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更新日: 2024.05.16 その他相続

【不動産鑑定士監修】店舗兼用住宅とは? 間取りのポイントや建築費用、注意点を解説!

【不動産鑑定士監修】店舗兼用住宅とは? 間取りのポイントや建築費用、注意点を解説!
事業を営んでいる人やこれから事業をスタートさせようとしている人が、家を建てる際の選択肢として、店舗兼用住宅があります。
 
住居スペースと事業スペースが同じ建物内にある店舗兼用住宅であれば、日常生活と仕事の両立しやすさや効率の良さを感じる人も多いと思いますが、一般住宅にはない難しさもあります。
 
家を建てる際には、資金計画から間取り、購入後の維持費まで、さまざまなことを検討するなかで、事業用の建物を兼ねる住宅には、次のように分かりにくい点も多いと思います。
 


・店舗兼用住宅の資金計画で住宅ローンや住宅ローン控除は使えるの?
・事業用は固定資産税が高いと聞くけど、店舗兼用住宅はどうなの?
・事業の経費はどのように計上すればいいの?




 
この記事では、店舗兼用住宅を建てる前の資金計画や間取りから建てたあとの維持管理費や経費について解説します。店舗兼用住宅のメリット、デメリットも分かりますので、是非最後までご一読ください。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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監修:山口 敦子(やまぐち あつこ) / 株式会社リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン/コンサルタント

■保有資格
公認会計士/不動産鑑定士/宅地建物取引士/不動産証券化マスター

外資系コンサルティング会社であるリソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン㈱のコンサルタント。大学卒業後、公認会計士試験に合格し、大手監査法人で会計監査業務および内部統制監査業務を経験。その後、不動産鑑定士資格を取得し、外資系不動産会社や日系金融機関にて不動産鑑定・不動産アセットマネジメント業務に従事。2023年よりフリーランスコンサルタントとして、会計および不動産に関する幅広い業務に日々奮闘中。

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店舗兼用住宅とは?

店舗兼用住宅は、1つの建物内に店舗部分と住居部分が併存する建物です。「店舗兼用住宅」と似たものに「店舗併用住宅」がありますが、2つは建築基準法上の取扱いが異なり、建築可能な地域なども変わります。

店舗兼用住宅は、建物内で店舗部分と住居部分が行き来できる構造になっている一方、店舗併用住宅は、店舗部分と住居部分が完全に独立している建物です。この記事では、店舗兼用住宅について解説します。

店舗兼用住宅が建てられる地域と条件

建物を建てるとき、建築基準法が定める用途地域によって建築可能な面積や用途などに制限があります。

用途地域とは、都市計画法に基づき「住居系」「商業系」「工業系」の用途に応じて区分された13の地域のことで、良好な居住環境を保護したり、事業や工業の利便性を促進したりするために、地域ごとに建築可能な建物を制限するものです。

店舗兼用住宅は、工業専用地域以外の地域で建てることができますが、用途地域によって建築可能な面積や提供できる事業・サービス内容に違いがあります。

店舗兼用住宅が建てられる条件

建物の建築制限が最も厳しい第一種低層住居専用地域では、次のような条件を満たす店舗兼用住宅のみ建築可能です(建築基準法48条・建築基準法施行令130条の3)。

・住居部分の面積が延床面積の2分の1以上
・店舗部分の床面積が50平方メートル以下
・建物の用途が日用品販売や食堂、学習塾など一定の用途に限られたもの

第一種低層住居専用地域は、低層住宅中心の良好な住宅地の形成を目的とする用途地域ですので、建築可能な店舗兼用住宅の条件も厳しくなっています。

その他の用途地域も含め、どういった建物がどれくらいの広さで建築可能なのかをしっかりと確認の上、土地探しや建物のプランニングを進めてください。

店舗兼用住宅の間取りのポイント

店舗兼用住宅では、生活スペースと業務スペースという用途が異なる空間が併存しますので、間取りを考える上でも注意しなければならないポイントがあります。

店舗兼用住宅の間取りのポイント1:店舗部分は1階が原則

店舗部分は1階部分に配置することで、外からも見えやすくなり、集客上もプラスになります。店舗への入りやすさも1階と2階以上では、大きく異なります。業態にもよりますが、集客面や顧客の利便性を考えると店舗部分を1階に配置することが原則といえます。

1階部分に店舗と住居を配置するプランも考えられますが、2階に住居部分があったほうが日常生活のなかで店舗からの音や声などが気になりにくいですし、プライベートと仕事を分けやすいでしょう。

