更新日: 2024.05.09 融資
個人事業主が事業資金で借りやすい方法はなに? おすすめの借入先やメリット・デメリットをご紹介
しかし、1口に個人事業主向けの融資制度といっても、金利が低いけれど審査が厳しく手続きに時間がかかるものや、即日融資でも融資される金額が低いものまでさまざまです。高額な融資を受ける方は、特に借入先選びに慎重になるでしょう。
本記事では、「個人事業主」の方が借りやすい融資制度や、借入先ごとにメリット・デメリットについて詳しく紹介いたします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
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事業資金の借入先は主に2種類
個人事業主が事業資金の融資を受ける際、借入先は主に国や自治体が提供する「公的融資」と、銀行や消費者金融が提供する「民間融資」の2種類に分類されます。
いずれも特徴やメリット、デメリットが異なるため、申し込む前にそれぞれの違いを確認しておきましょう。
国や自治体の「公的融資」
「公的融資」は、日本政策金融公庫や各自治体が提供する融資制度を指します。自治体の融資制度は該当する地域で事業を展開する方に限られることがほとんどですが、日本政策金融公庫の融資制度は全国どこで事業を始めても利用できる点が特徴でありメリットの1つです。
融資制度それぞれの条件に適合すれば必要書類を提出して審査を受ける形となり、審査に通れば民間融資よりも低い金利で融資を受けられます。
銀行や消費者金融の「民間融資」
公的融資がある一方で、銀行や信用金庫、消費者金融による融資は「民間融資」と呼ばれます。全国に支店のある都市銀行から地方に根付いた信用金庫、CMでおなじみの消費者金融など、国や自治体が提供する以外の融資が民間融資に分類されます。
個人が「生活資金」を借り入れる際は消費者金融の利用が一般的ですが、「事業資金」の場合は直接銀行から借り入れたり、民間のビジネスローンを利用したりなど、さまざまな方法が挙げられます。しかし、銀行1つとっても都市銀行と地方銀行では特徴が大きく異なるため、まずはそれぞれのメリットやデメリットをチェックしていきましょう。
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公的融資の種類と特徴
公的融資は日本政策金融公庫以外にも商工組合中央金庫や、自治体と金融機関、自治体が一丸となって提供する「制度融資」など、さまざまな融資制度が挙げられます。
なかでも、日本政策金融公庫は創業したての個人事業主から軌道に乗った中小企業まで、さまざまな事業主が利用できます。審査に面談や複数の書類提出が必要ですが、審査に通れば低い金利で長期の返済期間が設けられるため、創業時や初めて事業用資金の融資を受ける個人事業主にとっては非常に借りやすい融資先といえるでしょう。
その他にも、自治体が提供する融資制度は、その地域に住んでいる方限定ではありますが、日本政策金融公庫と同じく金利が低く、個人事業主の方が借り入れやすい制度となっています。
たとえば、東京都で事業を展開する方向けの「東京都中小企業制度融資」では、東京都と東京信用保証協会、金融機関の三者が共同で経営者をサポートします。47都道府県にそれぞれの融資制度があるため、事業を始める予定もしくはすでに経営している地域の制度をチェックしてみましょう。
職種によっては返済義務のない補助金を受けられる可能性もあります。
公的融資のメリット
公的融資は「金利の低さ」が最大のメリットです。
金利の上限は利息制限法により、借り入れる金額ごとに定められています。たとえば100万円を借り入れたい場合、民間融資のビジネスローンやカードローンでは利息制限法の上限金利である15%に近い金利であることが多いですが、日本政策金融金庫では担保を不要とする融資を利用する場合の基準利率が令和6年2月1日時点で2.1%~3.3%と定められています。
金利の低い借入先を選ぶと融資が高額であるほど金銭的な負担を抑えられるため、事業資金の借り入れでは金利の高さに注目しましょう。
金利の低さ以外にも、「担保や保証人が不要」で申し込める制度も豊富で、全体的に返済期間が長めであることがメリットです。
一般的な運転資金や設備資金のみでなく、創業にかかる費用に関しても借り入れられる制度が多いことから、これから事業を始める方はもちろん、業績が悪化して経営のために資金を借り入れたい方など幅広い層が利用しやすい制度といえるでしょう。
公的融資のデメリット
公的融資は、金利が低く事業を始めたての方でも利用しやすい一方で、審査が比較的厳しく手続きに時間がかかりやすいことがデメリットです。
