更新日: 2024.04.22 その他相続

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続は?様々な相続のケースをご紹介

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続は?様々な相続のケースをご紹介
相続は、家族構成や個人の状況によって複雑な問題を引き起こす可能性があります。特に、配偶者なし・子なし・親なしの場合、兄弟姉妹が相続人になったり、そもそも相続人がいない(相続人不存在)という状況もあります。
 
この記事では、様々な相続シナリオと、それらに対処するための基本的な手順、必要書類、専門家への相談のポイントに加えて、遺言書の作成や公益法人への寄付など、財産を望む人物や団体に効果的に分配するための選択肢について詳しく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

配偶者なしで相続が発生した場合の基本的な流れ

相続が発生すると、故人の財産は法律に定められた相続人に引き継がれます。
 
配偶者がいない場合、相続人は子ども、親、兄弟姉妹といった順番で決まります。この記事では、主に「配偶者がいない場合」の相続手続きの基本的な流れ、法定相続人とその相続分、遺産分割方法、そして専門家への相談するポイントについて解説します。
 

相続人の順位

相続が発生すると、まずは故人の財産を誰がどのように引き継ぐかが問題になります。
 
配偶者がいない場合、子どもが最優先の相続人となります(第一順位)。子どもがいない場合は、故人の親が相続人となり(第二順位)、親もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります(第三順位)。
 
この順序は民法で定められており、この順番に従って法定相続人が決まります。
 

代襲相続

第一順位の相続において、被相続人(亡くなった人)よりも先に子が亡くなっているが、その子の子(被相続人の孫)がいる場合は、その人(孫)が相続人となります。これを「代襲相続」といいます。
 
また、第三順位の兄弟姉妹においても同様に、相続予定だった兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていて、その子がいた場合にはその人(被相続人の甥・姪)が代襲相続します。
 
本記事では代襲相続のパターンは割愛しますが、実際には起こり得る内容ですので、留意してください。
 

相続手続きで準備すべき必要書類と提出先

葬儀がひと段落したら、まず相続手続きをしなければと考える方が多いと思われますが、相続書類はどこに提出するのでしょうか?
 
戸籍は市町村役場で取得することができるなど、相続書類を集める場所はイメージがつきますが、提出先はイメージしにくいかもしれません。これらの相続書類は、手続き内容によって様々です。
 
まず、相続に必要な書類は「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」、そして「相続人全員の戸籍抄本と印鑑証明書」、「遺産分割協議書」などです。
 
戸籍謄本や印鑑証明書は、本籍地・住所地の市町村役場で取得することができます。そして遺産分割協議書は、被相続人の財産を誰がどれだけ相続するかを記載する書類で、相続人が自分達で作成したり、弁護士・司法書士などに依頼して作成してもらうこともあります。
 
そして、これらの相続に関する書類は、相続手続き(名義変更)を行うための基本的な書類となり、手続きの内容によって提出先は変わります。主な手続きと提出先は次の通りです。
 
・法務局:土地建物の名義変更(相続登記)の際に、相続書類を提出します。なお、令和6年4月1日より相続登記が義務化されますので、相続があったことを知ってから3年以内に相続登記を行わなければなりません。なお、提出する法務局は名義変更する不動産を管轄する法務局です。
 
・税務署:相続税申告の添付書類として、相続に関する書類の提出が必要です。なお、相続税の申告が必要かどうかは被相続人の財産が、次の基礎控除を超えるかどうかで判断します。
 

相続税の基礎控除額=3000万円+(相続人の数×600万円)

 
例)相続人が3人の場合の基礎控除額は4800万円となり、相続財産が4800万円を超える場合には相続税の申告が必要となります。
 

3000万円+(3人×600万円)=4800万円

 
相続税の申告は、被相続人の住所地を管轄する税務署に行います。
 
・金融機関:預貯金の名義変更をする場合には、該当の金融機関へ戸籍一式、遺産分割協議書、印鑑証明書を提出します。また金融機関によっては、その金融機関独自の追加書類が必要になる場合があります。
 
・年金事務所:年金の受給停止、未受領の年金の受け取りなどの手続きのため、年金事務所での手続きも必要です。受給停止には被相続人の死亡の分かる戸籍と手続きをする人の関係が分かれば大丈夫ですが、未受領の年金は相続財産となりますので、遺産分割協議書・戸籍一式が必要となります。
 