店舗兼用住宅の間取りのポイント2:住居の生活動線と店舗の動線を分ける

住居部分と店舗部分のエントランスを分けるなど、動線を分けて考えることが大切です。

日常生活のなかでの家事動線や外から帰宅する際の動線と店舗部分での仕事や顧客の動線が、それぞれどのようになるのかをイメージしながら間取りを考える必要があります。建てる用途地域によって、住居部分と店舗部分を行き来できるようにする必要があるなか、普段の生活や事業を営むにあたって支障のない動線設計を考えましょう。

店舗兼用住宅の間取りのポイント3:駐車場や駐輪場等のスペースを確保

業態や商圏の大きさに応じて、駐車場や駐輪場スペースの確保も必要となるでしょう。

集客を考えると、駅から離れている立地であれば、車や自転車での来店を考える必要がありますし、仕入れが多い業態であれば、荷物や商品の搬入スペースを確保したほうがよい場合もあります。

ただし、駐車場などのスペースを確保するためには、それだけの広さの確保や建物の面積、固定資産税への影響なども考える必要があります。近隣の月極駐車場やコインパーキングとの提携なども選択肢としながら、集客面や事業経費を踏まえた判断が求められます。

店舗兼用住宅の間取りのポイント4:店舗の入口はバリアフリーにする

ターゲットにしている顧客層に合わせて、店舗の入口や店舗内をバリアフリーにすることで、ベビーカーや車いすのお客様が入りやすくなり、子どもや高齢者の方の転倒事故なども防ぎやすくなります。

店内のトイレを利用するときや、お店で購入した商品を駐車場までカートで運ぶ必要がある場合なども、バリアフリーのほうが移動しやすくなります。高齢者の顧客の来店が多く見込まれるのであれば、スロープや手すりなどにも配慮すべきでしょう。

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店舗兼用住宅の建築費

一般の住宅とは異なる店舗兼用住宅の建築費は、どれくらいかかるものなのでしょうか。

一般住宅と店舗兼用住宅の建築費の違い

業態によって違いはありますが、一般の住宅との違いが出やすい点として次のようなことが考えられます。

・店舗経営に必要な内装や設備費がかかる
・広い空間を確保するための工法(鉄骨やRC造など)
・道路に面して広い間口を確保
・天井高を高くする
・水回りの設備や配管工事が増える

店舗の内装や設備にこだわればそれだけコストはかかりますし、店内を広く使うために無柱の広い空間にしようとすれば、工法によって建築単価も変わります。

また、天井高を確保しようと思えば、それだけ階高を上げる必要がありますので、外壁面積も増え建築費にも影響するでしょう。

構造別の建築単価と建築費シミュレーション

図表1は、構造別の工事費用(全国平均)をまとめたものです。

図表1

構造 坪単価(小数点以下は切捨て)
木造 58万円/坪
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 87万円/坪
鉄筋コンクリート(RC)造 91万円/坪
鉄骨造 89万円/坪

※国税庁 地域別・構造別の工事費用表(1平方メートル当たり)【令和5年分用】を基に作成

店舗兼用住宅の建築費用を大きく分けると次のようになります。

(1)建物本体工事
基礎工事から躯体、内装・外装工事、設備設置費、設計料など

(2)付帯工事費
給排水管等の引込工事から照明やエアコンの工事、駐車場や門扉などの外構工事

(3)諸費用
工事請負契約や住宅ローンの印紙税、登記関連費用、住宅ローン事務手数料、消費税(建物部分)、火災保険料、地鎮祭や上棟式、引越し費用等

(4)(業態によって追加でかかる)設備費用など
リースする場合もありますが、購入する場合は、飲食店であれば厨房設備や機械、家具類等、美容院であればスタイリングチェアやシャンプー台などの設備や機械類費用

(1)~(4)に沿って、例えば、鉄骨造で50坪の店舗(飲食店)兼住宅の建築費をシミュレーションすると、次のようになります。(※鉄骨造の建築坪単価を89万円とします。)

●初めて利用する方
(1)本体工事費(建築費用の70%想定)
89万円/坪×50坪=4450万円
(2)付帯工事費(建築費用の20%想定)
約1271万円
(3)諸費用(建築費用の10%想定)
約635万円
(4)店舗部分にかかる設備や内装等の費用
約300万円想定

(1)~(4)合計:6656万円

建築面積や業態だけでなく、依頼するハウスメーカーや工法によって建築費用は大きく変わりますので、最初に資金計画をしっかりと考えることや、見積もりを比較し計画的に考えることが大切です。

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店舗兼用住宅で住宅ローンは借りられる?

