相続放棄したのに親の借金が残る理由って? 連帯保証債務とは?

配信日: 2021.09.08

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相続放棄したのに親の借金が残る理由って? 連帯保証債務とは?
相続放棄さえしてしまえば親の借金から解放される。そう考えて相続放棄をしても、依然として借金が残るケースがあります。それは、連帯保証債務が存在する場合です。
 
なぜ相続放棄をしたのに借金が残ってしまうのか。相続放棄と連帯保証債務について見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続放棄をしたのに借金が残る理由は?

Aさんは亡くなった父親の連帯保証人となっていました。それもあって、父親が生前に莫大な借金を抱えていたことを知っており、その借金から逃れようとAさんは相続放棄をしました。
 
しかし、相続放棄をしたにもかかわらず、Aさんには債権者から返済の催告が届き、父親の借金を返済することになりました。なぜAさんは相続放棄をしたのに借金を返済しなければならなくなってしまったのでしょうか。
 

相続放棄とは

相続放棄とは、その名のとおり、相続を放棄することです。相続放棄をすると、初めから相続人とはならなかったものと見なされるため、亡くなった方の権利義務の一切を引き継ぐことがなくなるという効果を持っています。
 
つまり、親の財産の相続を放棄すれば、親の預金や土地、家屋などプラスに働く財産の全てを相続できなくなる半面、親の借金、親が他人の保証人となっていた場合はその地位や負債など、マイナスの財産も一切負担する必要がなくなることになるのです。
 
なお、相続放棄は強力な効果を持っており、相続財産に関連する権利者の方に何らかの影響を与えるため、自身に相続があったことを知った日から原則3ヶ月以内に手続きをしなければならないとされています。
 

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連帯保証債務とは

保証人には絶対になってはいけない。そう聞かされている方も多いのではないでしょうか。その保証人よりもさらに重い責任を負うのが連帯保証人というものであり、連帯保証人の負う債務を連帯保証債務といいます。
 
簡単にいうと、通常の保証人は債務者本人が借金を返せなかったりする場合、代わりに返済するなどの責任が発生しますが、例えば債権者からお金を返せといきなり言われても、保証人はまず本人に返すよう言ってくれと拒むことができます(催告の抗弁権)。
 
その後、本人に請求してもダメだったから保証人のあなたが代わりに返してくれと言われた場合でも、本人に返済する資力があり、容易に取り立てができる状況を証明することが可能であれば、本人に催告するようにと拒否することができます(検索の抗弁権)。
 
しかし、連帯保証人となって連帯保証債務を背負っていると、上記で紹介した2つの拒否権のようなものを行使することはできません。要は、連帯保証人とは連帯保証債務を負い、ほぼ債務者本人と同様の立場で責任や債務の返済義務を引き受けるという大変重い地位にあるのです。
 
実務上、保証人というと、ほぼ間違いなく連帯保証人のことを指しています。連帯保証人となったら、債務者本人と同じ条件で自分も借金をしたのと同義であるため、よく「保証人には絶対になるな」といわれるのです。
 

相続放棄をしたのに親の借金が残る理由は連帯保証人としての地位が残るから

ここまで読まれた方には、もはや詳細な説明は不要でしょう。相続放棄をしたのに親の借金が残る理由は、連帯保証債務が残るからです。
 
相続放棄によって放棄できるのは、あくまで相続対象となる親自身の債務者としての責任です。それに対して連帯保証債務は、連帯保証人となったAさん自身の責任であり、それは相続によって得た責任ではありません。連帯保証債務、相続放棄によって放棄できるものでも消滅するものでもありません。
 
従って、親の連帯保証人となっていたAさんは、債務者本人である親の相続を放棄しても連帯保証人としての地位に基づき連帯保証債務からは逃れられず、借金の返済義務が残ったということになるのです。
 

相続放棄は万能ではない

相続放棄は強力な効果はあるものの、万能なものではなく、親の連帯保証人となっていたようなケースでは相続放棄をしても連帯保証債務が存続し、借金を返済しなければならない場合もあります。
 
親の連帯保証人となっていた場合は安易に相続放棄をするのではなく、連帯保証人として借金を返すということを前提に、相続によって得るプラスの財産と連帯保証債務以外の親が持っていた固有の債務について比較し、その上で相続放棄をするかどうか考えるようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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