・信販会社など:クレジットカードについては、被相続人の死亡の分かる戸籍を提出してカードを停止し、残債務があれば相続人として支払うことになります。
 
・デジタル遺産:SNSアカウントの停止や、仮想通貨の相続、オンラインサービス(サブスクリプション)の停止などの手続きにも戸籍等が必要となります。しかし、デジタル遺産については、運営会社が相続のノウハウを持っていなかったり、そもそも相続を想定していないこともあり、手続きが困難な場合もあります。
 

相続に関する専門家へ相談する際のポイント

弁護士や司法書士といった、相続に関する専門家へ相談する際のポイントを紹介します。
 
専門家へ相談する際は、既に取得している戸籍、簡単な家系図、相続財産の一覧などを作成しておくと相談がスムーズに進みます。また、具体的な疑問点や解決したい課題を明確にしておくことで、より有意義な相談が可能になります。
 
また、近年は、初回相談無料の事務所も増えておりますので、そういった事務所に相談するとコスト削減にもなります。
 

配偶者なしの相続で考えられるケース

配偶者がいない場合の相続は、親や兄弟姉妹が中心となります。遺言書が存在するかどうかによっても手続きは異なります。
 
ここでは、配偶者なしの様々なケースを簡単に解説し、相続人への影響や法定相続分の計算方法について説明します。
 

配偶者なしの相続で考えられるケース1:直系卑属(子)への相続(第一順位)

配偶者がいたが離婚や死別しており、子がいる場合には、その子が相続人となります。また、法定相続分は同順位の子は同じなので、子が2人いればそれぞれ2分の1ずつ、子が3人いればそれぞれ3分の1ずつが法定相続分となります。
 
被相続人と子の関係で考えますので、前の配偶者の子、死別した配偶者の子、養子といった区別はなく、子の間で法定相続分に差はありません。
 

配偶者なしの相続で考えられるケース2:直系尊属への相続(第二順位)

被相続人に配偶者も子もいない場合、被相続人の親が存命ならば親が相続人となります。父・母ともに存命の場合はそれぞれ2分の1ずつ、父のみもしくは母のみが存命の場合は存命の方の親が全ての財産を相続します。
 
第二順位の場合も被相続人と親との関係で判断しますので、両親が離婚していても法定相続分に影響はなく、父と母が存命ならばそれぞれ2分の1ずつ相続します。

配偶者なしの相続で考えられるケース3:兄弟姉妹への相続(第三順位)

被相続人に配偶者、子ども、両親がいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。父母を同じくする兄弟姉妹同士では法定相続分が均等ですが、父もしくは母のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母を同じくする兄弟姉妹の半分となります。

配偶者なしの相続で考えられるケース4:遺言書が存在する場合

遺言書が存在し、遺産分割方法の指定がなされている場合、被相続人の意思が優先され、遺言書に従って財産が分割されます。また、遺言書を作成すると、法定相続人でない者にも財産を遺贈できます。
 
また、遺言書で遺産分割方法の指定をした場合、第一順位(子)・第二順位(親)については法定相続分の2分の1の遺留分が認められていますので、遺言書を作成する場合には注意が必要です。なお、第三順位(兄弟姉妹)には遺留分はありません。
 

【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続

この場合、相続人は兄弟姉妹に限られます。法定相続分の計算や兄弟姉妹間での相続がどのように進行するかについて詳しく解説します。また、この状況での相続の特性と注意点についても解説します。
 

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続分計算方法

兄弟姉妹間での相続分の計算方法は既に紹介した通り、父母が同じ場合には全員が同等の権利を持ち、父もしくは母のみが同じ場合には、父母が同じ兄弟姉妹の2分の1が法定相続分となります。被相続人が4人兄弟で、相続人3人との関係によって法定相続分は次のように変わります。
 

(パターン1)

被相続人:4人兄弟の長男(父A、母B)
相続人 :弟3人は全て父母が同じ

 
図表1

法定相続分
次男 A B 3分の1
三男 A B 3分の1
四男 A B 3分の1

※筆者作成
 

(パターン2)

被相続人:4人兄弟の長男(父A、母B)
相続人 :次男と三男は父母が同じで、四男は後妻(母C)と父Aの子

 
図表2

法定相続分
次男 A B 5分の2
三男 A B 5分の2
四男 A C 5分の1(次男、三男の半分)

※筆者作成
 

(パターン3)

被相続人:4人兄弟の長男(父A、母B)
相続人 :弟3人は父が同じで、後妻(母C)と父Aの子

 
図表3

法定相続分
次男 A C 3分の1
三男 A C 3分の1
四男 A C 3分の1

※筆者作成
 
パターン2は、次男・三男が被相続人と父母が同じで、四男は被相続人と父のみが同じなので、次男・三男の半分が法定相続分となり、比率は次男:三男:四男=2:2:1となります。
 