審査には面談が必要になるケースが多く、事業計画書や決算書を持参して資金使途や返済の見通しなどを細かく説明することが求められます。
条件に適合する方であれば申し込み自体は可能ですが、面談の際は細かい点まで記載された事業計画書や説得力のある説明が必要であり、事業について曖昧に答えてしまうと審査に通らず融資が受けられないこともあります。
しかし、どの借入先でも審査に通りにくいとされている創業時の借り入れの場合は、日本政策金融公庫に創業したばかりの方向けの融資制度があるため、要件に適合している場合は公的融資のほうが審査に通りやすいこともあるでしょう。
そして公的融資は手続きのスピードに関しても長引く可能性がある点がデメリットです。
たとえば日本政策金融公庫の個人や小規模事業者向けの国民生活事業に関する融資制度は、申し込みから融資決定まで平均で3週間程度の期間を要します。各自治体の制度によっては1ヶ月以上かかることも珍しくありません。審査に必要な書類も多く、数日以内に融資を受けたい方には向いていないといえるでしょう。
また、自治体の融資制度は廃止になったり、内容が大きく変わったりなど以前のように利用できなくなることもあるため、申し込みたい制度がある場合は逐一概要を確認する必要があります。
民間融資の種類と特徴
民間融資では銀行が提供する「プロパー融資」や「信用保証付き融資」の他、銀行や消費者金融が提供するビジネスローンによる借り入れが一般的です。
「プロパー融資」とは、銀行と事業者が直接契約して融資を受けることを指します。審査に通れば高額な資金を借り入れられることがメリットですが、審査が厳しいため創業から間もない個人や小規模事業者が借り入れることは難しい点がデメリットです。
そのため個人が民間融資で事業資金を借り入れる際は信用保証協会から保証の承諾を得て申し込む信用保証付き融資や、ビジネスローンの利用がおすすめです。
民間融資のメリット
民間融資は申し込みや返済中など気軽に相談しやすい点が大きなメリットです。申し込み前でも実際に支店に赴き対面で相談することが可能であり、保証人や担保の有無、業績などから自身に合った融資制度の紹介も受けられます。
特に、ビジネスローンであればオンラインで24時間365日申し込める銀行も多く、支店に行く時間が取れない方も気軽に利用しやすいサービスといえるでしょう。オンラインであれば申し込みから融資、返済まで1度も店舗に赴くことなく手続きができるので、手軽さを求める方にはおすすめの方法です。
個人事業主向けのプランも豊富で、地域を選ばないことからさまざまな選択肢があることも魅力です。
民間融資のデメリット
民間融資は公的融資よりも手続きがスムーズな傾向にありますが、金利が比較的高いことがデメリットです。
特に、ビジネスローンは最短で即日融資可能な消費者金融も多い一方で、金利は利息制限法に定める上限金利に近いほど高いこともあるため、スムーズな手続きではありますが、金銭的なデメリットが大きいといえます。
民間融資の中でもプロパー融資は金利が低く、高額な融資を受けられることから魅力のある融資制度の1つですが、民間融資の中でも審査が特に厳しいことが特徴の借り入れ方法です。高額な事業資金を借り入れたいけれどプロパー融資の審査が不安な方は、信用保証協会から保証を受けて申し込める信用保証付き融資がおすすめです。
保証料はかかりますが金利と保証料を合計してもビジネスローンの金利より低く利用できるため、銀行から事業資金を借り入れたい方は開業している地域の銀行や信用金庫に相談してみることをおすすすめします。
個人でも事業資金が借りやすいおすすめの公的融資制度
ここからは公的融資の中でも、全国の事業者が利用できる日本政策金融公庫の融資制度を12種類紹介いたします。どれも申し込み条件や金利、融資上限額が異なるため、自身が利用しやすい制度をピックアップしてみてください。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度1:新規開業資金
日本政策金融公庫が提供する「新規開業資金」は、これから事業を始める方や事業を始めておおよそ7年以内の方が申し込める融資制度です。申し込み対象が幅広く、日本政策金融公庫の数ある融資制度の中でも多くの方が利用しています。
融資限度額は7200万円と高額であり、設備資金としての借り入れでは20年以内、運転資金では7年以内と返済期間も長く、高額な借り入れを希望する方にもおすすめです。据え置き期間は設備資金と運転資金どちらの借り入れでも最長2年であり、余裕を持った返済を目指せます。
据え置き期間とは利息のみの返済でよい期間であり、創業すぐに返済に十分な利益が出せなくても、利息の支払いを滞りなくおこなっていれば問題ありません。
