身近な空き家問題
配信日: 2021.06.21
2015年に「空き家対策の推進に関する特別措置法」が施行され、国や自治体では空き家対策を促進しています。少子高齢化の時代、空き家を相続などで手に入れる可能性は多くの方にあります。
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
くらしとお金のFP相談センター代表
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。
2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。
全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。
東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。
自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。
2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。
学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。
10軒に1軒以上が空き家だが、災害時には資産に
日本の人口が減り、新築家屋が建てられていき、技術の進歩で家屋の耐用年数が長くなることにより、空き家率の増加傾向は続くでしょう。
私が住む宮城県では、2013年の空き家率は9.4%でした。
全国の空き家率13.5%に比べるとかなり低い数字です。理由は2011年の東日本大震災によって、多くの家屋が倒壊・津波で滅失して住宅不足になったためです。2018年は、宮城県は11.9%、全国で13.6%となっていて、全国的な空き家率はほぼ横ばいですが、宮城県では再び上昇しています(※)。
空き家が地域に存在すること自体のデメリットはありますが、今後記録的な大雨による洪水・土砂崩れ・想定される大地震といった大規模災害によって住居を失った被災者がすぐに住める住宅として空き家は地域の資産にもなります。地域に空き家が増えたとしてもきちんと管理された状態の空き家のまま維持しておくことは、防災・減災の観点からいっても有効です。
コロナ禍で都市部にも増える空き家
10軒に1軒以上が空き家といっても、今のところは都市部よりも郊外のほうに空き家は多いと思われます。
しかし、都市部でも空き家はあります。
昔ながらの商店街などで見かける、1階がお店で2階が住居の店舗兼住宅の建物が、店主がお店を閉めて郊外に引っ越して2階に人が住んでいない状態になっている空き家は各地で見られるでしょう。長引くコロナ禍で飲食店を中心に閉店せざるを得ない店舗兼住宅のお店が続出し、空き家になっていくことが予想されます。
もちろん、コロナの影響で本意ではない閉店をしないで済むような対策が求められます。
しかし、店主の高齢化などの事情もあって閉店し、空き家になってしまうことが都市部でも増えていきます。そういった空き家を放っておいて、「特定空き家」にしないようにしなければなりません。
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特定空き家とリスク
「特定空き家」とは、管理不足が原因で周囲に著しい影響を及ぼしている空き家を指します。「特定空き家」には行政が「助言」や「指導」、「勧告」、「命令」などを行うことができると法律で定められています。
法律が規定する「特定空き家」とは、次のような状態の空き家をいいます。
●倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
●著しく衛生上有害となるおそれのある状態
●適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
●その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
よりイメージしやすい具体的な例としては、
「屋根や外壁などが脱落・飛散するおそれがある状態」
「部材の破損や地盤沈下によって傾斜している状態」
「柱や壁や屋根など構造耐力上主要な部分に損傷がある状態」
「庭の雑草が生い茂って蚊やハチなどの害虫が増えている、または動物が住み着いてふん尿で不衛生な状態」
「大量の廃棄物を不法投棄されている状態」
が挙げられます。
また、大雪が降った際に空き家の屋根の上に雪が積もって、のちに通行人の頭上に雪の塊が落ちて死傷させたり、建物自体が倒壊してしまったりすることもあります。
さらに、空き家にしていると犯罪の温床になる可能性もあります。不法に侵入して住み着いたり、罪を犯して逃亡している者の隠れ家になったり、違法な薬物などの保管場所にされたりなどです。あるいは、住宅密集地の空き家への放火によって、周りの人が住んでいる家まで延焼するおそれもあります。
空き家を所有したら解決を先送りしない
空き家は時間がたてばどんどん劣化していきます。台風や自然災害は空き家の所有者の事情など考えてくれません。
自宅からはるか遠くの空き家を相続して、様子を見に行くことがなかなかできないうちに、空き家が原因で誰かに損害を与え、法的な責任を負うことになったら大変です。問題の解決を先送りせず、相続人間で相談し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
[出典]
※総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果」
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士