「遺留分制度」によって遺言者の意思は影響されなくなるって本当?
配信日: 2021.09.24
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
遺留分制度とは
遺留分制度とは、民法に規定されている遺留分のことをいいます。遺留分は亡くなった方の相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人、例えば配偶者や子、父母などに保証されている最低限の相続分になります。
遺留分は遺言や遺産分割よりも優先されるものであり、遺留分を有する人(遺留分権利者)が遺留分を主張すれば、遺産分割の内容や遺言の内容にかかわらず、遺留分権利者は遺留分相当額の金銭の支払いを受けることができます。
遺留分制度によって遺言者の意思が影響されなくなるといわれるのは、この遺留分が遺言など相続の内容に無理やり変更を加えるような点にあるのです。
遺留分制度は遺言者の意思の影響を断ち切るものではない
実際、遺留分によって遺言者の意思が影響されなくなるのでしょうか。確かに遺留分が行使されることによって、遺言者の実現させたい遺産相続が100%実現できなくなるという点ではそうかもしれません。
しかし、遺留分が遺言に与える影響は限定的です。具体的には、遺留分によって影響を受けるのは下記の範囲に、遺留分権利者の法定相続分を乗じた部分に限られるからです。
相続の態様 | 遺留分の割合 |
---|---|
直系尊属のみが相続人である | 相続財産のうち3分の1 |
上記以外 | 相続財産のうち2分の1 |
※筆者作成
また、遺留分は原則金銭での支払いであり、遺言者の「家と土地は長男に継がせたい」といった、特定の物を特定の人に相続させたいという意思の部分にまでは影響を与えません。もちろん、遺留分の主張があっても遺言は依然有効なままであり、無効となったりはしません。
さらに、遺留分は権利者が行使して初めて効果が生じるのであり、遺留分権利者が遺言者の意思を尊重して遺留分を行使しなければ、それはそのまま遺言は全体が有効な遺言として効果を生じます。
そう考えると、遺留分の存在は遺言者の意思に影響を与えるが、遺言者の意思が一切なくなるほどとはいえないでしょう。
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遺言者は遺留分についてどう考えるべきか
遺言者はやはり遺留分について考えて遺言をすべきです。最低限の遺留分すら相続人に遺したくないと考えるには相当に理由のあることでしょう。しかし、遺留分を侵害した遺言は相続争いの原因となり、財産を相続させたいと考える方にかえって不要な負担を強いてしまうことにもなりかねません。
遺言者は極力遺留分を意識して遺言することを基本とし、どうしても遺留分を侵害するような遺言をするのであれば、その理由を遺言書の中に丁寧に記載して相続人たちに理解してもらえるようにしておくなど工夫が必要です。
絶対に遺留分を遺したくない相続人がいる場合
自分の死後、相続人となるであろう方の中に絶対相続させたくない、遺留分すら遺したくない方がいる場合、廃除という手続きをとることで遺留分すら与えない、相続から完全に外れた存在とすることができます。
しかし、廃除は重大な影響を与えるものとなるため簡単には認められません。亡くなった方へ生前虐待をしていたり、著しい侮辱行為があった、著しい非行があるなど到底相続人にできないという感情が認められるだけの重大な理由があると家庭裁判所の認定を受けなければなりません。
実務上廃除が認められることはそう多くなく、認められるのは相当に困難であるのが現実です。ただ、方法の1つとしては存在しています。廃除の詳細については家庭裁判所へご相談ください。
遺留分制度は遺言者の意思を完全に無視するほどのものではない
遺留分制度は遺言者の意思に一定の影響を及ぼすものではありますが、遺言自体を無効としたりするわけではなく、その影響はある程度限定的な範囲にとどまっています。遺言する側としてはやや納得いかない部分もあるかと思いますが、遺留分という制度の存在を知り、それを念頭に置き、遺言をすることが大切になるかと思います。
そうすることで、相続に関して不要な争いを防止したり、争いを最小限とすることができます。遺留分を侵害するような遺言をするよりも、遺留分を意識した遺言をした方が、結果的に財産を遺してあげたい相続人のためになることでしょう。
執筆者:柘植輝
行政書士