金利は令和6年2月1日時点の基準利率である2.1%~3.3%が適用されますが、地域おこし協力隊の任期を終了して当該地域で事業を始める方やUターン等により事業を始める方は基準利率よりも低い金利で融資を受けられます。
申し込みは、日本政策金融公庫の事業資金相談ダイヤルによる予約相談や公式サイトによるインターネット申し込みから可能です。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度2:女性、若者/シニア起業家支援資金
「女性、若者/シニア起業家支援資金」は上記の新規開業資金内の融資制度で、女性や35歳以下の若者、55歳以上のシニアであれば特別金利で融資を受けられる内容です。そのため融資限度額は7200万円で、返済期間も7年~20年であることに変更はありません。
女性や35歳以下、55歳以上の男性であれば金利が基準より引き下がり、特別利率Aの1.7%~2.9%が適用されます。
技術・ノウハウ等に新規性が見られる方はさらに金利が引き下がるため、他企業に利用されていない知的財産権にかかる技術を利用する方や、エンジェル税制の一定の要件を満たす中小企業者は金利の負担を抑えながら高額な融資を受けられます。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度3:再挑戦支援資金
「再挑戦支援資金」も新規開業資金の制度であり、廃業歴を有する経営者が営む法人や個人が利用できる融資です。以前の廃業時に関して、負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みであり、廃業の理由や事情がやむを得ないことが再挑戦支援資金の申し込み条件になります。
融資限度額は7200万円と同じですが、返済期間は設備資金が20年、運転資金が7年から最大15年以内まで伸びており、余裕のある返済を目指せます。
そして日本政策金融公庫の融資制度は資金使途が設備資金や運転資金に限られるものが多い中、再挑戦支援資金は前事業にかかわる債務の返済も可能であることが最大の特徴です。
再び新たに事業を開始する方や事業開始後からおおよそ7年以内の方が申し込めて据え置き期間も最大2年であるため、負債の返済でなかなか事業が安定しない方には特におすすめの融資制度です。
再挑戦支援資金も基準金利の2.1%~3.3%ですが、「女性」や「35歳以下、55歳以上の男性」は特別利率Aの1.7%~2.9%が適用されます。その他創業セミナーを受けた方や外国人企業活動促進事業における特定外国人起業家の方なども基準金利から引き下げられます。
また保証人や担保の有無は面談により決定されるため、保証人がいない場合でも申し込みは可能です。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度4:新創業融資制度
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象になります。上記の新規開業資金も新たに事業を始める方向けの融資制度ですが、新創業融資制度は創業のスタートアップの支援に特化した制度です。
新創業融資制度のみの利用はできず、新規開業資金や再挑戦支援資金などと併用することで利用可能となります。
利用には自己資金の要件が追加されることが特徴であり、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金がある方が対象ですが、勤めた経験のある業種で開業する場合や、創業セミナーを受けたのちに事業を開始する方は自己資金の要件を満たしたものとされます。
融資限度額は3000万円であり、利率は令和6年2月1日時点の基準利率である2.4%~3.6%です。保証人や担保は原則不要ですが、法人の場合は代表者が連帯保証人となることで利率が0.1%引き下げられます。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度5:事業継承・集約・活性化支援資金
日本政策金融公庫の「事業継承・集約・活性化支援資金」は、中期的な事業継承を計画し、現経営者が後継者とともに事業継承計画を策定している方が申し込める融資制度です。「融資からおよそ10年以内に事業継承することが見込まれる方」が対象となります。
安定した経営権の確保による事業継承や集約する方以外にも、事業継承を機として新たな取り組みを図る方など、事業継承にかかわるさまざまなケースで利用できるため、汎用性の高い融資制度といえるでしょう。
