年収1000万円を超えた! もらえなくなる手当や受けられなくなる控除はあるの?
配信日: 2022.11.24
そこで、夫は年収1000万円、妻が専業主婦、小学校と幼稚園に通う子どもが2人いる家庭をモデルとして、家計がどう変化するか見ていきましょう。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
税金はどう変わる?
会社員の場合、所得税と住民税の計算をする際、給料から必要経費として給与所得控除という控除が差し引かれます。給与所得控除は、基本的に年収が増えるにつれ、金額も増えていく仕組みですが、年収が850万円を超えると、差し引ける控除額は一律195万円になります。
年収が851万円でも1000万円でも会社員の必要経費は195万円、同じというわけです。控除が少ないと税金は増えますから、思っていた以上に税金が高いと感じるかもしれません。
配偶者控除の金額が小さくなる
所得が900万円(年収目安1095万円)を超えると、配偶者控除の金額が減ります。冒頭のモデル家庭の場合、妻は専業主婦ですから、所得が900万円以下なら配偶者控除として所得税から38万円、住民税から33万円を差し引くことができます。
しかし、所得900万円(年収目安1095万円)を超えると、配偶者控除の金額は所得税26万円、住民税22万円に減少します。さらに所得が950万円(年収目安1145万円)を超えると、配偶者控除は所得税13万円、住民税11万円に減少し、所得1000万円(年収目安1195万円)を超えると配偶者控除は利用できなくなります。
児童手当はどうなる?
児童手当は扶養人数によって所得制限が異なります。今回は、専業主婦、小学校と幼稚園の子ども2人ですから、扶養人数は3人です。扶養人数3人の場合、児童手当の取得制限は736万円になります。
年収1000万円の場合、児童手当における所得を計算すると787万円になり、50万円ほど所得制限をオーバーすることが分かります。したがって、幼稚園と小学生の子ども1人1万円の児童手当を受け取れるところが、1人につき一律5000円の特例給付に変わります。
受給年金の増加がストップする
年金は大きく基礎年金と厚生年金の2種類があり、基本的に給料がアップするにつれ厚生年金の保険料は増えると同時に受け取る年金も増えます。しかし、月収が約65万円以上になると、それ以上、保険料は増えません。
厚生年金は給料が高いほど保険料も高くなりますが、約65万円になると保険料の上限に達します。納める保険料が上限に達すれば、受け取る年金も上限に達します。納める金額が増えないわけですから、受け取る年金も増えないのは理にかなっているといえます。
なお、年収1000万円でも月収が65万円より少なければ、必ずしもこのケースに該当しません。年収1000万円というより、月収65万円を基準と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ
世の中の制度は、高所得者にとって厳しい内容になっているのは否定できません。しかし、年収が増えた分、すべてを税金で差し引かれるわけではありませんし、収入は増えるにこしたことはありません。
収入が増えると不利になる制度が多いからと、収入を抑制するほうが危険といえるでしょう。収入が増えて税金が増えたり、利用できていた制度が利用できなくなったりする場合は、その時その時、取れる対策で乗り切っていくことが上手な家計運営につながるでしょう。
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