住宅ローンは、事業用ローンと比べ低金利で借入できるメリットがありますが、店舗兼用住宅の場合、一般住宅と同様に住宅ローンを利用できるのでしょうか。

店舗兼用住宅でも借りられる住宅ローンもある

住宅ローンは住居用の不動産の新築、購入等で利用できる融資であり、目的の異なる事業用の建物については利用することができません。

そのため、住居部分については住宅ローンを利用し、店舗部分については、自己資金を準備することが難しければ、事業用ローンなどで融資を受ける必要があります。

例えば、フラット35では、以下の条件を満たすことで「住宅部分」の建築費が借入の対象となります。

・住宅部分の床面積が建物全体の2分の1以上である
・店舗等の部分は申込本人または同居者が使用するものである
・住宅部分と店舗等の部分との間が壁、建具などで区画されており、原則として行き来できること
・住宅部分と店舗等の部分を1つの建物として登記できること

ただし、一部の金融機関では店舗部分についても融資対象となるものがあります。例えば、住信SBIネット銀行では、以下の条件を満たすことで建物全体の資金について、住宅ローン融資の対象となります(2024年2月時点)。

・店舗等の部分を除く居住部分の床面積が、建物全体の2分の1以上である
・店舗等の部分が自己の使用であること

このように金融機関によっては、住宅ローンの審査を通過する必要がありますが、一定の条件のもと店舗兼用住宅であっても借入ができる場合もあります。

住宅ローンと事業用ローンでは金利水準も、審査基準も異なります。自己資金を何に使うかなど、資金計画には注意して進めてください。

店舗兼用住宅で住宅ローン控除は利用できる?

では、店舗兼用住宅の建築資金に住宅ローンを活用できる場合、住宅ローン控除を利用できるのでしょうか。

住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用して住宅の新築や取得、増改築する際に、一定の条件を満たすことで、年末時点の住宅ローン借入残高の0.7%を上限として、所得税あるいは住民税の一部から控除できる制度です。

結論からいいますと、居住用部分については、住宅ローン控除共通の要件を満たしていることを前提に、次の要件を両方満たすことで住宅ローン控除を活用できます。

・住宅用の居住面積が50平方メートル以上あること(登記上の面積)
・床面積の2分の1以上が居住用の面積であること

ただし、住宅ローン控除の適用を受けられるのは「居住用部分に関してのみ」です。そのため、住宅ローン控除の対象となる年末時点の借入残高は、土地、建物それぞれについて、全体に対する居住部分の占める割合から求めます。

借入金額全体が住宅ローン控除の対象となるわけではない点に注意しましょう。

店舗兼用住宅の税金関連

次に、店舗兼用住宅を建てたときの税金関係について解説します。

事業を行う店舗兼用住宅では、一般住宅で受けられる税金の優遇について違いがあります。

店舗兼用住宅の固定資産税

土地や建物を保有すると、固定資産税・都市計画税を納付する必要があります。

固定資産税・都市計画税の計算方法は以下のとおりです。

固定資産税:課税標準額(※)×1.4%(標準税率)
都市計画税:課税標準額(※)×0.3%(制限税率)

※課税標準額は固定資産税評価額に基づき算定

固定資産税評価額は、各自治体によって定められ、毎年送られてくる納税通知書や市役所等の固定資産課税台帳で確認できます。

また、標準税率および制限税率が自治体によって異なる場合がありますので、所在地の市役所等で確認してください。

建物の固定資産税の減額措置

新築住宅を建てたとき、床面積等の要件を満たすことで課税開始から3年間(認定長期優良住宅では5年間)固定資産税の減額措置を受けることができます。

固定資産税の減額は、店舗兼用住宅でも受けることができますが、居住部分の床面積が全体の床面積の2分の1以上であることが必要です。

土地の固定資産税の軽減措置

住宅用の土地については、固定資産税・都市計画税の特例措置が受けられます。
具体的には、住宅用地について、課税標準額を次のとおり算定します(図表2)。

図表2

区分 対象となる面積 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住戸1戸につき200平方メートルまで 固定資産税評価額
×6分の1
固定資産税評価額
×3分の1
一般住宅用地 200平方メートルを超える部分 固定資産税評価額
×3分の1
固定資産税評価額
×3分の2

