更新日: 2021.09.04 贈与
今後、暦年贈与が廃止される…? そうなった場合の有効な節税対策とは?
仮に廃止されてしまったとして、相続税対策はどのように行っていけばよいのでしょうか。暦年贈与が廃止されてしまった場合について仮定して考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
暦年贈与とは何だろう
そもそも暦年贈与は何かということから話を進めていきましょう。日本においては年間で110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税が発生します。
その仕組みを利用し、毎年110万円以内ずつ贈与し、贈与税が発生しない範囲で将来相続財産の対象となるであろう財産を子や孫などの推定相続人に移していき、相続税を節税していく手法を暦年贈与といいます。
暦年贈与は基本的に誰でも行うことができ、特別な準備やデメリットといった負担や懸念事項について少なく実行できることから、特に王道的な節税対策として広く利用されています。
暦年贈与が廃止されるといわれる理由は? 実際のところ廃止は確実なのか?
暦年贈与の廃止は正式決定されているわけではありません。しかし、廃止の可能性が出てきているのも事実です。
それは、2020年12月に発表された「令和3年度税制改正大綱」にあります。ここに「資産の移転タイミングによる意図的な税負担の回避」を防止するために「暦年贈与を見直す」といった旨の記載があるためです。
そのため来年以降、暦年贈与について現在よりも使い勝手が悪くなったりする可能性は十分に考えられ、暦年贈与が廃止されるといわれるようになっているのです。
ただ、まだいつから廃止と明言されているわけでありませんし、過去の暦年贈与に影響するかも明確ではありません。仮に「令和5年に起こる相続から、暦年贈与の財産は10年前までさかのぼって相続財産に組み込む」となった場合、実質的に過去の暦年贈与まで否定されることになります。
この点が明確になるのはまだまだ先になるため、いずれにせよ今年もしっかり暦年贈与を実行、その上で暦年贈与が廃止された場合の次の手段を考えていくのが現状考えられるベストな相続税対策になります。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
暦年贈与が廃止された場合の節税対策は?
暦年贈与が廃止されたとしても他の節税対策が利用できなくなるわけではありません。暦年贈与以外にも、下記のような特例で節税をすることができます。
・生命保険金や損害保険金の非課税特例を利用するため、相続人が受取人になる保険を契約しておく
・相続税精算課税制度を利用して、将来値上がりが予想される財産を生前贈与しておく
・実子の配偶者や孫を養子にして法定相続人を増やし、相続税の非課税枠を増大させる
・生前にお墓や仏壇などを購入し、財産を非課税財産に変える
・直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税を利用する
・直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税を利用する
上記のように暦年贈与以外にも相続税を節税する方法はたくさんあります。ただ、暦年贈与が廃止となると、他の新制度が導入されたり、既存の制度に改正が入る可能性もあるため、あくまでも現状を基にした参考程度の手法として考えてください。
今後の相続税対策では情報収集が大切
相続を取り巻く税に関する法令は日々変化しており、来年、5年後、10年後といった未来では現在とは有効な相続税対策の内容が異なっている可能性も十分にあります。
特に相続税対策の王道ともいうべき暦年贈与が廃止ないし改正される可能性のある今は常に情報を収集し、暦年贈与に変化があっても慌てず落ち着いて対応できるだけの準備をしておくべき必要があるといえるでしょう。
参考
自民党 令和3年度税制改正大綱
執筆者:柘植輝
行政書士