融資限度額は7200万円であり、返済期間は設備資金は20年、運転資金が7年以内と他の融資制度と変わりありませんが、新創業融資制度や担保を不要とする融資制度など、別の日本政策金融公庫の融資制度と併用できる点が特徴です。そのためより高額な借り入れを希望する個人事業主の方にもおすすめできます。
金利は基準金利である2.1%~3.3%が適用されますが、資金使途や条件により引き下げられるため、要件に当てはまる方は新規開業資金や一般貸付よりも低い金利で借り入れやすい制度です。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度6:新事業活動促進資金
「新事業活動促進資金」は、各都道府県による経営革新計画の承認を受けた方や経営力向上計画の認定を受けた方などが利用できる、すでに事業を展開している方向けの融資制度です。
融資限度額は7200万円であり、利用対象に該当する方が事業をおこなうために必要とする設備資金や運転資金に利用できます。対象者それぞれで適用される利率が異なりますが、日本政策金融公庫の基準利率を上回ることはなく、条件に該当する場合は新規開業資金よりも低い利率で利用できる点がメリットです。
個人事業主や小規模事業者であれば融資限度額が7200万円である一方、中小企業の申し込みでは直接貸付で7億2000万円までの借り入れが可能で、これから法人化を目指し企業を成長させたい個人事業主の方にもおすすめです。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度7:経営環境変化対応資金
「経営環境変化対応資金」は社会的・経済的環境の変化等外的要因により、「一時的に業績が悪化している方」向けの融資制度です。現時点で悪化していても、借り入れにより業況が回復することが見込まれる方が利用できる制度で、融資限度額は4800万円です。
返済期間は設備資金が15年、運転資金は8年以内と他の融資制度よりも短めですが、いずれも据え置き期間が最大3年と他の融資制度よりも長めで、業況の回復を待ちながら返済を続けられる点がメリットです。
金利は基準利率の2.1%~3.3%ですが、ウクライナ情勢の変化やALPS処理水処分に伴う風評に関して影響を受けており、利益率が一定以上減少している方は金利が特別利率Qの1.7%~2.6%に引き下がります。
また担保や保証人は相談のもと必要の有無が決まりますが、「経営者保証免除特例制度」を併用した場合は金利が0.2%上乗せされる代わりに経営者の保証が免除されるため、利用したい場合は相談の際に伝えましょう。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度8:企業活力強化資金
「企業活力強化資金」は、卸売業やサービス業など商業振興関連の経営者向けの融資制度です。キャッシュレス決済の導入で生産性の向上を図る方や、取り引き先に対する支払条件の改善に取り組む方などが対象となります。
資金使途は合理化、共同化等を図るための設備や生産性向上に資する設備などの投資および運転資金となり、事業で利用する資金全般ではないことが注意点です。たとえば、ショッピングセンターへの入居や販売促進、人材確保のための運転資金には利用できます。
融資限度額は7200万円で、返済期間は設備資金が20年、運転資金が7年以内です。利率は基準利率である2.1%~3.3%ですが、要件に当てはまる方は面談によりさらに利率が引き下げられます。
また、企業活力強化資金を支払条件改善関連や取引環境改善関連で申し込む場合は、貸付からおよそ1年後に計画の進捗状況を提出するといった報告が必要になります。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度9:ソーシャルビジネス支援資金
「ソーシャルビジネス支援資金」はNPO法人や保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方向けの融資制度です。社会的課題の解決を目的とする事業をサポートする制度で、事業にかかる設備資金や運転資金が借り入れられます。
融資限度額は7200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金は7年以内で他の融資制度と大きな違いはありません。金利は保育・介護サービス事業を営む方であれば、NPO法人や個人事業主に限らず特別利率Bの1.45%~2.65%が適用されます。
その他認定NPO法人やNPO法人以外で社会的課題の解決を目的とする事業を営む方は、特別利率Aの1.7%~2.9%が適用利率です。
