更新日: 2024.10.10 ライフプラン

住宅資金と教育費のバランスはどのように考えるべき?

住宅資金と教育費のバランスはどのように考えるべき?
住宅を購入するとき、多くの人が住宅ローンを利用します。本来であれば、いくら借りられるかではなく、いくらなら余裕をもって返せるかを考え、住宅購入予算、借入額の決定は慎重に行うべきです。
 
ところが実際には、住宅を購入する際「今払っている家賃との比較」や「金融機関はいくらまで貸してくれるのか」ということばかり気にし、将来のことについてじっくり考えていない方も少なくありません。
 
特に小さいお子さまがいる世帯では、将来かかる教育費が「いつ」「どのくらい」必要なのかについて考慮しておかないわけにはいきません。
 
今回は、住宅資金と教育費に充当する資金の形成を両立するために、抑えておくべきことについて考えます。
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
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住宅ローンは、借りられる=返せるではない

多くの場合、住宅ローンは20年、30年という長期にわたって返済していくことになります。お子さまがいらっしゃる家庭では、特に教育費の負担を含めさまざまな支出を考慮しておく必要があります。
 
住宅ローンに関する金融機関の審査は、現在の資産状況や所得の状況のチェックが主です。将来の家計の変化などは、それぞれの家庭でしっかり検討しておく必要があります。
 
「今の家賃負担と変わらない」あるいは「今の収入状況で考えれば十分返済できるだろう」と思っていても今後20年、30年の間に起こりうる変化について考慮しておく必要があります。
 
お子さまの教育費は詳細な額まではわからないものの、大まかな金額と必要な時期については予測可能です。返済計画と合わせ、必要な資金を作るための計画は不可欠。貯蓄に充てるための資金も考慮して、予算を検討する必要があります。
 

教育費が最もかかるのは大学入学時

お子さまが小さいうちから、今後どのような教育を受けることになるかを、予測するのは簡単なことではありません。高校、大学進学の頃になればお子さま自身が「将来は〇〇になりたい」と明確な目標を立てているかもしれません。
 
しかしそれを待って教育費を準備したのでは遅すぎることは明白です。親としてはある程度、教育費に充てる資金を蓄えておく必要があります。
 
私立の小学校、中学校に通う場合はその段階でかなり費用がかかりますが、仮に高校、大学から私立と考えた場合でもその費用はまとまった額となります。学校によっても差があるので一概には言えませんが、最も教育費がかかるのは大学入学の前後です。
 
大学入学時には入学金がかかりますし、その前後には塾に通う費用や受験料などもかかるでしょう。通っている間も学費がかかります。地方にお住まいの場合などで、自宅から通えない大学に通う場合には、下宿など住居費もかかるかもしれません。
 
もちろん小学校、中学校、高校に通っている間もある程度の費用はかかります。こうした費用がいつどのくらいかかるのかを調べ、必要な時期に資金が不足しないよう長期計画で資産形成を行う必要があります。
 
仮に大学4年間でかかる費用を750万円としましょう。
 
10年計画でこの資金を作るとした場合、利息を考慮しなければ、1年間に75万円、月当たり6万2500円ずつ蓄える必要があります。
 
15年間ならば50万円/年、4万2000円/月となりますが、5年間で蓄えようとするならば150万円/年、12万5000円/月となり、かなり厳しいと思います。お子さまが2人いればその倍です。
 
長期計画で考えなければいけないことがよくわかるのではないでしょうか。

 

学資保険は使えるか

学資保険というのは「教育資金を準備するための保険」です。
 
子どもの成長に合わせて「進学準備金」「満期学資金」などを受け取れるとともに、契約者(親)の身に事故や病気などで万が一のことがあった場合には、保証が継続されたまま以降の保険料の払込が免除となり、資金を受け取ることができます。
 
かつて、学資保険は保険期間が長く、保険会社も運用したため、支払った保険料以上に戻ってきたのですが、今は低金利であることから支払った金額よりも戻る金額が少ない、つまり元本を割り込んでしまうケースも少なくありません。
 
引き落としなどで強制的に資産形成をするとともに、保険としての効果があることからまったく意味がないわけではありませんが、ほかの資産形成方法も含めて自分の家計にあった方法を選択するべきでしょう。
 

運用するならばどんな手法がある?

教育資金を運用して増やすという方法もあります。元本を割るリスクは伴いますが、順調にいけば定期預金などで置いておくよりも有利になります。
 
長期投資を前提としていることから考えれば「つみたてNISA」などで税制優遇を受けつつ、いわゆる「ドルコスト平均法」という比較的有利な投資手法も活用できます。
 
積み立てる資金の一部は元本が保証される定期預金にしたり、比較的安心な個人向け国債などを購入し、一部をこうした税制優遇を受けられる制度も活用しながら運用すること可能です。
 
将来必要になる資金であるため、あまりリスクの高い投資商品で運用することは望ましくありません。長期間かけて資産形成できるメリットを生かすためにも早めに目標額を設定し取り組む必要があります。

 

まとめ

住宅ローンの返済期間中に、こうした教育費の資産形成を合わせて行う必要がある家庭は多いでしょう。特に最近は晩婚の夫婦、40歳前後でお子さまを持つような家庭も少なくありません。
 
そうした家庭では、教育費の資産形成と合わせて老後資金の資産形成も考慮しなければならなくなります。住宅ローンが借りられるからと住宅購入予算を高めに設定してしまうと、そのほかの資産形成まで手が回らない、ということにもなりかねません。
 
住宅購入の際には、自身の、家族のライフプラン、ライフデザインを慎重に検討しておく必要があります。場合によってはファイナンシャル・プランナーなどの助言も受けつつ、自分たちにあった目標の設定と資産形成の方法のついて考えておかなければいけません。
 
教育費と住宅ローンの返済をバランスよく考える必要があります。老後資金の形成も重要です。住宅を購入するときは、予算検討と合わせてそうした検討を行うチャンスともいえます。
 

執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、
上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役
 

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