母がタンス預金で「500万円」貯めているのが分かりました。国にバレないかと冷や冷やしているのですが、これって「脱税」になりますか…?
配信日: 2024.03.20
執筆者:沢渡こーじ(さわたり こーじ)
公認会計士
タンス預金は脱税なの?
誤解している人もいますが、タンス預金があるだけでは脱税にはなりません。
タンス預金をしたお金を誰かに贈与した場合は、一定額を超えると贈与税申告・納付が必要になりますが、一定額以上を贈与したにもかかわらず、税務署に何も知らせなかった場合に罰則の対象になります。
今回のケースの場合、母親が500万円をタンス預金していること自体は違法ではありませんし、給与から源泉徴収、または確定申告などで所得税を支払った後の500万円を手元で保管しているのであれば何の税金もかかりませんので、いったんは安心してください。
ただし、その500万円をもらうような場合には、贈与税の申告が必要になります。贈与税の申告期限は、贈与された年の翌年の2月1日から3月15日までです。贈与された人が申告をします。
亡くなった後にタンス預金500万円を取得すると相続税の対象になる
タンス預金をしていた人が亡くなった場合に、そのお金は遺産として相続税の対象になります。相続税の申告をする際に、タンス預金の金額を遺産に入れて申告しないと罰則の対象になります。
相続税の申告期限は被相続人(亡くなった人)の死亡の日の翌日から10ヶ月になります。
遺産がタンス預金500万円だけなら相続税はかかりません
亡くなった人にタンス預金のお金がある場合、税務署に知らせる必要があると書きましたが、申告する必要がないケースもあります。
相続税には基礎控除という制度があり、課税される遺産の総額から以下の金額を引いた残りに対して相続税がかかってきます。
3000万円+600万円×法定相続人の数
もし控除された残りの金額が0であれば、相続税の申告は不要になります。今回のケースの場合、母親の財産がタンス預金500万円だけであれば、相続税の申告をする必要はありません。
ただし、例えば亡くなった人が生命保険に入っている場合、その保険金も相続税の対象になりますし、株や土地を持っていた場合は複雑な計算が必要になる場合もあります。タンス預金以外に財産がある場合は自己判断せず、税理士に相談することをお勧めします。
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相続税を減らす方法
多額の遺産がある場合、相続税はかなりの金額になります。そこで、相続税を減らすためにできる対策を紹介します。
年間110万円まで贈与する
贈与税には基礎控除があります。
1月1日から12月31日までの1年間で110万円までの贈与であれば税金がかからず、贈与税の申告も必要ありません。そのため、元気なうちに毎年110万円以内で子どもや孫にお金を渡しておくことで、税金がかからずにお金を渡すことができます。
ただし、毎年同じ日に同じ金額を贈与すると、毎年一定の金額を贈与することが決まっている「定期贈与」とみなされる危険がありますので注意してください。例えば、500万円を毎年100万円ずつに分けて毎年贈与する取り決めを行い贈与した場合は定期贈与になります。
定期贈与となった場合、500万円の定期金に関する「権利の贈与」を受けたとして、合計500万円に対して一時に課税されてしまいます。そうなると基礎控除110万円の額を超えてしまい、贈与税になってしまうのです。
定期贈与とみなされないようにするには、毎年贈与する度に贈与契約書を作成するようにしましょう。贈与する金額や時期も、できれば毎年変えたほうがいいといえます。
贈与するなら早めに始める
贈与による相続税対策は、早めに始めるのがポイントです。
なぜかというと、贈与した人が死亡した場合、死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間に贈与した金額は、相続した遺産の金額に含められて相続税を計算することになる、というルールがあるためです。これは贈与した額が1年で110万円以下であっても、相続税の対象になってしまうということを意味します。
例えば2024年の12月31日に100万円の贈与をした人が、2031年の12月31日までに亡くなってしまった場合、贈与した100万円は相続税の対象に含まれることになります。
相続税対策のための贈与は、贈与する人が元気なうちに、できるだけ早くから始めるといいでしょう。
まとめ
所得税などを納付した後にタンス預金をすることは違法にはなりませんが、そのお金を贈与したり相続したりする場合は税務署に申告しなければいけません。ただし、基礎控除の範囲内であれば申告不要のため、金額を確認しましょう。
とはいえ、防犯の観点からするとタンス預金はリスクがあるため、銀行などに預け入れるほうがいいでしょう。
出典
国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士