※東京主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)を基に作成

この住宅用地の特例措置は、店舗兼用住宅でも受けることができますが、全体に占める住居面積の割合等によって、住宅用地としてみなされる面積が変わります(図表3)。

図表3

建物の規模・種類 居住部分の割合
下に掲げる家屋以外の家屋 4分の1以上2分の1未満 0.5
2分の1以上 1
地上5階以上を有する耐火建築物の家屋 4分の1以上2分の1未満 0.5
2分の1以上4分の3未満 0.75
4分の3以上 1

※東京主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)を基に作成
(※住宅用地の面積が家屋の床面積の10倍を超えるときは、床面積の10倍の面積に図表3の率を乗じた面積となります。)

居住部分が占める割合によって、住宅用地とみなされる面積(固定資産税・都市計画税の軽減措置を受けられる面積)が決まり、固定資産税・都市計画税の負担が変わります。

例えば、居住部分の割合が2分の1以上であれば、土地面積のすべてが住宅用地として軽減の対象となりますので、固定資産税・都市計画税の負担を大きく軽減できます。

固定資産税等の負担や住宅ローンの借入などを考えると、建築プランとして、居住面積を全体の2分の1以上にすることで、事業用の建物部分についても、維持管理費を下げることができる可能性があります。

店舗兼用住宅の償却資産税

事業用の建物を建築し事業を営むことに伴い、償却資産税がかかる場合があります。
償却資産税は、固定資産税の1つで、土地、建物以外の事業の用に供する資産にかかる税金です。

償却資産として、次のようなものが挙げられます。

・看板や広告塔などの構築物
・食料品や金属品の製造設備
・印刷機
・理容・美容椅子、洗面設備
・テーブル、椅子、厨房用具、冷凍冷蔵庫、陳列ケース
・車輛(自動車税がかかるものを除く)など

業種や規模によって保有する償却資産は変わりますが、土地建物の固定資産税以外の負担が必要となります。詳しくは、各市区町村で確認しましょう。

店舗兼用住宅の事業経費の考え方

事業を行う上で経費をしっかりと計上することは大切です。店舗兼用住宅の場合、事業経費を考える上で注意すべき点もあります。

ここでは、店舗兼用住宅を維持管理するためにかかる費用のなかで、事業経費として計上できるものについて解説します。

事業経費として計上できるもの1:住宅ローンの利息

住宅ローンを利用した場合、元本は経費にできませんが、利息部分は経費として計上できます。

例えば、毎月15万円の住宅ローン返済額のうち、元本が12万円、利息が3万円とすると、1年間で支払った利息に相当する部分を経費にできます。ただし、経費とできるのは事業用の部分だけです。そのため、住居部分と店舗部分の割合に応じて按分した金額を経費として計上できます。

事業経費として計上できるもの2:固定資産税や火災保険料などの維持費

土地や建物の固定資産税や都市計画税のうち、店舗部分にかかるものは経費計上ができるほか、償却資産税についても経費として計上が可能です。

また、建物を新築したときに火災保険に入りますが、火災保険料や地震保険料も経費となります。事業用の建物は住宅用と比べると営業活動で生じうるリスク(火災や損壊など)もあるため、一般的に保険料が高くなります。

住宅部分と店舗部分の床面積の割合に応じて、保険料を按分した金額となりますが、事業用にかかる部分については、しっかりと経費計上しましょう。

事業経費として計上できるもの3:建物の減価償却費

事業用の建物を建てた場合、建物の減価償却費を経費として計上が可能です。

減価償却とは、長期間使用する資産を取得したときに、取得価格を、資産ごとに定められた耐用年数に応じて分割し、経費として計上することをいいます。

耐用年数は、建物の構造や建物の用途(住宅以外に事務所用、店舗用、飲食店用等)によって定められています。例えば、木造で店舗用であれば耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造で店舗用であれば39年です。

毎年同じ額を減価償却する方法(定額法)であれば、事業用の建物の取得にかかった費用を耐用年数で除した金額を経費に計上できます。減価償却費の節税効果は小さくありませんので、しっかりと計上しましょう。

店舗兼用住宅のメリット

ここまで店舗兼用住宅を建てる際のポイントや建築後の維持管理費等について解説しました。

次からは、店舗兼用住宅を建てるメリットならびにデメリットについて解説します。

店舗兼用住宅のメリット1.住宅、店舗それぞれ建てるより建築費を抑えやすい

店舗兼用住宅のメリットは、土地の取得や建築に費用はかかりますが、住宅、店舗それぞれ建てるよりは建築費を抑えやすい点です。住宅ローンや事業用ローンの借入が必要だとしても、住居とは別に店舗を借りて家賃や管理費を支払うよりはコストを抑えられることもあります。

