晩婚で50歳前後でマイホームを買うことに。事前に確認しておきたいポイントは?
配信日: 2021.01.26 更新日: 2024.10.10
平均的な年齢よりも遅くご結婚され、マイホームを購入する。すでにこれまで働いてきた期間よりもリタイアを迎えるまでの期間のほうが短くなっています。給与収入が得られる期間とローンの返済期間を考慮するのはもちろんですが、このほかにも考えておくべきことは少なくありません。
どのようなことを想定し、備えておけば良いのでしょうか。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
http://www.nishiyama-ld.com/
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
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目次
条件の確認
今回のご相談者は40代後半のご主人と8歳年下の婚約者です。私がこうしたご相談をファイナンシャル・プランナーとしてお受けするときには、確認させていただかなければいけない条件がいくつかあります。
2人の資産状況や収入の状況・予測はもちろんなのですが、2人が思い描く家族の将来像をおうかがいしておかなければなりません。特に重要なのはお子さまをご希望されるかどうかです。このご相談者は「できれば子どもがほしい」とお考えでした。
50歳前後でマイホームを買うために考えておくべきこと
人生の3大資金と呼ばれる「住宅費」「教育費」そして「老後資金」。晩婚でさらにこれからお子さまを持ちたいと考えている場合、今後どんな費用がかかることを想定しておく必要があるでしょうか。
日常の生活費や住宅関連費のほか、お子さまが生まれれば教育費の負担も発生します。さらには老後資金の資産形成も必要となり、これらを同時並行で考えなければならなりません。
これらの資産形成をバランスよく進めながら、思い描く理想の家族の形を実現するためにできることを考えていきます。
現在の資産状況と収入の予測からキャッシュフローを考える
まず、どれだけの資産があり、今後どの程度の収入が見込めるかを確認します。その中から「どれだけを資産形成に回し、どれだけを教育費に充てると住宅費にどれだけの予算を割けるか」を検討します。
夫婦共働きで家計をやりくりするとしても、お子さまができれば奥さまは産休育休などによって現在と同じ収入が維持できるとは限りません。一時的に収入が減ることもあるでしょう。そうしたことも考慮し、まず収入予測を立てておきます。
次に支出。まず考えるのは教育費です。まだお子さまが生まれていない状況ですし、もしかすると2人以上のお子さまを授かるかもしれません。そのようなときには支出計画も見直しが必要になりますが、今回は「お子さま1人」を想定し、どの程度の教育費がいつごろかかるかを予測します。
一般的にはお子さま1人が大学卒業までにかかる費用として2000万円程度必要になると考えられます(公立か私立か、どのような専攻かによって幅があります)。「お金がないから満足な教育、希望する教育が受けられない」ということは避けたいところ。各家庭での価値判断だとは思いますが、住宅費を抑えてでも子どもの教育費は確保しておきたいところです。
次に考えるのは「老後資金」。最近は65歳まで定年が延長されたり、70歳まで働けるようになる会社も出てきています。仮に70歳まで働くとしても、すでに40代後半ばに達しているご主人は給料を得られる期間は20年余りしかありません。
人生100年時代といわれるようになり、仮に90歳まで生きるとしてもリタイア後20年の生活費を確保しておく必要があります。年金制度が今後どのようになるかは不確定な部分もあり、想定が難しいところではありますが、できれば余裕をもって資産形成を進めたいところです。
取得する住宅にいくら充てられるか
住宅を購入したあとではローン返済額を含めた住宅関連費の支出のコントロールが難しくなります。現在は超低金利の状態が続いていますが、変動金利で借り入れた場合には金利上昇のリスクもあります。ローン返済期間中に金利上昇の局面に入ることもあり得ます。
ほかにも、税金のほかマンションであれば管理費・修繕積立金を支払いがあります。これらは居住している以上決められた金額を支払い続けなければなりません。一戸建ての場合でも、将来の修繕やリフォームなどを考慮して、資金を蓄えておく必要があります。
だからこそ、住宅を購入するときには将来のキャッシュフローを検討したうえで、しっかりと返済計画を検討し、無理なく返せる借入額を把握したうえで予算を組む必要があります。
これからお子さまを持ちたいと思っている夫婦の家探しの注意点
これからお子さまを希望されている状況で住宅の取得を検討する場合、2人だけの生活だけでなく、お子さまができたあとのことも想定した間取りや面積の家を考える必要があります。
子どもは神様からの授かりもの。授かるかどうかもわかりませんが、お子さまが生まれ5年から10年もすると、2人だけで住むことを想定した家では手狭になるでしょう。そのときにはまた買い替えるという選択肢もあります。しかし、買い替えるときに今の家を売却し新しい家の取得資金に充てようと考える場合には注意が必要です。
買い替えようと思ったときに、その家がいくらで売れるかわからない、場合によっては大きく下がるかもしれないという不確定要素があるからです。
空き家が増加し、人口が減少していく中では今後、場所にもよりますが不動産価格が下がる可能性は十分にあります。安易に「買い替えれば良い」という想定をすることにはリスクがあることも認識しておくべきでしょう。
まとめ
不動産屋に「マイホームを探している」と話せば、喜んで探してくれるでしょう。しかし、30代で家を買うのと異なり、50歳前後で家を買う場合にはあらかじめ考えておかなければならないことがあるのはいうまでもありません。金融機関も不動産屋もそこまでは考えてくれません。
若い夫婦であれば住宅購入はお子さまが生まれたあと、家族の人数がある程度確定してからが望ましいところです。
しかし、50歳が近づけばローンの返済期間が短くなり、返済期間が短くなると毎月の返済額が大きくするか、借入額を抑える必要が出てきます。かといって、賃貸に住み続け、家賃を支払っていると資産として残らず、老後資産の形成に影響しかねません。
いずれはマイホームを持つことを希望するならば、あまり先延ばしすることはお勧めできません。
晩婚でも、人生をともに歩むパートナーが見つかることは素晴らしいことです。ずっと幸せで過ごすためにも夫婦で将来の家族像を描き、そのための資産形成計画を共有すること。それを実現するために協力していくこと。晩婚であればなおさらその重要性は高いと思います。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役