更新日: 2023.11.02 遺言書

「ひとりっ子だから大丈夫」は大きな間違い ~相続前後の対策~

「ひとりっ子だから大丈夫」は大きな間違い ~相続前後の対策~
相続が“争族”になることを防ぐためには、事前の対策が重要です。特に遺言書の作成がポイントです。「うちはひとりっ子だから争族の心配はないので遺言書も不要」……これは本当に大丈夫なのでしょうか。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

夫に降りかかった相続問題。その日は突然やってきた

都内在住のAさん夫婦の事例です。
 
夫婦はともに地方出身なので、老親の様子を見に時々帰省しています。Aさんの夫の母親はまだ70代ですが、数年前から認知症になり、父親が自宅で面倒を見ていました。いわゆる老々介護です。
 
次第に認知症の症状が進行していることに加えて、他の内臓疾患もあるので、母親は入院中。父親の体力も落ちているので、介護施設を探すのに苦労しているという話を聞いていました。
 
お父さまが自宅で転倒して入院されたと聞いてから約2週間。「これまで元気だった父親が急逝しました」という突然の訃報が届きました。ずっと入院されていた母親ではなく、父親の死は想定外だったに違いありません。家のことはすべて父親に任せていたので、金庫の番号も分からず、プロに依頼して開けてもらったそうです。
 

遺言書がなかったら遺産分割協議

相続対策の中での認知症は、「判断能力がなくなって作成した遺言書は無効になってしまうので、元気なうちに作っておかないといけない」と考えられることがあります。
 
「物忘れがひどくなってきたので、父に遺言書を作ってもらった」が一例です。しかし実際は、Aさんの場合のような事例も多く、以前税理士に取材をした際に“認知症の相続人がいて、相続が進まない例が増えた”と聞きました。
 
一般的に遺言書がない場合は、相続人間で話し合い、遺産分割協議書を作成します。相続人にはそれぞれの言い分がありますので、協議がうまくいかずにもめることも多く、“争族”になってしまう事例も多いです。
 
そこで、“争族”を防ぐ手だてとして遺言書の作成が重要視されているのです。争うということは、意思能力がはっきりしている証拠。判断能力が低下して協議の場につけない場合は、代理人が必要になります。
 
認知症になる前に任意後見契約を結んでいるなら任意後見、結んでいないなら家庭裁判所に後見開始の申し立てをして法定後見人を選出してもらいます。
 

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ひとりっ子は大変?

Aさん夫婦の事例に戻って見てみましょう。
 
その後Aさんのお母さまは、無事に介護施設に入居することができました。実家に戻る予定がないことから、不動産は売却することに決めていますが、時間はかかりそうです。
 
目下のところ、Aさんの夫の悩みは“実家の固定資産税と母親の介護施設の費用を払っていけるか”だそうです。Aさんは「怖くて遺言書の有無を主人に聞けません」と言っていましたが、順調に進んでいる様子から、父親は遺言書を残していたと想像できます。
 
今回のことがあって、Aさんは不安でいっぱいになったそうです。彼女自身もひとりっ子です。母親はすでに他界し、父親は実家でひとり暮らしです。そのうちに介護施設の入居や相続などがやってきます。
 
きょうだいがいれば、全部をひとりで背負いこむことなく相談することができます。まずは父親の資産を整理して、介護についての希望を聞き取り、その費用をどのように捻出するかを父娘で話す必要があります。
 
金融資産で不足する場合は、不動産の活用も必要です。Aさんのお父さまの認知能力が低下した場合、父親名義の資産を動かすことが難しくなってしまいます。家族信託などを利用することも選択肢です。お父さまが元気なうちに準備することはたくさんありそうです。
 
実は、Aさんの夫は相続の経験者です。「ご主人を頼りに、ご実家でこれから起きるであろうもろもろの案件がスムーズに進むように準備を始めることが肝要」と筆者はアドバイスしました。相続問題は、ひとりで悩むことは避けたいところです。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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