相続対策にはどんなものがある? 対策が必要な場合とは?
配信日: 2021.08.31
相続人にかかる負担を少しでも軽くするために、被相続人となる方が生前に行っておきたい相続対策について解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続対策の種類は?
ひとえに相続対策といっても、その分野や方法はさまざまですが、被相続人となる方が相続人ために生前に行っておける対策には主に以下のようなものがあります。
(1)相続税の節税対策
(2)相続税の納税対策
(3)相続争いの対策
(4)負の遺産の対策
まずはそれぞれを順に見ていきましょう。
相続税の節税対策
これは相続税(相続で取得した財産にかかる税金)を少しでも抑えるための相続対策です。
相続人が支払う相続税は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超える部分に発生します。言い換えれば、3600万円未満であれば相続税が発生しません。
そのため、相続税が3600万円未満となることが確実である場合は、他の相続対策を優先することになります。相続税対策としては、例えば次のようなものがあります。
●相続人となる方へ毎年110万円ずつ暦年贈与を行う
●相続税の対象となる生命保険金は、法定相続人の数×500万円まで非課税となるため、その範囲内で財産を生命保険に変えておく
●生前に非課税財産(お墓などの祭祀(さいし)財産)を購入しておく
●「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」などの非課税制度を利用して贈与を行う
この中でも特に暦年贈与は手軽に行え、制約も少ないのでおすすめです。
相続税の納税対策
相続税が発生する場合は、納税対策も行うべきです。
相続税の申告と納税は、相続人の方が相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に手続きをすることになっています。しかし、相続税が高額であったり、相続人の手元に現金がない場合など、状況によっては相続税を期限までに支払うことが困難となることがあるからです。
納税対策としては、所有する財産の一部を売却して相続財産のうち現金の比率を高くするほか、前述した節税対策によって相続人が支払う相続税の額自体を引き下げるといった方法があります。
相続争いの対策
最も重要といっていい相続対策が、相続争いの対策です。
最近では「争族」といわれることもあるほど、相続争いは相続において無視できない事柄になっています。
相続争いは財産の額や内容にかかわらず起こり得ますし、家族仲が良くても相続の場では争いに発展する可能性もあります。
特に、被相続人の方が過去に離婚や再婚、養子縁組をしていることから、現在の家族と関係の希薄な方が相続人となる可能性がある場合は、その点も踏まえた対策をしなければなりません。
生前に行える相続争い対策としては次のようなものが有効です。
●遺言書を作成して相続分や遺産分割について指定する
●現金など分割しやすい財産の比率が高くなるように資産を組み替え、遺産分割協議で争いが起きにくい資産状況にしておく
●過去の家族の存在について現在の家族に話しておく
負の遺産の対策
相続対象となる財産には、お金などプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含まれます。相続は原則的に、亡くなった方の権利や義務を包括的に相続人が引き継ぐものだからです。
しかし、相続の開始を知ってから3ヶ月以内であれば相続人の地位を捨てる相続放棄や、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐ限定承認という制度が利用できます。相続放棄は単独でできても、限定承認は相続人全員で行う必要があるなど期間以外にも制約が設けられています。
負の遺産が残っていると、それに気づかず、存在が発覚したときには相続開始から3ヶ月を過ぎていて相続放棄も限定承認もできないといったことも起こります。
相続人のためにも、負の遺産があれば、その内容について遺言書などでまとめておくか、事前に共有しておく、あるいは生前に清算しておくべきです。
相続対策が必要な場合とは?
どんな家庭であっても相続争いなどは起こり得ますが、強いて挙げるならば、次のいずれかに当てはまる場合は特に生前の相続対策が重要といえます。
●相続財産が非課税となる範囲を超えている
●現金以外の資産が多い
●相続人となり得る人同士が不仲、疎遠である
●離婚や再婚、養子縁組をしている
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有効かつ優先すべき相続対策を!
相続が発生したときのことを考えると、相続人となる方の負担を減らすための節税対策などだけでなく、家族の在り方が複雑化した現代においては、相続での争いを防ぐための対策も必要となる場合があるでしょう。
また、生前に行える相続対策は具体的なケースによって異なります。どう相続対策をしていくのか悩んだときは、ファイナンシャルプランナーや税理士など相続の専門家に相談してみてください。
執筆者:柘植輝
行政書士