新創業融資制度を利用しないNPO法人の場合、保証人は「NPO法人の特例」を利用して利率を上乗せすることで代表者の連帯保証が不要になる制度も用意されています。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度10:新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症の影響で業況が悪化した方は、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の利用がおすすめです。最近1ヶ月間の売上高または過去6ヶ月の平均売上高が前6年いずれかの年よりも5%以上減少している方や、債務負担が重くなっている方などが利用できる融資制度です。
資金使途は、新型コロナウイルス感染症の影響による社会的要因等により必要とする設備資金や運転資金に限られます。融資限度額は別枠で8000万円と高額かつ、返済期間は設備資金と運転資金ともに20年以内、据え置き期間は5年以内であるため、業況の回復を待ちながら長期的な返済が可能です。
利率は令和6年2月1日時点の基準利率である1.2%~2.4%ですが、6000万円を限度に融資後3年目までは基準利率から0.5%引き下げられます。他の制度と比較して非常に低い金利で利用でき、返済期間や据え置き期間も長いため、対象に当てはまる方は積極的に利用しましょう。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度11:一般貸付
日本政策金融公庫の「一般貸付」はほとんどの業種の方が利用できる融資制度です。融資限度額は4800万円で、返済期間は運転資金が原則5年、設備資金は10年以内の返済となります。据え置き期間は運転資金が1年、設備資金が2年であり、他の融資制度と比べると融資限度額や返済期間などの条件が厳しいものとなっています。
利率は令和6年2月1日時点の基準利率である2.1%~3.3%であり、担保があればさらに金利が引き下がります。無担保や無保証人で一般貸付を利用したい方は、特別利率が適用される「マル経融資」もおすすめです。
また飲食店や美容業、クリーニング業など特定の業種を経営している方は、「生活衛生改善貸付」を申し込むことで特別利率Fの1.2%が適用されます。
事業資金が借りやすいおすすめ公的融資制度12:マル経融資
マル経融資とは「小規模事業者経営改善資金」であり、商工会や商工会議所、または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている方が対象の融資制度です。商工会の推薦を受けた方のみが利用できる制度で、特別利率Fの1.2%が適用になる点が特徴です。
融資限度額は2000万円で、返済期間は運転資金が7年以内、設備資金が10年以内です。日本政策金融公庫の他の制度よりも条件は厳しいですが、無担保無保証人でも申し込めることや金利の低さから、条件に当てはまる方であれば積極的に利用したい制度の1つです。
個人事業主でも事業資金が借りやすいおすすめの民間融資制度
ここからは個人事業主が申し込みやすい民間融資制度を6種類紹介いたします。
いずれも個人事業主や小規模事業者が申し込める方法ですが、個人の経歴や業況によりおすすめの融資制度が異なります。一旦自身の経営状況や事業計画書を整理して、どの融資制度が適しているかそれぞれに当てはめてみましょう。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度1:都市銀行による融資
「都市銀行」とは大都市に本店を置き全国に支店がある銀行を指します。みずほ銀行や三井住友銀行、三菱UFJ銀行などが都市銀行に当てはまります。
個人事業主の場合、審査が厳しいため都市銀行のプロパー融資は向いていませんが、都市銀行の提供する「ビジネスローン」や「保証付き融資」であれば個人事業主でも申し込める制度があります。
都市銀行のプロパー融資は審査が厳しく中小企業から大企業向けの融資制度とされており、個人事業主や小規模事業者の場合は直接借り入れることは現実的ではありません。
個人事業主でも事業が安定して設備投入や新事業の進出を目指すなど、高額な資金が必要になった際などはおすすめの借入先ですが、申し込みは法人に限られることも多いため、個人事業主で経営を続ける方には向かない融資制度です。
銀行のビジネスローンは、気軽に申し込める分プロパー融資よりも金利が高く、返済期間も公的融資と比較して長期間ではないため、短期の借り入れで利用したい方にはおすすめです。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度2:地方銀行による融資
