被用者保険の適用拡大とは?どんな人が対象?何が変わるの?

配信日: 2020.10.08

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被用者保険の適用拡大とは?どんな人が対象?何が変わるの?
少子高齢化の日本では、働き方改革により新たな働き手として女性や高齢者が注目されています。出産のため仕事から離れ子育てに専念していた女性や、スキルをもった定年退職後の高齢者に、健康保険の保障と将来受け取る公的年金の保障を確保し、新たな労働力の担い手として、適用拡大は追い風となるのでしょうか。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

働き方から考察

日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。さらに少子高齢化が進んでいることから、現役世代の働き手が少なくなっています(労働力人口の減少)。労働力人口が減少し新たな労働力として注目されているのが、働く意欲があるにも関わらず就業の機会を失っている、もしくは限られている女性や高齢者です。
 
次のグラフは「短時間被保険者の性別・年齢階層別分布」です。短時間労働者の多くは男性が定年退職後の高齢者、女性は子育てが落ち着いた頃の40代、50代の女性が多いことが分かります。適用拡大によって一定の要件を満たすことで、短時間労働者が自分自身で医療や年金に加入することができるようになります。
 
【短時間被保険者の性別・年齢階層別分布】

被用者保険の適用拡大とは

2016年10月から、従業員501人以上の企業(特定適用事業所)において、一定の要件を満たす短時間労働者について、医療や年金などの保障を厚くする観点から適用拡大が進められました。該当する短時間労働者は次の要件をすべて満たす人になります。

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金8万8000円以上(年収換算で約106万円以上)
(所定労働時間や所定内賃金で判断し、残業時間等を含まない)
・1年以上継続して雇用される見込みがある(2022年10月1日以降は削除)
・学生でない

2017年4月から500人以下の企業でも労使の合意に基づき、適用拡大が可能となりました。今回の法改正により、2022年10月から従業員101人以上の企業が、2024年10から従業員51人以上の企業と、段階的に規模要件が引き下げられ範囲が拡大します。(国・地方公共団体は、規模にかかわらず適用)

被扶養者として扶養内で働くより保障が手厚くなる

かつて役割分担として日本では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方が一般的であったが、1997年以降、夫婦共働き世帯が多くなっています(男女共同参画白書 平成30年版より)。また、単身世帯が増えるなど、家族のあり方も変化している現状を踏まえると、保険料負担の公平性からも適用拡大の意義は大きいのではないでしょうか。
 
配偶者の扶養内で働く(就労調整)という考え方により、就労意欲を阻害している要因となっていることも否めないでしょう。
 
適用拡大により扶養からはずれて被保険者になることで、自身の保障が確保できます。健康保険であれば、傷病手当金、出産手当金を受けることができます。年金であれば、国民年金第3号被保険者から第2号被保険者になることで、自身で厚生年金保険に加入し、自分の年金を作ることができます。

国民年金第1号被保険者の短時間労働者は自己負担額が軽くなる

今まで短時間労働者として、国民年金第1号被保険者として働いていた人にとって、適用拡大は保険料の負担減と手厚い保障がついてくることになります。適用拡大により保険料負担は事業主と折半です。さらに、いざというときの保障(傷病手当金、出産手当金)もついてきます。
 
2020年の国民年金保険料は月1万6540円に対し、標準報酬月額8万8000円の厚生年金保険料の個人負担額は、月8052円です。参考に健康保険の個人負担額は4343円(介護保険該当者は5130円)となります(東京都の協会けんぽ保険料額より)。

まとめ

働き方が多様化し、さまざまなタイプの労働者が存在するようになりました。家族のあり方、考え方もさまざまです。例えば厚生年金保険の加入期間に上限がありますが、高齢者の就労の場合、健康寿命を延ばし、生きがいと生活資金のため長く働きたいと考える人が増えています。
 
女性の就労の場合、出産・子育てで離職をするのではなく、短時間勤務やテレワークなど、多様な働き方により働き続ける環境、選択肢が増えました。
 
適用拡大は多様な働き方の実現により、保険料負担の公平性の観点から中立的な制度と考えられます。短時間労働者として働きたいと希望する人に働きやすく、さらに働きたい人の能力発揮の機会や、優秀な人材の確保なども期待できるのではないでしょうか。
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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