また、インターネット回線や火災保険料、光熱費などの経費も、自宅とあわせて管理することでコストを減らせる部分もあります。事業を継続していく上で固定費を抑えることで、安定した事業運営につながりやすいでしょう。

店舗兼用住宅のメリット2.固定資産税の軽減や低金利の住宅ローンを利用できる

店舗専用の建物を建てた場合には受けられない固定資産税や都市計画税の軽減を受けられる点もメリットといえます。一定の条件を満たす必要がありますが、住宅用地としての扱いとなれば、最大で固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1の軽減を受けられます(ただし、土地面積200平方メートルまでの部分)。

また、事業専用では住宅ローンの利用はできませんが、金融機関によっては、店舗併用住宅でも住宅ローンを利用できる可能性もあります。事業用ローンと比べ低金利で融資を受けられる点はメリットといえます。

店舗兼用住宅のメリット3.通勤時間が不要

通勤時間がかからず、家事や子育てなどとも両立しやすい点はメリットといえます。

自宅から仕事場までの時間や移動の負担をなくせることで、仕事の効率や生産性の向上も見込めます。また、時間をうまく活用することで、仕事とプライベートの両立が図りやすくなりますし、家族のなかで仕事や家事の役割を分担したり、補完することもできるでしょう。

店舗兼用住宅のデメリット

メリットの一方店舗兼用住宅のデメリットとしては、どういった点が考えられるのでしょうか。

店舗兼用住宅のデメリット1.土地探しが難しい

住環境と事業上の立地を考えたときに、土地探しが難しくなる可能性があります。生活環境や子育ての環境として理想的な立地条件と事業に適した立地条件の両方を考える必要がありますので、土地探しのハードルは上がりやすいといえます。

また、住居部分と店舗部分で一定程度の広さを確保しようと思えば、駅近くや利便性の高い場所で探そうとした場合、適した土地が見つかりにくく、見つかっても予算的に厳しいことも考えられます。

住環境と事業の立地いずれかを優先的にすすめるとしても、長期的な視点も含めて、後悔がないように慎重にすすめる必要があるでしょう。

店舗兼用住宅のデメリット2.間取りが難しくなる

住居部分と店舗部分のスペースや動線を考えると、間取りが難しくなることもあります。

生活音や子どもの声などが、接客時やサービス提供時に支障がないような工夫が必要ですし、反対に、店舗での会話や音が日常生活に与える影響を考える必要もあります。また、不特定多数の人が出入りすることが考えられる店舗では、子どもの成長も踏まえ、プライバシーの確保も大切です。

限られた空間のなかで、目的が異なるスペースを確保しなければならず、理想的な間取りを実現することが難しい場合もあります。

店舗兼用住宅のデメリット3.将来売却しにくい可能性がある

店舗兼用住宅の場合、将来売却するとなった場合に、買い手がつきにくいことも考えられます。

一般の住宅と比べて需要は減りますし、店舗と兼用できる住宅を探している人でも、居住スペースと店舗スペース両方の条件が合わなければ売却は難しくなります。建築する時点で将来の売却まで想定するのであれば、売却しやすい立地や間取りの工夫が必要となるでしょう、

店舗兼用住宅のデメリット4.周辺住民への配慮が必要

事業を営む上で近隣住民との関係は大切になります。
特に、住宅地などで開業する場合、営業中の人や車の出入りや騒音、飲食店であれば臭いなどにも配慮が必要です。

また、飲食店などでは、お客様が混み合う時間帯の車や人の数には注意する必要があり、必要に応じて駐車場やお客様が待つスペースの確保を考えなければならないこともあるでしょう。営業時間や荷物を搬入する時間帯なども含めて、周辺住民への配慮が必要です。

店舗兼用住宅を賃貸するときの注意点

店舗兼用住宅を賃貸するとなった場合の注意点について解説します。

店舗兼用住宅を賃貸するときの注意点1:住宅ローンの契約条件

店舗兼用住宅であっても住宅ローンの借入ができる場合はありますが、住宅ローンを返済中に店舗部分を賃貸する場合、契約上住宅ローンを借入できないケースがほとんどです。

住宅ローンの契約条件として、「店舗部分を自己で使用すること」とされていることが多く、住宅ローン返済期間中は賃貸することは難しくなります。契約の条件に反して賃貸した場合、住宅ローンの契約解除あるいは一括返済を求められる可能性もあります。

