。その上昇の理由とともに、今後の展開を考えてみましょう。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

完全失業者数は11ヶ月連続増加

総務省統計局の労働力調査(2020(令和2)年12月分)によると、わが国の就業者数は6666万人で、前年同月に比べ71万人減少し、9ヶ月連続の減少になっています。
 
一方、完全失業者数は194万人で、前年同月に比べ49万人増加しており、11ヶ月連続の増加です。2020年の完全失業率平均は2.8%となり、2018年、2019年の2.4%と比べて0.4ポイント増えています。つまり、コロナ禍で就業者数は減り、失業者数は増え、失業率も上昇したことになります。
 
同調査によると、前年同月と比較して就業者が減少した産業は、「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」「サービス業(他に分類されないもの)」などとなっています。緊急事態宣言などにより、旅行へ行く人が激減したことから宿泊業が、3蜜を避けるための営業自粛や営業時間短縮などから飲食業が、苦境に立たされていることは事実です。これらの業種とつながっている卸売業や小売業なども同様でしょう。
 

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コロナ禍でも業績がよい業種が株価指標上昇のカギ

コロナ禍で苦境に立たされている業種があり、失業者も増えている一方で、潤っている業界があることもうかがえます。日本の業界別株価騰落率を見ると、2019年末比40%以上上昇しているのが、電気機器業界です。
 
そのほかにも輸送用機器業界は同比30%以上、機械や陸運業界も同比20%以上、上昇しています。反対に、コロナ禍で海外への渡航がほぼ全面的に途絶えている空運業界は、40%以上のマイナスで最も落ち込んでいます。
 
コロナ禍で、自宅で過ごす時間や在宅勤務の時間が増えることで、家電の需要が増えたり、宅配を頼む機会が増えて陸運などの流通業のニーズが高まったりしていることが考えられます。また医療機関は、コロナ禍以来、常にフル稼働で医療機器のニーズも高まっていることも想定されます。
 
コロナ禍で打撃を受けている業界がある一方で、これまでとは異なる生活様式に対応をする業界のニーズが高まっているわけです。そうしたニーズ高の業界の株式は買われる傾向があることが、コロナ禍でも日経平均株価上昇につながる原因のひとつといえます。
 

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給付金などで投資マネーが増加

在宅ワークになっても、コロナ禍以前と同様の業務ができる人は、それまでとほぼ同じ水準の給与が支払われている場合も少なくないでしょう。
 
コロナ禍でも、減収などの経済的打撃がない人は、特別定額給付金や各自治体独自の給付金など一律に支払われる給付金を受け取っても、生活費などで消費をするというよりは、貯蓄や投資に回している場合もあるでしょう。こうした給付金が投資に向けられれば、株価上昇の原因にもつながります。
 
また、在宅ワークで通勤時間が不要になったため、ネットで資産運用をする時間的余裕が生まれた人もいるでしょう。経済的な変化がなくても、時間的な余裕があれば、それまで投資をしていなかった人が投資をしているかもしれません。また、現在の低金利時代を活かして、自己資金がなくても借入金で投資をする人もいるのかもしれません。
 

今後の展開は?

2度目の緊急事態宣言(2020年2月時点)を受けて、鉄道や外食産業は今期の最終利益がさらに落ち込む見込みがある一方で、電子部品や海運は、想定以上に回復しているようです。
 
日経平均株価は、2021年1月末時点でも、依然30年来の高値圏内にあります。新型コロナウイルスのワクチン普及後の感染収束がすでに織り込まれているように見えなくもありません。なぜなら、日経平均株価の今期の株価収益率(PER・1株あたりの利益)は25倍台が予想され、適正とされる15倍より高いため割高といえるからです。
 
コロナとの戦いは、遅かれ早かれいずれ収束の時が来るでしょう。業種間での業績格差が大きい現状では、コロナ以前より株価が高い企業は、割高になっている可能性もあり、逆に今の株価はどん底でも、コロナ終息まで持ちこたえられると判断できる企業なら、今後ポストコロナ時に利益を得られる可能性は高いかもしれません。
 

まとめ

コロナ禍で業績が悪い企業がとかく報道されがちですが、業績のよい企業があることも事実です。業績のよい企業は、今後もその好調が持続できる可能性があるのかどうかを冷静に見極める必要があります。コロナ収束の時期が遅くなれば、市場の予想を下回り、株価は下落することも考えられます。日経平均株価に連動する投資信託などもすでに割高になっている可能性もあります。
 
どんな場合でも、買付のタイミングや投資対象を分散してリスク軽減を図る工夫は必要でしょう。
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
 

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