更新日: 2022.05.30 年収

ポスドクの仕事内容や年収はどのくらい? ポスドク問題について解説

執筆者 : 古田靖昭

ポスドクの仕事内容や年収はどのくらい? ポスドク問題について解説
ポスドク問題は、大学博士課程を修了して大学の教員や企業の研究機関などの常勤職員になりたいと思っている人にとっては、深刻な問題となっています。
 
その理由は、大学教授のポストが決まっていることや、企業においても研究のみを専門にする人を積極的に採用できないことが要因です。本記事ではポスドク問題や、仕事内容、年収についてご紹介していきます。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭()

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ポスドク問題とは何か?

ポスドクとは、ポストドクターの略で大学教員などになる前に、研究者としての技術や経験を積むために、国内や海外の大学などで働く非常勤研究員のことです。一般的にポスドクの期間は1年から数年程度で、大学教授の道へ進む場合、助教へと登ります。
 
しかし大学教授の人数や、企業が積極的に採用しないため、長い期間ポスドクに留まっている人が多くなっています。ポスドクは非常勤研究員となるため立場が安定せず、アルバイトなどを掛け持ちする研究員もいます。
 

大学院重点化政策の問題

ポスドクが登場したのは、1990年代に東京大学などの国立大学において始まった、大学院重点化政策からです。大学院重点化政策は、それまで大学の学部を中心とした組織から、大学院を中心とした組織変更を行うことを目的に実施されました。重点化するにあたって大学院の定員を増加させました。
 
また当時の文部省が、1996年度から2000年度の5年計画として、「ポストドクター等1万人支援計画」を実施。計画では博士号取得者を1万人増やすために、期限付きの雇用資金を大学などの研究機関に配布しました。2000年代には目標人数を超え、2008年になると1万7945人となりました。
 
つまり大学院の定員を増加し、博士号取得者を増やしたものの、その人数を賄うような研究機関や、予算などがないために起こってしまった問題といえます。
 

ポスドクの人数

2018年度に文部科学省の科学技術・学術政策研究所において、「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)」を出しています。その資料に基づき、ポスドクの人数を図表1に表しています。
 
図表1

ポスドクの人数 ポスドク支援計画時からの増加率(※)
2004年度 1万4854人 239%
2005年度 1万5496人 249%
2006年度 1万6394人 263%
2007年度 1万7804人 286%
2008年度 1万7945人 288%
2009年度 1万7116人 275%
2012年度 1万6170人 260%
2015年度 1万5910人 256%
2018年度 1万5590人 250%

※文部省が1996年度から始めた「ポストドクター等1万人支援計画」を始める前のポスドクの人数は6224人です。その人数からの増加率を計算しています。
 
ポスドク支援計画時からの増加率を見ると、2倍以上を推移しているものの2008年度をピークとして少しずつ下降しています。ポスドク問題は、ポスドクの人数が増えすぎたことや、受け皿となる大学や企業がいないことが原因です。
 
また最近では中国政府や企業において、日本のポスドクなどの若手研究員を破格の待遇で招致しており、研究者の流出が起きています。ポスドク問題は、すでに社会問題化しており、さらに研究者の流出も加わって経済安全保障問題にまで発展していくことが考えられます。
 

ポスドクの年収はどのくらい

ポスドクの年収について、「ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析」で見ていきましょう。図表2になります。
 
図表2

月額 年額
人文社会系 21万3000円 255万6000円
理学系 32万9000円 394万8000円
工学系 33万円 396万円
農学系 28万7000円 344万4000円
保健学系 30万7000円 368万4000円
その他 26万円 312万円

 
研究分野別の平均給与になっており、人文社会系が低く21万3000円で、工学系が高く33万円です。10万円以上の差が開いている理由は、人文社会系では無給の場合も多いことから平均値が低くなっています。また賞与や、社会保険もありません。
 
助教や講師になれば年収は上がるものの、ポストがないため難しいのが現状です。ただし、企業によっては、研究している内容や分野によっては採用してくれるところがあります。自分の研究分野と合致した職種で採用しているのを見つけられれば、安定した収入になるでしょう。
 
また文部科学省において、2016年度から始まった制度で「卓越研究員制度」があります。この制度は、企業や研究機関とポスドクのマッチング事業を行うものです。文部科学省が、若手研究者を審査して、卓越研究員として候補者を決定します。
 
決定後、企業や研究機関とマッチングを行い、受け入れ企業や研究機関側が、任期なしのポスト、または任期付きのポストを用意するかをあらかじめ明示しなければなりません。そのためポスドクの方の雇用の安定化につながるとされています。
 

出典

公益財団法人日本学術協力財団 学術の動向 2017年3月号 ポスドク問題の何が問題か/小林武彦 P62~63
文部科学省科学技術・学術政策研究所 ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)報告書全文
文部科学省科学技術・学術政策研究所 ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析報告書全文
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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