更新日: 2024.11.26 働き方
「年収130万円」以下でパートで働き続け、来年60歳になります。60歳から「扶養家族」でいられる「年収の壁」が変化するって本当ですか?
本記事では、扶養の対象外である75歳になるまで扶養であり続けるには、給与と年金収入などをいくらに調整していけば良いかを、いくつかシミュレーションします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「年収の壁」を超えずに働き続けるほうが良い?
パートなど短時間で働くときに気になるのが「年収の壁」と言われる、所得税と住民税の課税・社会保険加入のボーダーラインとなる年収です。令和6年10月から社会保険に加入が必要な収入と勤務時間などの要件が拡大したため、年収の壁を気にする人が多いでしょう。
扶養には、扶養する人(会社員・公務員など)には「扶養控除」が適用できて所得税・住民税が安くなるメリットがあり、扶養される人には「国民年金第3号被保険者」として健康保険料と年金保険料を納付しなくても良いというメリットがあります。
75歳まで扶養でいられる年収の目安は?
60歳になるまで扶養家族でいられる年収は130万円以下ですが、60歳からは年収180万円(合計所得が48万円)以下までとなります。180万円という年収は、老齢年金と給与収入などを合計した金額で、前年度の収入ではなく「これからの収入見込み額」が基準になります。
75歳になると、年収などにかかわらず扶養から外れて後期高齢者医療保険に加入することになります。そのため、ここでは75歳まで扶養家族でいられる年収の目安をシミュレーションしてみましょう。
(1)60歳から65歳まで
60歳からは年収要件が年収180万円以下にひろがり、年収180万円を月収に換算すると15万円になります。月収15万円は、勤務先によっては社会保険に加入する要件に当てはまってしまうので、令和6年10月からの社会保険加入要件である「年間106万円(月収8万8000円)以下」に抑えて働くのもひとつの選択肢です。
(2)65歳から75歳の誕生日前日まで
老齢年金を受け取れる65歳から75歳になるまでは、年金収入と給与収入のバランスを調整する必要が出てきます。1年間の年収180万円(合計所得が48万円)以下であることが扶養でいられる条件です。
・年金収入96万円(月額8万円)でパート収入78万円(月収6万5000円)のAさんのケース
年金収入96万円-公的年金控除110万円=雑所得0円
給与収入78万円-給与所得控除55万円=給与所得23万円
雑所得0円+給与所得23万円=合計所得金額23万円
Aさんの場合、合計所得が「48万円以下」のため扶養に入れます。
・年金収入120万円(月額10万円)でパート収入90万円(月収7万5000円)のBさんのケース
年金収入120万円-公的年金控除110万円=雑所得10万円
給与収入90万円-給与所得控除55万円=給与所得35万円
雑所得10万円+給与所得35万円=合計所得金額45万円
Bさんも合計所得が48万円以下なので扶養家族でいられます。もし、パート収入が96万円(月収8万円)になると、給与所得が41万円で雑所得10万円との合計所得が51万円になって扶養から外れてしまいます。
注意しておくべきポイントは?
75歳まで働きながら扶養でいるために注意しておくべきポイントは「最低賃金が毎年改定されるので、給与と働く時間を調整すること」です。
最低賃金は毎年10月に改定され、例えば東京都では時給1163円に引き上げられました。年収の壁は変更されていないので、働く時間などに注意して調整する必要があります。
まとめ
社会保険上の扶養となれる「年収130万円以下」が、60歳以上では「年収の合計180万円以下(給与収入・年金収入などの合計)」になります。働いて得た収入と年金収入で生活を長く続けられるか、家計を時々見直していくことが望ましいでしょう。
出典
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 高齢者と税(年金と税)
国税庁 家族と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー