相続争いは他人事ではない? 一般の人でも身に付けておきたい相続に関する知識って?

配信日: 2021.07.31

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相続争いは他人事ではない? 一般の人でも身に付けておきたい相続に関する知識って?
相続争いはテレビドラマや ワイドショーで報道されるような有名資産家に起こるもので、自分には関係ないものと思っていませんか?
 
相続争いはどこの家庭でも起こり得るもので、決してひとごとではありません。むしろ相続争いとは無縁と思っている人こそ、いざというときのために相続の知識を身に付けておく必要があります。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続人となれる人の範囲

基本的に法律上、相続人になれる人の範囲は決められています。これを法定相続人といいます。
 
具体的には、亡くなった方(被相続人)の配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の人は順位が定められており、配偶者に加えて順位が高い地位にいる人が相続人となります。同順位にいる人が複数いれば、その全員が相続人になります。
 

相続順位 該当者
常に相続人となる 配偶者(夫や妻)
第1位 子(子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫)
第2位 父母(亡くなっていれば祖父母)
第3位 兄弟姉妹(亡くなっていればおい、めい)

※e-Gov 法令検索「民法」(第八百八十六条から第八百九十条)を基に筆者作成
 
上記表の相続順位は、養子縁組によって生じた関係にも適用されます。また、相続人以外の人でも、亡くなった方が遺言で財産を遺贈(贈与)することで財産を相続できることがあります。
 
逆に、相続人としてふさわしくない素行不良(遺言書の偽造・隠匿、他の相続人を殺害したなど)で欠格事由に該当したり、生前に被相続人を虐待していたなどの理由から、被相続人によって相続人から廃除されていると相続人になれない場合があります。
 
なぜ自分が相続人になれないのか、なぜ他の人が相続人になっているのかという問題は、相続の場で争いの原因になることが多いので、相続人となれる範囲や相続人から廃除される理由についても知っておくべきです。
 

相続の種類

相続は基本的に亡くなった方の権利や義務の全てを相続人が承継します。これを単純承認といいます。それ以外にも、プラスの財産の範囲で相続する限定承認や、相続自体をしない相続放棄というものもあります。
 
単純承認は何もしなければ、そのまま適用されることになります。しかし、限定承認と相続放棄は、相続があったこと知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要という期限があり、さらに限定承認に至っては相続人全員でしなければならないという制約付きです。
 
相続は、放っておくと亡くなった方の権利も義務も全て引き継ぐことになること、3ヶ月以内なら放棄や一定範囲の財産だけを限定的に引き継ぐこともできることを覚えておいてください。
 

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法定相続分について

相続分は法律によって下記表のように定まっています。これを法定相続分といいますが、法定相続分は遺言や遺産分割協議によって異なるものが定められれば、そちらの内容が優先されます。
 
また、生前に亡くなった方の介護などをしていた場合、寄与分として法定相続分よりも多い相続分が認められたり、亡くなった方から金銭的な援助を特に受けていた方などは特別受益があったとされて相続分が減額されることもあります。
 
基本的な法定相続分は下記のとおり、全部で3パターンあります。

相続人の構成 法定相続分
配偶者と子(または孫、ひ孫) 配偶者2分の1、子2分の1
(子が複数いる場合は2分の1を均等に分配)
配偶者と父母(または祖父母) 配偶者3分の2、父母が3分の1
(父母が複数いる場合は3分の1を均等に分配)
配偶者と兄弟姉妹(または、おい・めい) 配偶者4分の3、兄弟姉妹が4分の1
(兄弟姉妹が複数いる場合は4分の1を均等に分配)

※e-Gov 法令検索「民法」(第九百条、第九百一条)を基に筆者作成
 
しかし、民法には遺留分という規定もあり、遺言書や遺産分割協議によって相続財産が0とされていても、遺留分として最低限の相続分が下記表のように保障されているため 、相手が遺留分を主張した場合は遺留分に相当する金銭を支払う必要があります。

相続人の構成 遺留分の割合
父母、祖父母のみが相続人 3分の1
(相続人が複数人の場合は3分の1を法定相続分に従って分配)
上記以外の場合 2分の1
(相続人が複数人の場合は2分の1を法定相続分に従って分配)

※e-Gov 法令検索「民法」(第千四十二条)を基に筆者作成
 
ただし、欠格事由や廃除により相続人の資格を失っていたり、相続開始前の1年以内に亡くなった方から遺留分を超える贈与を受け取っているなどの条件に該当する場合、遺留分の適用はありません。
 

遺言の取り扱い

遺言書は亡くなった方の最終意思であり、基本的にはそれに沿って遺産を分けていくことになります。遺産分割をした後で遺言書が見つかれば、遺言書に沿った内容で遺産相続をやり直さなければなりません。
 
見つかった遺言書が公正証書遺言以外の遺言書であれば、開封の前に家庭裁判所の検認を受ける必要がありますが、仮に遺言書があっても様式不備で無効となる場合もあります。
 
また、故意に遺言書を隠したり、破棄すると相続人の欠格事由となり、一切の財産を相続できなくなります。相続が開始されたときは早めに遺言書の有無を確認するほか、遺言書の取り扱いにも十分注意する必要があります。
 

相続争い、次はあなたの番かもしれません

相続争いはどんな家庭にでも起こり得ることです。
 
相続争いを回避するためには、常日頃から親族と良好な関係を築き上げておくだけでなく、他人事と思わず、当事者になった際に対応できる知識を早い段階から身に付けておくことも大切です。
 
出典
e-Gov 法令検索 民法
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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