更新日: 2024.10.10 働き方
「4・5・6月に残業し過ぎると12ヶ月間も損する」といわれる理由は?
日々節約に努めていたり、老後について真剣に考えたりしているような方の多くが、一度は聞いたことはあることでしょう。
なぜ、わずか3ヶ月での残業が12ヶ月の損につながるのでしょうか? その理由について解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
社会保険料は4月、5月、6月の給与を基準に決まる
サラリーマンなど厚生年金(40歳以上の方は介護保険も)と健康保険に加入している方の厚生年金保険料や健康保険料は、4月、5月、6月の3ヶ月間に支給される給与を基準に決まる「標準報酬月額」によって決定されます。
ここでいう給与には基本給のほか、通勤手当や住宅手当といった各種の手当て、残業代を含みます。
そして、一度決まった社会保険料は、昇進や降格などで一定額以上大きく給与額が変動したという場合でない限り、その年の9月から翌年8月までの12ヶ月間適用されます。この仕組みを定時決定といいます。
4月から6月の3ヶ月間に残業が多くなり、支給される給与が普段よりも高いと、社会保険料の金額も高くなり、12ヶ月間、高い金額の社会保険料が給与から引かれるようになります。
このような仕組みが存在することから、4月、5月、6月に残業をすると12ヶ月間損をするといわれるのです。
具体的な計算例
例えば、普段の給与が20万円の人において、4月から6月の間残業が多く、毎月22万の給与を受け取ったとすると、標準報酬月額による等級区分が1つ高くなります。
すると、毎月1830円、厚生年金保険料が高くなります。さらに、健康保険(介護保険を含む)は1145円増えるため、合計で毎月3000円ほど保険料によって引かれる金額が高くなります。
給与の締め日と支払日に注意
先に述べたとおり、社会保険料は4月から6月に支給される給与を基準に決まります。しかし、多くの会社は翌月25日払いなど、前月分の働きに応じた給与を翌月以降に支給しています。
人によっては4月、5月、6月の給与は、3月、4月、5月に働いた分が支給されている、あるいは2ヶ月遅れで、2月、3月、4月の働いた分が支給されているということもあります。
「4月、5月、6月に残業し過ぎると12ヶ月間も損する」といっても完全には間違いではありませんが、正確には、4月から6月に残業することが問題なのではなく、4月から6月の給与が高くなるように残業をすると、月々の手取りが減ってしまうということを覚えておいてください。
4月から6月の給与が高いのは本当に損なのか?
ここまで聞くと、4月から6月の給与が高いのは単に損でしかないと思われるかも知れません。
しかし、厚生年金保険料の支払額が増えると、将来受け取る年金が増えますし、健康保険料の支払金額が高いと、病気やけがを負った際に受け取れる傷病手当金の金額が増えるなどのメリットもあります。
その点を考えると、一概に損であるともいい切れないことを知っておいてください。
4月から6月に残業が多いと手取りが減って損をする可能性がある
4月から6月の3ヶ月間に支給される給与で厚生年金や健康保険の保険料が決まるため、この3ヶ月間の給与が高くなるように残業してしまうと手取りが減り、損をしてしまう可能性があります。
そのため、少しでも今の手取りを減らしたくないという方は、4月から6月に支給される給与が高くなりすぎないように注意してみてください。
また、「4月、5月、6月に残業し過ぎると12ヶ月間も損する」とよくいわれますが、給与の締め日や支給日との兼ね合いで、勤務先によって、実際には3月から5月など残業に注意すべき期間が異なります。
この点を踏まえ、一度、自身の社会保険料や残業について考えてみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:柘植輝
行政書士