更新日: 2024.10.10 働き方
「赤字だから今期は無報酬で働く」と社長が言っています。それって“あり”ですか?
役員報酬は、労働の対価として支払われる給与ではないため、業績などによっては「報酬をゼロにする」などといったこともあるようです。中には社長が無報酬で働くのはありなのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、役員報酬の概要や報酬をゼロにしても問題ないのかについて調べてみました。役員報酬は頻繁に変更できるものではないため、金額は慎重に検討する必要があります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
赤字だからと無報酬で働く社長……役員報酬をゼロにするのはあり?
役員報酬は、会社から社長などの役員に支払われる報酬です。
雇用契約に基づいて支払われる給与とは異なり、報酬額は定款または株主総会の決議によって定めることになっています。役員報酬は労働の対価ではないため、社長の収入をゼロにすることは可能です。社長の役員報酬をゼロにすることには、以下のようなメリットが考えられます。
・会社の収益を増やせる
役員報酬は会社の資金から支払うため、ゼロにすることで収益を増やせます。
例えば業績不振で赤字が続くような場合も、設定された金額を支払わなければなりません。社長の役員報酬をゼロにすることで、経営が圧迫されないようにできると考えられます。
・株主への誠意を見せられる
赤字決済で事態が深刻なケースでは、役員報酬をゼロにすることで、株主に誠意を見せられます。役員報酬の減額が一般的ですが、ゼロにすることで、経営の立て直しに本気であることをアピールできるでしょう。
社長の役員報酬をゼロにする注意点とは?
赤字だからと社長の役員報酬をゼロにする際は、以下のようなリスクが考えられます。
・無報酬では社会保険に加入できない
役員報酬をゼロにすると、報酬から健康保険料や厚生年金保険料を徴収できなくなり、社会保険は非加入の扱いとなるため注意が必要です。
社会保険の資格を喪失すると、国民健康保険や国民年金の加入手続きを行う必要が生じます。会社が半額負担する社会保険と比較して、個人の負担が大きくなる可能性があるでしょう。
・金融機関や取引先からの信用を失うリスクがある
役員報酬をゼロにすることで、金融機関から融資が受けられなくなったり、取引先からの信用を失ったりするリスクがあります。
頻繁に変更できない役員報酬……相場や先を見越して決定することが大切!
役員報酬は、基本的に設立年度は設立から3ヶ月以内、2期目からは事業年度開始から3ヶ月以内に決定します。つまり、頻繁には変更できない仕組みになっています。
役員報酬を決定する際は、企業規模ごとの相場や先を見越しつつ、慎重に決定する必要があるでしょう。人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」によると、2022年度の企業規模別・役名別年間報酬の平均は表1の通りです。
表1
役名 | 全規模 | 3000人以上 | 1000~3000人未満 | 500~1000人未満 |
---|---|---|---|---|
会長 | 6391万1000円 | 9305万8000円 | 5813万1000円 | 5636万4000円 |
副会長 | 5821万5000円 | 7579万4000円 | 6205万7000円 | 3062万6000円 |
社長 | 5196万8000円 | 8602万6000円 | 5275万6000円 | 4225万5000円 |
副社長 | 4494万4000円 | 6008万8000円 | 3947万9000円 | 3510万6000円 |
専務 | 3246万9000円 | 4545万円 | 3343万6000円 | 2543万4000円 |
常務 | 2480万円 | 3354万8000円 | 2464万2000円 | 2154万4000円 |
※人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」を基に筆者作成
赤字で社長が無報酬で働くことは可能! ただし注意点もあり
社長の収入は役員報酬で、労働の対価ではないため、ゼロにしたり少なくしたりすることは可能です。赤字決済の際に会社の資金を増やしたり、株主へ誠意を見せたりできるメリットが考えられます。
しかし、無報酬になると社長は社会保険の資格を喪失することになり、国民健康保険や国民年金の加入手続きをしなければならなくなります。また役員報酬がないことで、金融機関からの融資が受けられなくなったり、取引先からの信用を得られなかったりするリスクも考えられます。
社長の役員報酬は頻繁に変更できるものではないため、社長が「赤字だから今期は無報酬で働く」と言っている場合は、経営を立て直すために慎重な決定が行われたのでしょう。
出典
人事院 民間企業における役員報酬(給与)調査 令和5年度 第3表 令和4年 企業規模別、役名別平均年間報酬
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー