更新日: 2021.04.09 その他相続

認知症になった親の預金口座はどうなる? 親族が代わりに引き出せるようになるって本当?

執筆者 : 伊達寿和

認知症になった親の預金口座はどうなる? 親族が代わりに引き出せるようになるって本当?
日本では平均寿命が延び高齢化が進んでいますが、認知症になる人も増えています。厚生労働省によると、認知症の有病者数は2012年の462万人に対し、2025年には約700万人となり、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症を発症すると推計されています。

親の医療費や介護費などについては、親の預金を使うことを考えている人も多いでしょう。親が認知症になった場合、親の預金口座はどうなるのでしょうか。親が認知症になった場合や、認知症になる前の備えについて紹介します。

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伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

認知症になったら口座が使えなくなる?

認知症が進むなどして認知判断能力が低下している場合、銀行が本人の認知症を認識すると預金口座の取引を制限します。
 
取引が制限されるケースには、家族が認知症であることを銀行に伝えた場合や、本人が手続きをするときに意思表示ができず、認知判断能力が大幅に低下していると銀行が判断した場合などがあります。
 
預金口座の取引が制限されると、預金の引き出しができなくなり、預金口座から他の口座への振り込み、解約などもできなくなります。手続きに来た人が家族であっても、預金者本人の意思確認ができなければ、預金引き出しなどが認められないケースがほとんどでしょう。
 
本人の預金口座に年金などが振り込まれたとしても、引き出すことができなければ医療費や介護費として使うことが難しくなり、その家族にとって金銭的な負担が増えることになります。
 

成年後見制度の利用

認知症による認知判断能力が低下した場合の手続きとして、金融機関から成年後見制度を利用するように促されるのが一般的です。
 
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度がありますが、すでに認知症の場合は法定後見制度を利用することになります。
 
法定後見制度では、家庭裁判所によって選任された成年後見人が本人を法律的に支援することになります。成年後見人は本人の預貯金などの財産を管理するほか、必要な福祉サービスや医療についての契約や支払いなども行ったりします。また、その事務について家庭裁判所に報告する必要があります。
 
成年後見人には、司法書士や社会福祉士など親族以外が選任される場合も多く、厚生労働省の資料によりますと、親族以外の第三者が選任されたものが全体の約76.8%(平成30年)となっています。
 
成年後見人への報酬として、本人の財産額に応じて月額2万円から6万円が必要になります。成年後見人は後見人としての立場や考え方があるため、家族の意見が必ずしも成年後見人に認められるとは限りません。
 
成年後見制度は判断能力が低下した本人を支援するための制度ですが、家族にとっては利用しにくいと感じる点があるかもしれません。
 

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認知症になる前の対策

本人に十分な判断能力があるときなら対策もできます。
 
まず、任意後見制度があります。法定後見制度と違って、任意後見人となる人や将来その人に委任する事務の内容を決めておき、認知症になった後は任意後見人が代わりに行うことになります。第三者の任意後見監督人が任意後見人を監督する場合もありますが、事前に本人が後見人を選べるという点が大きな違いです。
 
また、銀行によっては代理人制度を提供している場合があります。本人が銀行の窓口に行けなくなった場合でも、事前に登録した代理人が手続きをすることができます。なお、登録時に本人と代理人が一緒に手続きをすることが求められる場合があります。手続きなどについては取引のある銀行にご確認ください。
 

今後は柔軟な対応がされる可能性も

今後、認知症患者が増えるに伴い、預金などの金融資産が動かせないケースが増えてくる可能性があります。
 
金融庁の市場ワーキング・グループ報告書では、金融取引の代理等のあり方について、医療や介護など明らかに本人のための支出であり、手続きが担保されているのであれば、本人に代わって取引を行う者であっても、手続きを認めるなどの柔軟な対応を行っていくことが顧客の利便性の観点からは望ましいとされました。
 
また、金融庁の報告書などを踏まえ、一般社団法人全国銀行協会は令和3年2月18日に金融取引の代理等に関する考え方についての取りまとめを公表しました。
 
取りまとめでは、成年後見人等の法定代理人のほか、任意代理人や、親族等の無権代理人との取引についての考え方を示しました。これらの考え方を受けて、各銀行で柔軟な対応がされる可能性もあります。
 
認知症になってからでは対応策が限られてしまいます。手続きについては取引のある銀行に確認し、できれば認知症になる前に対策をしておくとよいでしょう。
 
出典
厚生労働省 成年後見制度の現状(令和元年5月)
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(令和2年8月5日)
法務省 成年後見制度・成年後見登記制度
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
 

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