パターン3では、次男・三男・四男の3人ともが被相続人とは母が違っていますが、父母を同じにする兄弟姉妹がいないので、この3人が均等に相続することになるので、結局法定相続分は3分の1ずつとなります。
 

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合で、兄弟以外に相続させる方法

被相続人の相続人が兄弟姉妹(第三順位)の状態で、兄弟以外の人物に財産を相続させたい場合には遺言書の作成が必要です。遺言書の作成方法、寄付や公益法人への遺贈など、兄弟以外へ財産を相続させる様々な方法を紹介します。
 

配偶者なし・子なし・親なしで、兄弟以外に相続させる方法1:遺言書による相続人以外への遺贈

兄弟姉妹という第三順位の相続人がいる場合、原則、相続財産は兄弟姉妹が全て相続します。しかし、ご自身の希望で相続人以外の人に財産を残したいという場合には、遺言書を作成して「遺贈」することができます。
 
遺贈は民法で認められた法律行為で、自筆証書遺言や公正証書遺言に遺贈する財産と受遺者(遺贈を受ける人)を記載しておくことで、具体的な財産の分配を指定することができます。
 
このような遺贈を行う場合、相続を期待していた兄弟姉妹と紛争になるおそれがあるので、通常は弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定し、遺言内容を確実に執行してもらうように準備します。
 

配偶者なし・子なし・親なしで、兄弟以外に相続させる方法2:寄付や公益法人への遺贈

ご自身の財産を死後、特定の団体に寄付したり、公益法人に遺贈することも可能です。
 
ご自身が財産を社会貢献のために使いたい場合、寄付や公益法人へ遺贈する場合があります。ペットが好きな方が補助犬の育成団体に寄付したり、自分の死後に飼っていたペットを飼育してもらうために負担付き遺贈をすることもあります。
 
こういった遺贈は、被相続人の意思に沿った形で財産が有効活用されるとともに、相続税の軽減効果も期待できます。
 

配偶者なし・子なし・親なしで、兄弟以外に相続させる方法3:兄弟姉妹の遺留分

兄弟姉妹(第三順位)が相続人の場合、遺留分はありません。遺贈で全て公益法人へ寄付したり、血縁のない方へ遺贈することも可能です。
 

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合、相続のために準備しておくべきこと

相続に備えて準備しておくべきことは多岐にわたります。
 
遺言書の作成や保管、相続計画の立案、そして家族や関係者とのコミュニケーションの方法について詳細に説明します。これらの準備は、相続手続きをスムーズにし、遺贈を確実に実現するために不可欠です。
 

相続までに準備すべきこと1:遺言書の作成と保管

兄弟姉妹が相続人になる場合、被相続人と同世代の方が相続人になるので、相続人も高齢になることが考えられます。また、それぞれが家庭を持っていて兄弟姉妹だけで遺産分割協議を行うことが難しかったり、紛争にならないまでも一堂に集まることが難しく、長期化することが考えられます。
 
ご自身の相続手続きが長期化しないためにも、兄弟姉妹が相続人の場合には、遺言書を作成して遺産分割方法の指定をすることが大切です。そして、遺言書の作成は公証人役場で作成し、公正証書遺言を残し、また保管についても安全な場所や信頼できる人物に預けることで、意図した通りの相続が実現されます。
 

相続までに準備すべきこと2:余生と相続手続きのプランニング

遺言書を作成する際に、ご自身に残された余生の過ごし方を考えた上で、誰にどれだけ財産を相続させるか、そして相続税に関する事前の対策もこの段階で検討しておくべきです。
 
また、葬儀やお墓の世話などを誰に依頼するかも計画しておき、兄弟姉妹や親類に依頼が難しい場合は、弁護士や司法書士に死後の手続きを依頼することも検討しましょう。
 

相続までに準備すべきこと3:家族や関係者とのコミュニケーション

相続に関する意向や計画を家族や関係者に伝えることは、相続手続きを円滑に進める上で非常に重要です。特に兄弟姉妹が相続人になる場合は、兄弟やその他の親族とのコミュニケーションを通じて、相続の意向を共有し、誤解やトラブルを避けるための努力が必要になります。
 
もしも、兄弟姉妹以外に財産を残したい場合は、兄弟姉妹にその意図と理由をしっかりと説明し、遺言書の内容を明確にしておくことが大切です。兄弟姉妹に遺留分がないとはいえ、相続を期待していた兄弟姉妹と受遺者がトラブルになる可能性もありますので、受遺者のためにも事前に説明をしておきましょう。
 

相続人がいない(配偶者なし・子なし・親なし・兄弟なし)場合の相続はどうなる?

