更新日: 2024.10.10 働き方
パート先で、10月から「社会保険料」が天引きされると聞きました。収入は「月8万円」くらいに抑えているのですが、パートでも賞与が出るので、「106万円の壁」を超えてしまいそうで心配です…
本記事では、2024年10月から始まる社会保険の適用拡大について解説します。実際の適用条件のほか、適用された場合の保険料負担についてシミュレーションしました。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
社会保険適用の条件4つ
2024年10月から始まる社会保険適用の条件は次の4つです。社会保険適用となるには、次の4つをすべて満たす必要があります。
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・雇用期間は2ヶ月を超えると見込まれる
・所定内賃金月額が8万8000円以上
・学生でない
なお、この条件は2022年10月、すでにスタートしていました。ただし、これまでは適用する企業規模が従業員数100人超に限られていましたが、今回の改正で従業員数50人超に対象が拡大します。適用条件には注意点などもあるため、順に見ていきましょう。
週の所定労働時間が20時間
週の所定労働時間には残業などは含まず、契約上の労働時間が20時間以上であることが条件です。ただし、実労働時間が今後も20時間以上見込まれそうなときは対象となります。
雇用期間の2ヶ月超えが見込まれる
雇用契約書などで「無期限」や「1年ごとの更新」と記載されているなど、2ヶ月以上の雇用が見込まれることが条件です。
所定内賃金月額が8万8000円以上
この条件により、毎月8万8000円の収入があった場合の年収が約106万円となることから「106万円の壁」と呼ばれています。適用条件は、基本給と諸手当で賃金月額8万8000円以上の場合をさします。次のような臨時の手当や、月によって変動する給与などは所定内賃金に含まれません。
・時間外労働手当
・休日・深夜手当
・賞与や業績給
・通勤手当
・精皆勤手当
・家族手当
毎月の賃金が8万8000円以内で、別に賞与が出る場合などは、年間の収入が106万円を超えていても社会保険の加入対象となりません。
学生でない
学生は社会保険の適用外です。ただし休学中の学生が働く場合、夜間学生が昼間に就労する場合は加入対象となります。
社会保険適用となったら負担はどのくらい増える?
パート社員が社会保険適用になったら、どのくらい負担が増えるのでしょうか? 実際の例をもとに計算します。次の条件で、東京都の保険料額表を参考に計算した結果は図表1のとおりです。
・45歳 パート勤務
・給与月額8万8000円、賞与年間20万円(年収約125万円)
・標準報酬月額:6等級 10万4000円(10万1000円~10万7000円)
図表1
社会保険料額 | 負担額 | |
---|---|---|
健康保険料(介護保険料含む) | 1万2043円 | 6022円 |
厚生年金保険料 | 1万9032円 | 9516円 |
社会保険料合計 | 3万1075円 | 1万5538円 |
全国健康保険協会 東京支部 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表より筆者作成
所定内賃金が毎月8万8000円を超えると、毎月約1万5000円の社会保険料負担が発生します。これまで社会保険の扶養には年収130万円の上限がありましたが、月額8万8000円を超えて社会保険適用となった場合、「130万円の壁」を気にする必要はなくなります。
社会保険料を支払うとメリットもある
パート収入の中から毎月1万5000円の社会保険料を支払うのは重い負担ですが、社会保険に加入するメリットもあります。社会保険に加入するメリットは主に次の4つです。
・老齢年金の充実
・障害年金の充実
・遺族年金の充実
・健康保険の充実
社会保険に加入して、厚生年金保険料を支払うことにより将来受け取れる老齢年金額が増えます。前記の例で考えると、年収約125万円で10年働き続けた場合、将来受け取れる老齢年金は年額約6万8000円増えます。
また、厚生年金に加入していると、障害年金や遺族年金の保障が手厚くなります。万が一自身が障害状態になった場合、障害の程度により障害基礎年金に加えて障害厚生年金が受給できます。また、死亡した場合も、残された家族は遺族基礎年金に上乗せで遺族厚生年金を受け取れるのです。ただし、配偶者や子どもの年齢によって受け取れる金額は変わります。
さらに社会保険に加入することで、万一療養で働けなくなった場合に「傷病手当金」の支給対象となったり、産前産後休業時に「出産手当金」の支給を受けられたりします。いずれも給与の3分の2を目安に支給されるため、仕事を休んでいる間も収入がなくなる不安を軽減できます。
まとめ
社会保険の適用拡大は、これまでも段階的に行われてきました。2024年10月からは従業員50人超の中小企業でも加入が義務付けられるため、これまでよりも加入対象となる人が増えるでしょう。
社会保険料の負担は、年収約125万円の人で毎月約1万5000円となるため負担は大きいですが、その分将来受け取れる老齢年金が増え、傷病手当金の対象になるメリットもあります。社会保険適用の条件は4つすべてを満たす必要があるため、勤務先で確認してみましょう。
出典
全国健康保険協会 東京支部 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま 社会保険適用拡大についてご案内します
執筆者:古澤綾
FP2級