「地方銀行」は都市銀行と比較すると、地域に根付いた企業を応援する傾向にあります。都市銀行と比較すると創業時から相談を受け付けている銀行も多く、のちに法人化や大規模な設備投資などで資金が必要になった際も相談しやすい点がメリットです。
民間融資のビジネスローンや消費者金融よりも金利が低く、融資額も高額になるため、公的融資と併用して利用することも可能です。銀行で借り入れて完済することで取引実績にもなり、個人事業主として信用を上げたい方にもおすすめといえるでしょう。
しかし、申し込む際に保証人や担保を求められることもあるため、自身以外で保証人になる方がいない場合は、日本政策金融公庫の保証人や担保の必要ない融資制度をおすすめします。
銀行で融資を受けるデメリットは、手続きに時間がかかることや直接店舗に赴く必要がある点です。
日本政策金融公庫の手続きは、申し込みから融資まで平均で3週間程度の期間で完了しますが、銀行から融資を受ける場合は1ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。手続きにかかる期間は保証人や担保の有無により大きく異なります。
銀行によって相談や面談、審査後などのタイミングで店舗に赴く必要もあり、ビジネスローンや消費者金融よりも時間が取られることがデメリットの1つです。
また希望どおり融資を受けられるか心配な方は、信用保証協会の保証を得て銀行から借り入れられる「信用保証付き融資」の利用もおすすめです。
信用保証協会の保証がある場合は事業主が保証料を支払う代わりに、返済不可な状況となっても代わりに信用保証協会が立て替えて返済するため、銀行と直接取引するプロパー融資よりも審査に通りやすくなります。銀行に融資の相談をする場合は、申請者の属性や経営状況により保証を求められることもあります。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度3:信用金庫や信用組合による融資
地域性の高い事業の展開を考えている個人事業主の方は、「信用金庫」や「信用組合」が借りやすい融資先です。
信用金庫や信用組合は銀行と違い非営利法人で、組合員や利用者は当該地域の住人に限定されています。大企業との取引よりも、地元で事業を展開する個人事業主や中小企業に対する融資に積極的で、創業時や創業したてで事業が安定していない状態でも相談を受け付けている金融機関も多く見られます。
そのため業種内容によっては地方銀行よりも借りやすいといえるでしょう。
しかし、信用金庫や信用組合から融資を受ける場合は組合への加入が基本とされるため、別の地域への展開は考えておらず長く地元で事業を続けたい方には、特におすすめの借入先です。
信用金庫や信用組合でも銀行と同じく保証付き融資の利用が可能であり、審査が不安な場合は、相談のもと信用保証協会の利用も検討しましょう。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度4:銀行のビジネスローン
「銀行が提供するビジネスローン」は、消費者金融のビジネスローンと比較して金利が低いことがメリットです。審査は公的融資より緩めであるものの、消費者金融よりも厳しい傾向にあり、返済の滞納や収入など個人の属性に不安がある方には向いていません。
現在はオンラインでの申し込みが主流であり、申し込みから数日~2週間程度で融資を受けられて、個人事業主であれば決算書や事業計画書の提出が必要とされないことも多く、忙しい方にはおすすめの融資です。
都市銀行では個人事業主向けのビジネスローンの取り扱いは少ないですが、地方銀行やネット銀行では個人事業主や小規模事業者向けのビジネスローンを多く取り扱っています。
たとえば、地方銀行である横浜銀行では、個人事業主向けに「横浜銀行ビジネスフリーローン」を提供しています。申し込みから融資までオンラインで手続き可能であり、融資金額は最高で500万円、金利は固定金利で4.8%、8%、14.5%の中から決定されます。金利は公的融資よりも高めですが、書類の提出は本人確認書類のみで見積書や事業計画書なども必要なく手続き可能です。
銀行ごとに金利や融資までのスピードが大きく異なるため、申し込み前には利用したい銀行をいくつかピックアップして比較することが大切です。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度5:消費者金融のビジネスローン
「消費者金融」は審査が比較的通りやすいことと、最短翌日で融資を受けられるといった借りやすさが最大のメリットです。返済日を選べたり振り込み手数料が無料だったりなど、企業によってさまざまな特徴があり、数多くの選択肢から選べる方法です。
しかし、その分金利は個人が事業用以外で借り入れる金利よりも高い傾向にあります。たとえば大手企業の「アコム」では、「ビジネスサポートカードローン(個人事業主向け)」を提供しており、利率は12%~18%が適用されます。
一方で、最短20分で融資が可能なアコムの個人向けカードローンでは、金利が3%~18%であり、ビジネスローンは個人よりも金利が高く設定されています。個人事業主向けのビジネスローンの中でも創業する前から利用できるローンから、業歴1年以上の個人事業主以外申し込めないローンまでまちまちです。
審査に書類が不要なビジネスローンは、審査に通っても限度額が数万円と事業に利用できない金額である可能性もあるため、一定の金額以上を借り入れたい場合は、面談が必要となる公的融資や銀行、信用金庫などから借り入れることをおすすめします。
また、消費者金融では個人向けの一般貸付を取り扱っていますが、個人向けの貸付は事業資金に利用できないことも多いため、事業資金を借り入れる場合は、個人事業主でもビジネスローンを利用しましょう。定められた資金使途を破ると、全額返金を求められたり、新たな融資が受けられなくなったりなど信用を無くしてしまう可能性があります。
事業資金が借りやすいおすすめ民間融資制度6:不動産担保を利用したローン
担保になりうる不動産を保有している場合は、不動産担保専門のローンもおすすめです。
たとえば、「東京スター銀行」の「スター不動産担保ビジネスローン」では、金利3.75%~6%の変動金利で500万円~3億円までの融資を受けられます。返済期間も最長30年と非常に長く、本人名義の不動産でなくても三親等内であればそのまま担保として利用できることから、企業や開業資金の借り入れとして人気のサービスです。
不動産を保有していなくても資産となりうる動産を持っている方は、業況や経営を見通して売却を視野に入れることも事業資金の集める方法の1つです。
また、公的融資や銀行融資でも不動産の担保があれば、金利や融資限度額など好条件で融資を受けることが可能です。
事業資金の借入先を選ぶ際のポイント
個人事業主が借入先を選ぶ際は、以下のポイントを意識しましょう。
●審査の厳しさ
●申し込みから融資までの期間
●使い道や金額を事前に把握
事業資金の借入先を選ぶポイント1:審査の厳しさ
日本政策金融公庫の融資や銀行のビジネスローンなど、借入先によって審査の厳しさは異なります。たとえば個人事業主の規模で高い売り上げがない場合でも、地域に根付いた業種である場合は地方銀行や信用金庫から融資を受けられる場合があります。
一方で、事業計画書や返済計画表などの作成に自信がない場合は、最低限の書類と個人の属性で審査を受けられるビジネスローンのほうが審査に通りやすいといえるでしょう。
事業資金の借入先を選ぶポイント2:申し込みから融資までの期間
審査以外にも、それぞれの借入先で申し込みから融資までの期間が異なることを把握する必要があります。消費者金融のビジネスローンでは、最短で即日融資が可能な企業もありますが、日本政策金融公庫の融資では申し込みから融資まで平均して3週間であり、期間が大きく異なります。
なるべく条件のよい借入先から融資を受けるために、融資が必要になる1ヶ月から2ヶ月前から手続きを開始することが大切です。
事業資金の借入先を選ぶポイント3:使い道や金額を事前に把握
そして、融資を受ける際は、必要な金額や使い道について事前によく確認しましょう。特に、面談が必要になる借入先は、資金使途や返済計画など細かい部分までまとめておく必要があります。資金使途にない買い物に利用すると、融資が取り消されたり今後融資を受けられなくなったりなどのリスクが懸念されます。
また、必要な金額を1度まとめておくことで、どの借入先から選ぶべきか判断しやすくなります。たとえばビジネスローンを利用する場合は、審査の結果借り入れ可能な金額が1万円~10万円と低く設定されることも珍しくありません。
100万円以上の融資を受けたい場合は、時間をかけて書類を作成し、面談で融通が通りやすい公的融資や信用金庫に相談することをおすすめします。
個人事業主が事業資金をより借りやすくするコツ
個人が事業資金を借り入れる場合は、法人ではないため個人の信用情報も重視されます。税金の未納があれば支払い、公共料金や個人で利用しているクレジットカードの滞納があれば、すべて解消してから申し込みましょう。
そして、公的融資や銀行から融資を受ける際は、自己資金の有無も審査内容に含まれます。自己資金とは事業に利用できる預金や退職金、贈与された現金などが当てはまります。
自己資金が多いことで、より高額な融資を受けられる可能性が高まるため、なるべく自己資金が多い状態で申し込むことをおすすめします。日本政策金融公庫の新創業融資制度が「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金がある方が対象」としているため、これを自己資金の目安としても捉えられます。