相続人がいない場合、相続財産法人が設立され、相続財産を精算した上で残った財産は国に帰属します。しかし、この手続きは自動的に行われるわけではありません。ここでは、相続人がいない場合の法的な手続きと、財産が国に移るまでのプロセスについて解説します。
 

相続財産法人の設立と相続財産の精算

相続人が誰もいない、相続人不存在という状況の場合、被相続人名義の財産について抵当権や借地権を設定している、被相続人へ貸し付けを行っていた、という場合に相続人がいない状況では不動産の売却や返済を行うこともできません。
 
そういった場合には、利害関係者から相続財産法人の設立に伴う、相続財産管理人の選任申立てを行うことができます。
 
家庭裁判所で選任された相続財産管理人は、相続財産を整理して換価、負債の精算を行います。この段階で、被相続人と生計を同一にして療養看護を行ったもの(内縁の妻など)、特別縁故者への分配も行われます。これらの精算をした後に、残余財産があれば国庫へ帰属することとなります。
 
また、残余財産の中で被相続人が共有していた不動産があった場合は、民法の規定によりその不動産の被相続人の持分は他の共有者の持分となります。
 

相続財産が国庫に入らないようにする方法

相続人がいない場合は、前述のように精算の上、残余財産は国庫に帰属することとなります。しかし、生前に遺言書を作成して特定の寄付先や公益目的での使用を指定していれば、遺言書の内容に従って財産の承継が行われます。
 

遺言書の重要性

相続人がいない(配偶者なし・子なし・親なし・兄弟なし)場合は、必ず遺言書を作成しておかなければなりません。
 
遺言書がなければ前述のように精算され、残余財産は国庫に帰属することとなります。しかし、遺言書を作成することでご自身が築いた大切な財産を、最期まで自身の世話をしてもらう方や、大切な親類、一緒に寄り添ってくれたペットに残したり、公益法人への寄付や特定の目的での使用など、社会貢献に役立てることもできます。
大切な財産を有効活用したい方は、遺言書の作成を検討しましょう。
 

相続人がいない(配偶者なし・子なし・親なし・兄弟なし)場合に準備しておくべきこと

相続人がいない場合には、ご自身の最期の時まで、そしてその後の葬儀・遺産整理まで準備をしておく必要があります。
 
その手続きは、必要に応じて専門家との死後までのプランニング、信託契約、財産管理契約、任意後見契約、尊厳死宣言書・公正証書遺言の作成、死後事務委任契約、遺言執行契約、受遺者とのコミュニケーション、と多岐にわたります。各プロセスについて解説します。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと1:死後までのプランニング

相続人がいない場合、ご自身の意思を反映させた余生と「死後のプランニングが必須」です。
 
これには財産管理や遺贈、葬儀の方法など、余生から死後に関わる一連の事項を計画し、書面として残すことが含まれます。相続人や面倒をみてくれる親類などがいない場合には、ご自身で老後の介護などの準備をしなければなりません。
 
認知症になった場合や、財産管理が難しくなった時のために、弁護士や司法書士といった相続の専門家と相談しながら、具体的なプランを立て、それを公正証書として残しておくことが重要です。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと2:財産管理契約の締結

「財産管理契約」とは、弁護士などに自分の財産管理をしてもらう契約です。
 
この契約は認知症になっていない健康な時の財産管理を依頼するもので、依頼しておくと税金や各種料金の支払い、収入・支出の管理を代行してもらうことができます。身近に相談する親類がいない場合は、詐欺や悪質商法を防止する意味も込めて、財産管理契約をおすすめします。
 
そして、判断能力が落ちたり、認知症になってしまった場合は、後見へと移行します。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと3:任意後見契約の締結

「任意後見契約」とは、ご自身が元気な時に、認知症や判断能力が落ちてしまった後のことを、信頼できる人物へ依頼する契約で、この契約をしておけば、後々、信頼できる人物に事務処理を委ねることができます。
 
これに対して、認知症になった後に家庭裁判所が後見人を選任する制度を、法定後見制度といいますが、この場合には誰が後見人になるか分かりません。
 
認知症になってしまった後も、ご自身が知っている信用のおける人に後見人になってもらいたい場合は、この任意後見契約を締結しておきましょう。当然ながら、後見人候補者の同意も必要ですので、依頼内容を交渉し、報酬も事前に決めておくことになります。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと4:信託契約の締結

