公開日: 2021.01.20 相続

相続財産が多くなくても相続争いは多発?円満家庭が争族になった火種とは?

「相続が争族にならないように遺言書を残しましょう」という話がありますが、「書く必要はあるのかな」という方もいます。
 
わが家は大丈夫! というご家庭にも争族の火種はあります。普通のご家庭に起きた事例から、対策を考えます。
 
宮﨑真紀子

執筆者:

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

宮﨑真紀子

執筆者:

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

相続財産が多くなくても争族は多発

相続が注目されるようになったきっかけは、平成27年1月1日からの税制改正です。これまで「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だった相続税の基礎控除額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられました。
 
大幅な減額により相続税の課税対象者が増加し、一気に相続への関心が高まったのです。「争族」という言葉を耳にするようになったのもこの頃からです。しかし以前から遺産分割をめぐる争いは多く存在していました。
 
よく言われることですが、争族は相続財産の多寡によらず起きています。令和元年度の裁判所の司法統計年報によると、全家庭裁判所における「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数」の総数は7224件です。
 
その中で、遺産の価額1000万円以下が2448件、5000万円以下が3097件です。5000万円以下で全体の約76.8%を占めています。この割合は平成26年度が74.9%でしたので、あまり変わっていないと考えられます。
 
平成26年は改正前なので、基礎控除額以下の事案でも、多くの家庭が争族で悩まされていたことになります。
 


 
どうして争族になるでしょうか?「兄弟が不仲だったから」「分割割合が平等でなかったから」「亡くなった親に対する貢献度が違ったから」等々理由はさまざま考えられます。さらにこの統計を見ると、遺産の内容に不動産が含まれているものの件数が5754件で全体の約80%になります。
 
不動産のように「分割しにくい」財産が争族の理由の1つとして考えられます(※)。
 

円満家庭なのに争族になる火種は不動産

Nさんから、お母さまが亡くなられたので相続の相談をしたいという依頼がありました。お父さまは10年前に他界され、相続人はNさんと弟さんの2人です。主な相続財産はご実家の不動産。生前のお母さまはひとり暮らしで、弟さん一家は近所に住んでいます。
 
相続財産をどうするのか? やはり2等分するのが良策なので、弟さんからは不動産を売却する方法が提案されました。ですがNさんは売却には反対です。「両親の思いの詰まった実家を手放すことは、どうしても避けたいので共有にしたい」これが当初の希望でした。
 
不動産を共有名義にすることは、後々問題になりがちです。Nさんの場合、ご実家の老朽化が進んでいるので、近い将来リフォームが必要とのことです。そうなった場合も、どのように対応するのかは両者で決めなければなりません。共有である以上、不動産をめぐるすべてのことを、その都度話し合う必要があります。
 
さらに、もし弟さんが亡くなれば、その話し合いは弟さんの家族とすることになり、協議がまとまらない可能性は高まると考えられます。今は良好な関係であっても、将来も万全というわけにはいきません。
 
「売却しない」「共有ではない」方法として、次に候補に挙がったのは、代償分割です。ご実家は家を守りたいNさんが相続し、相続額が均等になるようにNさんから弟さんに現金を支払います。支払いは話し合いで分割払いにすることもできます。
 
2つの条件を両立する名案に思えましたが、ここでさらなる問題が生じました。Nさんの所有となっても、今は仕事の都合もあり引っ越しはできませんので、維持管理が心配です。
 
また自宅マンションのローンも残っています。弟さんへの代償、実家のリフォームなどを考えると経済的にも1人で担うのは不安です。
 
解決するには、どうしたら良いのか? 話し合いを重ねることで、Nさんの「損得ではなく実家を大切に思っている気持ち」を理解され、弟さんが引っ越しをするということで話は進んでいます。弟さんの自宅は賃貸マンションで、ご実家からも近いので生活圏を変えなくて済みます。
 
一家のライフプランは大きく変化したかもしれませんが、ご家族も納得されたようです。これなら維持管理の心配もなく、今後も実家に遊びに行けますので、Nさんにとっても良い解決策といえます。
 

遺産相続がうまくいく秘訣は“お互いの譲歩”

ご実家は弟さんが相続することになったので、先般の逆で「Nさんへの支払い」をどうするかが話し合いの焦点になります。リフォームなども見据えて、条件を調整することになりそうです。
 
分割協議書の作成を依頼している行政書士の方から「うまくいく秘訣は、お互いの譲歩です」とアドバイスを受けたそうです。2人が率直な意見を出して話し合いを重ねたことで、お互いの気持ちを十分に理解することができました。
 
その上で、このアドバイスがとても効果的だったようです。Nさんは「私も譲歩しようと思っている」と話されています。
 
ご両親の一番の願いは「姉弟がずっと仲良くしてほしい」ではないでしょうか。この思いはかないそうだと感じました。
 
(※)
令和元年度「司法統計年報 第52表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く)—遺産の内容別 遺産の価値別—全家庭裁判所」
平成26年度「司法統計年報 第50表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数—特別受益分考慮の有無別—全家庭裁判所」

 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
 

関連記事

遺産をめぐる兄弟の“争続”。遺留分請求されると大変なことになるかも?
相続人が全員放棄したらお墓はどうなる?換金されて、なくなってしまうの?
相続税法改正、何が変わった? ~結婚してから20年以上の夫婦間の贈与における優遇措置~



▲PAGETOP