これから創業を検討している方は、日本政策金融公庫がおこなう創業支援を利用することも、今後事業資金を借りやすくするコツです。日本政策金融公庫では創業前に利用できる無料相談ダイヤルや相談会、創業時に利用できる創業計画書の書き方や融資制度の紹介、創業後向けのセミナー情報や商談会など創業にまつわるさまざまな支援を提供しています。
融資を受ける前や創業前に相談することで、自身に合ったよりよい条件の融資が受けられるでしょう。
個人事業主が事業資金を借り入れる際の注意点
個人事業主が事業資金の融資を受ける際、以下の点について注意しましょう。
●提出する書類はチェックする
●審査は早めに申し込む
●開業届を出しておく
事業資金を借り入れる際の注意点1:提出する書類はチェックする
審査を申し込む際は「本人確認書類」や「事業計画書」、「決算書」などの書類が必要になります。提出する際は、内容の精査のみでなく、足りていない書類がないか、誤字脱字がないかなど基本的な部分を確認することが大切です。
基本的なミスが多いと説得力に欠けているとして、審査に影響する可能性もあるため、間違いのないよう提出前のチェックは欠かさずおこないましょう。
事業資金を借り入れる際の注意点2:審査は早めに申し込む
事業資金を借り入れる際は、申し込みから審査までのスピードも重要なポイントです。たとえば、すでに事業を開始しており将来取引があることが確定している場合は、金利の低い借入先の融資手続きに間に合わずに、やむを得ず金利の高いビジネスローンを利用することも考えられます。
公式サイトに記載されている目安期間よりも手続きが長引く可能性があるため、余裕のあるスケジュールを立てて申し込みましょう。
事業資金を借り入れる際の注意点3:開業届を出しておく
事業資金の借り入れには、「個人事業主であること」が申し込み条件とされている場合が多く見られます。事業資金の融資を受けられることが決定してから開業届を出すのではなく、まずは開業届を提出してから融資の申し込みに移る手順がおすすめです。
個人事業主でも事業資金が借りやすい融資制度まとめ
個人事業主が事業資金を借り入れる際は、金銭的な負担を下げるために金利の高いビジネスローンよりも公的融資や銀行、信用金庫などの利用がおすすめです。
適切な借入先は、審査を申し込むタイミングや自己資金の有無によって変わります。
金利の高さや融資上限額のみで決めず、申し込みから資金が必要になるまでの期間を逆算して、よりよい条件の借入先に申し込むことが借入先選びのポイントです。
どの借入先を利用しようか迷った際は、日本政策金融公庫の創業支援制度の利用がおすすめです。
日本政策金融公庫の融資制度を申し込まなくても無料で利用できるため、創業や経営後の融資で困ったことがあれば積極的に利用しましょう。
出典
日本貸金業協会 5 お借入れの上限金利は、年15%~20%です
日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)
日本政策金融公庫 よくあるご質問 創業をお考えの方
日本政策金融公庫 新規開業資金
日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)/ 女性、若者/シニア起業家支援資金
日本政策金融公庫 新規開業資金(再挑戦支援関連)/ 再挑戦支援資金
日本政策金融公庫 新創業融資制度
日本政策金融公庫 事業承継・集約・活性化支援資金
日本政策金融公庫 新事業活動促進資金
日本政策金融公庫 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
日本政策金融公庫 企業活力強化資金
日本政策金融公庫 ソーシャルビジネス支援資金
日本政策金融公庫 新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫 一般貸付
日本政策金融公庫 マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
横浜銀行 ビジネスフリーローン(個人事業者向け)
アコム ビジネスサポートカードローン(個人事業主向け)
アコム カードローン
東京スター銀行 スター不動産担保ビジネスローン
日本政策金融公庫 創業支援
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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