賃料収入が入る共同住宅などを所有している方は、「信託契約」を利用することで、財産の管理だけでなく運用も依頼することができます。
 
現在の後見制度では財産管理はできても、財産の運用などは原則禁止されておりますので、共同住宅など運用が必要な財産を持っている方は、信託契約の利用も検討しましょう。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと5:尊厳死宣言書の作成

尊厳死宣言書とは、望まない延命治療を受けないという宣言書で、通常は公正証書で作成します。
 
何かの事故や病気で延命治療をする時、本人に意識がなく判断ができない場合には、家族や推定相続人が判断します。しかし、相続人不存在の場合には判断を下せる人がいません。
 
後見人や財産管理人も、あくまで財産に関する判断しかできませんので、関わることができません。しかし、尊厳死宣言書があれば、1つの判断材料となります。
(※現状、公正証書で作成した尊厳死宣言書でも、法的拘束力はなく、医療現場での判断により必ずしも尊厳死が選択されるわけではありません)
 

相続人がいない場合に準備すべきこと6:公正証書遺言の作成

相続人不存在の場合は、遺言書で自分の財産をどのように分配するかを明確に表明することが必要です。遺言書は「公正証書」で作成し、遺言執行者に保管と死後の執行を依頼します。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと7:遺言執行契約

「遺言執行契約」とは、作成した遺言書を実際に執行してもらう弁護士などと契約することです。
 
遺言執行者に与える権限、報酬、執行の範囲を決めた遺言執行契約を結ぶことで、遺言に基づく財産の分配や手続きを専門家に委ねることができます。この遺言執行契約があれば、遺言の内容が適切に実行され、財産が意図した通りに利用されることが担保されます。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと8:死後事務委任契約

ご自身が亡くなった時に死亡届の提出、葬儀の手配、葬儀の執り行い、埋葬について専門家に依頼する契約を「死後事務委任契約」といいます。
 
通常、委任契約は一方の死亡により終了しますが、死後事務委任契約を結ぶことで、死後の葬儀の手配や執り行い、埋葬までを信頼できる人物や専門家に任せることができます。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと9:受遺者とのコミュニケーション

知人や特定の団体に財産を遺贈する場合は、生前にその意思を必ず伝えてください。個人が受け取る場合、財産をあげれば何でも喜ぶかといえばそうではなく、迷惑に感じたり、どんなに価値のあるものでも不動産を持ちたくない方など、価値観は様々です。
 
個人に遺贈する場合は、その方に託したい理由や、意図を伝えた上で、相手の承諾をしっかりと確認しましょう。
 

相続人がいない場合に準備すべきこと10:公益法人への寄付計画

相続人がいない場合、ご自身の財産を公益法人へ寄付することで、社会貢献を図ることができます。事前に寄付を希望する公益法人を選定し、遺言書にその旨を記載しておくことが重要です。
 
寄付の計画には、寄付先の法人との事前の相談や、寄付に関する法律や税制の理解も必要となります。
 

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続まとめ

配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの場合、兄弟姉妹(第三順位)が相続人となります。
 
しかし、遺言書がある場合には被相続人の意思に基づき、遺言書の内容に従って財産が分配されます。遺言書を通じて、兄弟姉妹以外の人物や団体に財産を遺贈することも可能です。これには、寄付や公益法人への遺贈も含まれます。
 
遺言書の作成は、相続人とのトラブルを避けるためにも、専門家のアドバイスを受けた上で、公正証書で作成しましょう。
 
遺産分割は兄弟姉妹(第三順位)で話し合ってくれれば良いという場合でも、被相続人と同世代のことが多く、相続人が一堂に集まることが難しかったり、認知症や判断能力の衰えで遺産分割協議がまとまらないだけでなく、長期化するおそれもあります。そのような事態を避けるためにも、公正証書遺言を残しておくことが必要です。
 
また第三順位の相続では特に、専門家への依頼と事前の準備、入念なプランニングが必要です。遺言書の作成だけでなく、余生の過ごし方、認知症になった場合の対処としての任意後見契約、相続計画の立案、そして親族や関係者とのコミュニケーションを取ることは、トラブルを避け、スムーズな相続手続きを実現するために不可欠です。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A
財務省 親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?
e-govポータル 明治二十九年法律第八十九号 民法
日本公証人連合会Q3. 「尊厳死宣言公正証書」について、説明してください。
公益財団法人日本補助犬協会 遺贈(遺産を寄付する)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集