事業をやめる場合などに、店舗部分を賃貸するとしても、住宅ローンを完済する必要がある点には注意してください。

店舗兼用住宅を賃貸するときの注意点2:家賃にかかる消費税

店舗兼用住宅を賃貸する場合、店舗部分の家賃には消費税がかかる点に注意してください。
家賃については、契約において明らかに居住用として利用されている場合には、貸付け期間が1ヶ月に満たない場合などを除き、消費税はかかりません。

一方、事業用の家賃については、課税対象となります。事業用の場合、家賃だけでなく契約締結時の保証金や敷金、契約更新時の更新料なども、返還されないものは資産の譲渡として課税対象となります。

店舗兼用住宅を賃貸するときの注意点3:想定されるテナント・賃貸条件の検討

店舗部分を賃貸することになった場合、以下の点について事前に十分検討をすることも重要です。

・近隣の店舗賃料水準、マーケット動向を把握の上、賃貸することになった店舗部分の競争力(強み・弱み)を明確にし、募集賃料をどの水準に設定するのがよいか
※そもそも、賃貸需要を本当に見込むことができるのか否かは最も重要なポイントです。
・需要の多い賃貸面積の規模はどれくらいか
※賃貸することになった店舗部分の面積が、需要の多い面積より大きすぎる場合、
区画を分割することで早期にテナント付けすることが可能な場合もあります。
(ただし、分割費用の投資回収可能性もあわせて考慮する必要があります)
・想定されるテナントの業種は何か(飲食、物販など)
・契約形態(普通借家・定期借家)
・契約期間
・賃貸借契約を中途解約する場合のペナルティ条項
・入居申込者の資金力や属性(賃料を安定的に継続して支払う力があるか否か)

店舗兼用住宅を建てるときの流れ

最後に、店舗兼用住宅を建てるときの流れを解説します。

【建築工事の流れ】

(1)地盤調査
(2)基礎工事
(3)本体工事
(4)内装・外装工事
(5)設備(電気・ガス・水道の配管等)工事
(6)店舗内へ什器や家具の搬入
(7)外構工事(駐車場や庭、植栽、店舗入口のアプローチ等)
(8)竣工・引き渡し
(9)入居・開業

建築工事の流れ自体は、一般住宅と大きく変わることはありませんが、事業用の什器や設備の設置が必要となります。

ここまで解説したように、一般の住宅と異なり、住空間と事業の場所が同じ店舗兼用住宅の場合、資金計画や間取りでは注意すべき点が多くあります。そういう意味では、最初の資金計画や間取り(プランニング)の段階が非常に大切です。

依頼するハウスメーカーや工務店を選定する際には、店舗兼用住宅の実績や過去の事例などを確認したうえで経験豊富な事業者に依頼しましょう。

また、着工から竣工までは、一般の住宅でも4~6ヶ月程度、状況によっては、1年以上かかることもあります。事業用の什器や設備等の搬入もある店舗兼用住宅の場合、一般住宅以上に時間を要することもあります。

開業時期にあわせて余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。

店舗兼用住宅まとめ

店舗兼用住宅に限らず、家を建てるとなると、まず予算や資金計画を決め、土地探しからハウスメーカーなどの選定をし、間取りや設備、仕様などを決めていく流れになります。

店舗兼用住宅の資金計画を考えるにあたって、低金利の住宅ローンを利用できるかは大切なポイントとなります。

また、建物に適した土地を探すにしても、間取りを考えるうえでも、生活環境と事業の集客面や継続性などの両方を考える必要があることから、一般の住宅より難易度が上がりやすい建物といえるでしょう。

ただ、店舗兼用住宅では、居住面積を一定程度確保することで、固定資産税の軽減や住宅ローン控除の優遇を受けられるなどのメリットもあります。

是非参考にしてみてください。

出典

国土交通省 みんなで進めるまちづくりの話 土地の使い方と建物の建て方のルールの話
国土交通省 建築基準法制度概要集
e-Govポータル 昭和二十五年法律第二百一号建築基準法
平川市 建築基準法関係法令抜粋 建築基準法別表第2(い)項
国税庁 地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和5年分用】
住宅金融支援機構 フラット35 一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますか。
NEOBANK 〔住宅ローン〕 店舗(事務所)併用物件ですが、住宅ローンを利用できますか?
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

国税庁 店舗併用住宅を新築した場合
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
東京都主税局 固定資産税(償却資産)
国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表
国税庁 No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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